有限会社 一場木工所(広島県)
プラスチック製のおもちゃが当たり前の時代に、全国の保育園から注目を集める“木のおもちゃ”があります。生み出しているのは、広島県三次市にある女性4人だけの小さな木工所。もともとは住宅用の建築部材を手がける会社でしたが、先代社長の病気による経営危機に直面。木材の知識も経営経験も乏しい中、突然会社を任された女性。厳しい現実や心ない言葉にさらされながらも、彼女がたどり着いた答えは「木そのものの魅力を伝える」ことでした。地域の木材を生かしたものづくりへの挑戦は、やがて全国から評価される大きな転機へとつながっていきます。今回は、木の温もりと可能性を武器に、新たな価値を生み出し続ける木のプロフェッショナル集団のカンパニーのそ~だったのか!に迫ります。


1967年創業の「一場木工所」。製材所で丸太から切り出された角材を建築部材へと加工しています。2007年、先代である父が倒れ、社長代理としてカンパニーを率いることになった一場美帆さん。会社を見つめ直す中で、加工費が相場の3分の1と極端に安かったことに気づきます。そこで一場さんは、納期に応じた適正な価格設定へと見直しを実施。さらに、下請け加工にとどまらず、自身が好きだった木の香りと温もりを生かした自社商品をつくることを決意します。そして、その思いをカタチにするため、2012年、社長に就任しました。ところが、就任してすぐにシェア70%の取引先からの仕事がほぼゼロになってしまい、逆境の中でのスタートとなったのです。


2016年、広島県木材組合連合会のプロポーザル方式に参加し、「木のおもちゃ」という未知の分野へ挑戦したカンパニーは、のちの看板商品「森のこころんプール」を開発します。一般的な木の玉プールとは異なり、あえて木のボールの形や大きさを不揃いにし、15種類以上の木を組み合わせることで、子どもたちが香りや手触りを楽しめる工夫を施しました。新たな可能性が見え始めた2018年、豪雨により工場が1メートル以上浸水し、1カ月もの操業停止に。これを機に、自社商品の製造へと本格的に舵を切ります。そして、東京での展示会をきっかけに保育園向けのおもちゃを扱う商社との取引が始まると、お店屋さんごっこができる「ひなたぼっこマルシェ」は多くの保育園へと広がっていきました。2024年には、木育トラック「manaviba」が完成し、木育活動や災害支援に活用できる仕組みを整えたのです。