2026年1月29日(木)
【よくある相談シリーズ】「お腹が痛い」は仮病?高学年の子どもが出している体からのサイン

寒さが厳しくなり、生活リズムが大きく切り替わる冬から春にかけて、子どもは心身のバランスを崩しやすくなります。保健室にも、「お腹が痛いです」と訴える子どもたちが増えてくる時期です。特に目立つのが高学年の子どもたち。検査をしても異常が見つからない腹痛の背景には、子ども自身も言葉にできない不安や緊張が隠れていることが少なくありません。長年、養護教諭として子どもたちと向き合ってきた広島文化学園大学講師の寺西明子先生から、高学年の冬に起こりやすい腹痛と、その受け止め方について聞きました。

冬に増える「原因がはっきりしない腹痛」

冬場、保健室では「お腹が痛いです」という訴えを聞く機会が増えていきます。特に多いのが、「どんなふうに痛いのか、うまく言えない」という腹痛です。「なんとなく痛い気がする」「よくわからないけど痛い」そう話す子どもは少なくありません。
もちろん、下痢や便秘、冷え、食生活の乱れ、急を要する盲腸など、身体的な原因がある場合もあります。そのため、養護教諭は必ず身体面から確認します。痛む場所、いつからか、どんな痛みなのか。盲腸や感染症、女の子の場合は生理の可能性など、見逃してはいけないサインが隠れていないかを慎重に見極めます。
それでも、はっきりした原因が見つからないことがあります。そうしたとき、その腹痛は、体ではなく「心の状態」を知らせる場合であることが多いのです。

高学年の冬から正月明けは、「変化」と「ギャップ」が重なる時期

腹痛を訴える子どもは、低学年よりも高学年に多いと感じています。理由の一つは、この時期になると「来年」が具体的に見えてくるからです。
6年生であれば中学校進学。中学受験を控え、保護者や塾の期待を背負っている子もいます。
5年生でも、3学期は「6年生の0学期」とも呼ばれ、委員会の引き継ぎや学校の中心になる準備が始まります。そこに重なるのが、正月明け特有のギャップです。クリスマスや年末年始という非日常から、一気に日常へ戻る。近年は大人の間でも「正月病」という言葉が使われるようになりましたが、その影響は子どもにも同じように現れます。
楽しい時間を終え、切り替えを求められる中で、「何が不安なのか自分でもわからない不安」を抱える子もいます。その出口として、腹痛という形で表に出てくることがあるのです。

「いい子」ほど不安を体に表しやすい。家庭でできる関わり方

保健室に来る子どもたちには、とても「まじめで、頑張り屋」な子が多い印象があります。
親や先生の期待に応えようとし、自分の気持ちを後回しにしてきた子たちです。
「書写の時間で新年の誓いが書けない、守れそうにないから」そんな理由で腹痛を訴える子もいました。「できない自分」を責めてしまうほど、責任感が強く、繊細なのです。この繊細さは、弱さではありません。細かな変化に気づき、人の気持ちを考え、先を見通す力でもあります。簡単に育てられるものではない、子どもがもともと持っている大切な資質です。
子どもが「お腹が痛い」と発したとき、「また?」「大した事ないでしょ?」と思ってしまうこともあるでしょう。保護者の皆さんが、仕事や家事、子育てで忙しいのは十分に理解しています。それでも、子どもの訴えは、否定しないでほしいと思います。
「今日もお腹が痛いんだね」「昨日も言ってたね。しんどいね」
それだけで構いません。
すぐに原因を探したり、学校に行く・行かないを判断したりする必要はありません。
まずは、「痛いと言わなければならない何かがある」ことを受け止めることが大切です。

保健室は、子どものSOSを受け止める場所

「これくらいで保健室に行っていいのだろうか」。そう迷われる保護者の方もいらっしゃいますが、遠慮はいりません。小学校では、保健室を利用したからといって、成績に影響することはありません。それよりも、自分の不調や気持ちを言葉にし、誰かに助けを求める経験のほうが、将来につながります。どうぞ保健室を気軽に使ってください。「原因がはっきりしない腹痛」「大人から見れば大したことがなさそうな不調」そうした小さなサインを受け止めることも、養護教諭の大切な役割なのです。
腹痛が長く続く場合には、生活習慣や自律神経の乱れ、病気が隠れていることもあります。
必要に応じて、小児科の受診を検討してください。
「お腹が痛い」という訴えは、甘えや仮病ではありません。子どもなりに抱えている不安や緊張が、SOSとして表れていることがあります。家庭と学校がその声を受け止め、日常の中で小さな変化に気づいていくことが、子どもが安心して成長していく土台になります。


- 寺西明子 広島文化学園大学 人間健康学部 スポーツ健康福祉学科 講師
- 広島県呉市内の小学校6校に35年間、養護教諭として勤務。保健室にて、悩みを抱えた子どもたちや保護者に多く関わる。2014年から広島「もみじの会」(1型糖尿病患者会)会長として、県内近県の1型糖尿病の患児と家族の支援や、患児の自立のための活動を行っている。2018年にはJKYBライフスキル教育(健康教育)コーディネーターを取得し、学校教育関係者や学生に子どもたちのセルフエスティーム向上のための教育を推進。2022年より大学にて養護教諭の養成にあたっている。





























