子育てアドバイス

【よくある相談シリーズ】LGBTQ+とは? 子どもの性の多様性に親ができること

LGBTQ+に関する理解が少しずつ進んでいるとはいえ、まだまだ「わからない」「どう接したらいいかわからない」という親御さんも多いのではないでしょうか。特に、自分の子どもが性的マイノリティだと気づいた時は、戸惑いや不安が大きいかもしれません。
今回は、LGBTQ+やSOGIの基本的な考え方から、子どもの性の違和感にどう向き合えばいいか、そして差別をしない子どもに育てるために親ができることなど、性的マイノリティ当事者グループ「NINA ARICA」共同代表の木谷幸広さんに聞きました。

LGBTQ+とは何か

LGBTQ+とは、性的マイノリティに関する多様なあり方を示す総称です。それぞれの頭文字には以下のような意味があります。

L(レズビアン):女性が女性を好きになる性的指向
G(ゲイ):男性が男性を好きになる性的指向
B(バイセクシュアル):男性・女性のいずれにも恋愛・性的感情を抱く人
T(トランスジェンダー):生まれたときに割り当てられた性別と、自身が認識する性別(性自認)が一致しない人
Q(クエスチョニング):既存の性の枠組みに当てはまらない、あるいは探している最中の人
+(プラス):ノンバイナリー(男女のどちらにも分類されない性自認)、アセクシュアル(他者に恋愛感情や性的欲求を抱かない)、パンセクシュアル(性別にかかわらず人を好きになる)などを含む、その他の多様な性のあり方を包括しています

LGBTQ+の人々は「特別」な存在ではなく、誰もが持つ性の多様性の一部として理解されるべき存在です。

「SOGI(ソジ)」という考え方

LGBTQ+と関連して、「SOGI(ソジ)」という言葉も近年注目されています。SOGIは “Sexual Orientation and Gender Identity”(性的指向と性自認)の略であり、すべての人が持つ性の構成要素を示す概念です。

SOGIは以下の4つの要素で構成されます。

身体の性:生まれたときに割り当てられる性(戸籍上の性など)
性的指向:誰に恋愛感情や性的関心を抱くか
性自認:自分自身が認識する性別
性表現:服装や言葉づかい、髪型など、自分を他者にどのように見せたいか・見られたいか

この考え方の重要な点は、LGBTQ+の人だけでなく、すべての人に関係があるということです。SOGIは、性のあり方に対する一人一人の違いを認め合うための視点です。

子どもの性の違和感に親はどう向き合うべきか

性的指向が異性ではないことに気づくのには個人差はありますが、多くの場合思春期あたりだといわれています。声変わりなどの体の変化が始まると、より戸惑いが大きくなることもあります。さらにメディアでは、男性は女性を、女性は男性を好きになることが当たり前のように描かれています。そこにあてはまらない自分はおかしいのではと、心が乱れてしまうのです。
それを親に話すことは、到底できないでしょう。親がシスジェンダー(生まれた性別と性自認が一致している人)で異性愛者の場合、その価値観と違う自分に対して「悪いことをしているのではないか」という後ろめたさを感じることが原因のひとつです。これは性的マイノリティの多くが幼い頃から抱える悩みであり、自己肯定感の低さにもつながっています。

また、トランスジェンダーの子どもの場合は、小学校入学時に制服がきっかけとなる場合もあります。例えば小学校から制服がある地域では、「男の子用(女の子用)の制服を着たくない」という子どもの声に親が真剣に向き合い始めることも少なくありません。
否定せず、まずは話を受け止めることが最も大切です。初めから100%理解できなくても問題ありません。大事なのは「あなたの話を聞きたい」「あなたを大切に思っている」という気持ちを伝え続けることです。ただ、親戚の子どもや近所のお子さんという第三者ならまだしも、自分の子どものことになると、受容度の低下傾向があるというデータもあります。だからこそ、親として意識的に理解を深めることが重要です。

差別をしない子どもに育てるために、親ができること

子どもがLGBTQ+当事者であるか否かにかかわらず、多様性に触れる機会を持つことはすべての子どもにとって重要です。日常生活の中で意識できるポイントとして、言葉づかいがあります。「さすが男の子!」「女子力が高いね」といった言葉は、性別に関する無意識の偏見を育ててしまいます。褒め言葉に、男や女を意識した表現は避けましょう。親自身がジェンダーにとらわれない表現を心がけることで、子どもにもその価値観が自然と伝わります。

また、家庭を多様性に寛容な雰囲気にすることも大切です。テレビや本、日常会話で性別や見た目、人種に関する偏見的な表現があれば、「それってどう思う?」と問いかけて、「違っていてもいい」という価値観を共有していきましょう。親自身が「知らなかった」「勉強中」と正直に学ぶ姿勢を見せることも、子どもが親を信頼し、学ぼうとするきっかけになります。

子どもに差別的表現がみられた場合は、その場で「その言い方は相手を傷つけるかもしれないよ」と伝え、注意を促すことが大切です。後で落ち着いてから「どうしてそう言ったのかな?」「どんな気持ちだった?」と話を聞き、考えを深める機会をつくることも重要です。
また、子どもが差別的な言葉を使う背景には、社会構造の影響が大きいことも忘れてはいけません。差別は生まれつきのものではなく学習されたものであり、理解を深めることで改善ができるのです。

「わからない」からこそ、一緒に考える姿勢を

子どもの性で悩んでいるときは、決して一人で抱え込まないことが大切です。

恥ずかしいことでも、誰かに言いにくいことでもありません。実際、同じような悩みを持つ親御さんはたくさんいます。だからこそ、匿名で相談できる専門機関への電話や当事者グループなどに問い合わせてみてください。広島ではLGBTQ+(かもしれない)子どもとその保護者をサポートする活動をしている団体「ここいろhiroshima」がSNS上での相談も受けています。自分だけで抱え込まず、周りの支えを借りていくことが、子どもにとっても親にとっても良い方向につながります。

また「親としてこうあるべき」という完璧さを手放して、「よくわからないけど一緒に考えていきたい」という姿勢を子どもに見せることが、子どもにとって何よりの安心になります。性のあり方に正解はありませんが、「あなたのままでいい」「一緒に悩んでいこう」という親のメッセージが、子どもにとって大きな支えになるでしょう。大切なのは、性別や身体的特徴や国籍ではなく、人格や人柄なのですから。

木谷 幸広
1997年に名古屋でゲイバーを開店し、後に法人化して複数の店舗を経営。2019年から広島修道大学大学院でLGBTQ+に関する研究に取り組み、修士論文を執筆。その後、公益財団法人広島県男女共同参画財団に勤務し、LGBTスタディーズや図書イベントの企画・運営に携わるとともに、性の多様性やパートナーシップ制度について各地で講演。2023年に退職し、性的マイノリティ当事者グループ「NINA ARICA」を立ち上げ共同代表に。主催する交流会「つながり座」や、40歳以上を対象とした「おりおーて広島LGBTQ+シニアサポート」では、語り合いを通して参加者がエンパワーされ、ピアサポートし合える関係性を築ける場づくりを目指している。また、講演活動では、当事者でない人にも性の多様性について正しく深く学んでもらうことを目的に、地域社会への働きかけを続けている。2025年秋に広島県初開催となるプライドパレードの事務局長も務める。
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