株式会社 Mitsu Fisherman's Factory(島根県)
海の恵みをそのまま届ける“漁師めし”をそのまま閉じ込めた一品が、いま注目を集めています。しかも手がけたのは料理人ではなく、現役の漁師。獲って、加工し、販売まで担う新たなスタイルの裏には、「このままでは漁師がいなくなる」という切実な危機感がありました。若者がいない港、進む高齢化。その現実に向き合い、未経験から漁師の世界へ飛び込んだ一人の男性。試行錯誤の末に見出した“稼げる漁業”の形が、やがて人を呼び、町に変化をもたらしていきます。今回は、地域の未来を守るため新たな価値を生み出したカンパニーのそ~だったのか!に迫ります。


定置網漁師たちで構成される「Mitsu Fisherman‘s Factory」。全員が松江市鹿島町の御津大敷網組合に所属し、副業としてカンパニーで水産物加工品の製造・販売を行っています。カンパニーを率いるのが、社長の小笹伸一朗さん。古くから漁業の町として栄えていた御津地区で、祖父も父も漁師という環境で育ちましたが、一度は保育士の道を歩んでいました。そんな中、「定置網漁師にならないか」と声をかけられたことをきっかけに、2016年、漁師になることを決断します。しかし、町の過疎化が進み漁師も減少。当時の漁師の平均年齢は60代後半で、若者は自分ひとりだけ。このままでは、チームで行う定置網漁を続けていくことができなくなるという不安が芽生え始めていたのです。


小笹さんは若手を呼び込むため、「稼げる漁師」を目指します。目を付けたのは、甲殻類の「カメノテ」。かつて多くの漁師がとっていましたが、高齢化と過酷な岩場での作業から減少。小笹さんは、午前は定置網漁、午後は副業でカメノテ漁をスタート。自ら地元の飲食店へ営業を始めると、珍しさと味が評判を呼び、取扱店が増加。収入につながり、新たに2人の仲間が加入しました。しかし、取引先が限られ在庫が膨らみ、大きな損失に。そこで、日持ちする加工品で販路拡大をはかるため、御津地区伝統のサバの塩辛を製造することにしたのです。2022年にカンパニーを起業し、クラウドファンディングで資金を集め、加工場を建設。2023年に本格販売を始めると、関東や関西でも取り扱われ、今では年間1万2000個以上を売り上げるヒット商品に。この取り組みによって、これまでに10人以上の漁師が生まれているのです。