患者の「もう少しよくなりたい」に応える 「漢方診療科」 呉市内の病院に新設 広島

10/5(月) 18:36

ストレスや不眠、更年期障害など、ちょっとした「不調」に処方されることの多い「漢方」。
呉市の病院に新たに設けられた「漢方診療科」を取材しました。

■先月開かれた「病院まつり」 呉共済病院

(子どもたちが胃カメラの操作を体験)
真剣な表情で胃カメラを操作する子どもたち。

(電気メスの使い方を体験)
医師「包丁と一緒で…。もうちょっと薄皮一枚で。そうそうそう天才!」

先月、呉市の呉共済病院で「病院まつり」が開かれ、地域の人たちが普段は触れることができない医療機器や手術室などを見学しました。

医師「これがロボット手術のシステムで、ダビンチというシステムになる。私が頭を入れると、このように動くようになります。右手で動いているのがハサミになりますね」

最先端の医療に触れた子どもたち。

参加者「楽しかった」

■漢方の相談ブース

そして―。
にぎわいを見せる会場の一角に大人が足を止める場所がありました。

【河原章浩 医師・相談者】
「肩こり以外に頭痛はない?」
「めまいがする」
「それは天気が悪い時?」

話を聞くのは今年4月、呉共済病院に新設された「漢方診療科」の専門医です。
原因のはっきりしない不調や複数の症状を抱える患者に、新たな治療の選択肢を届ける「漢方」。

しかし、漢方を専門とする診療を行っている病院は、県内ではほとんどありません。
漢方医学を専門とする河原章浩医師は、広島大学病院から、常勤の漢方専門医として派遣されています。

■女性(50代)を診察する河原医師

地域の病院で、漢方の力を生かした診療に取り組む河原さん。
この日、診察に訪れたのは50代の女性です。

【河原章浩 医師・女性(50代)】
「日常生活は何も問題ない?」
「歩くのに足を引きずっている」
「前もそうだった?ひどくなった?」
「左側をかばう感じ」

腰の痛みや足のしびれで、普段は整形外科に通っている女性。
院内の紹介で漢方の診察も受けています。

【河原章浩 医師・女性(50代)】
「舌を見せてもらってもいい?あっかんべーして。裏返せますか?脈を見てもいい?」

診るのは、舌や脈。
さらに症状のある場所とは離れたところにも触れていきます。

【河原章浩 医師・女性(50代)】
「痛い?ここを押したらどんな感じがする?ここが痛い?」
「ここら辺」

腰や足が痛いのになぜおなかまで診るのか。

【呉共済病院漢方診療科 河原章浩 医師】
「例えば頭痛で、おなかを触ったりするのも、関係ないと思われるかもしれないが、それが病態に関係したりする。めぐりが悪いかどうかがわかる。漢方では舌診と脈の状態で全身の状態を把握する」

症状のある場所だけでなく、体全体をみる。
それが漢方診療の特徴です。
一人ひとりの体質や状態に合わせて薬を選び、変化を見ながら調整していきます。

【女性(50代)】
「先生が『薬を変えてみようか』とか色々してくれるので、それを聞くと安心感もある。今は頼りっきりという感じ」

患者の全身の状態を知るために大切なのが「問診」です。
その質問は、実に100項目を超えます。

【呉共済病院漢方診療科 河原章浩 医師】
「漢方は聞く内容がすごく多くて、全部で114項目。
患者によっては書くのが大変だと言われるが、外来で来られた症状と、直接関係がなさそうな点でも、実は遠くで何か原因になっていたりするので、たくさん質問が書いてある問診表を使用する」

不調の要因をつきとめるためには日々の暮らしも重要です。
何を食べ、どう過ごしているのか。

毎日の習慣が、体の状態を知る手がかりになります。

■男性(80代)を診察する河原医師

【河原章浩 医師・男性(80代)】
「冷たいものをよく飲むと言っていたでしょう?」
「サイダーとカルピスとコーラ」
「それは一日に3つ飲むの?」
「3本では足りない時もある」
「冷えているから温めた方がいいので、体を温めるような漢方を出しているから、サイダーとか飲まれたら良くない」

内臓の栄養の吸収が悪い80代の男性。
体を温める漢方を処方しながら、冷たい飲み物を少し控えるようアドバイスします。

【河原章浩 医師・男性(80代)】
「3本は飲みすぎだから1本ぐらいにしたら?」
「1日に?無理よ」

日々の食生活にも目を配り、その人に合った治療を考えていきます。

【男性(80代)】
「医者にかかっても体温がすごく低かった。35.5度とか。
漢方を飲みだして36.5度まで上がった。『漢方でこんなに効くんだ』と思って、今は真面目に飲んでいる」

【男性の妻】
「食べたらすぐベッドで寝る、という感じだったけど、少し起きて歩いたりするようになった」

一方で、漢方治療では改善しないことも多々あります。
痛みやだるさの陰に、別の病気が隠れていないか、必要なときは採血やCTなどの検査も行います。

【呉共済病院漢方診療科 河原章浩 医師】
「すべてが漢方で治せるというわけではない。
西洋医学よりも漢方が優れている病態もあるし、西洋医学と一緒に漢方を使うとなお良いという病態もある。抗がん剤の副作用に対して漢方薬を使うと、口内炎が良くなったり、吐き気が良くなったりということは可能」

漢方だけでも、西洋医学だけでもなく、両方の視点を大切にする。
河原さんはそれこそが「漢方診療科」の強みだと言います。

【呉共済病院漢方診療科 河原章浩 医師】
「痛みや冷えが常にある状態はつらいこと。
少しでも日常生活がより良いものになればいいかなと思っています。
専門の医師がみると、意外に治せる病態もあるので、一度相談してほしい」

県内ではまだ数が少ない「漢方診療科」。
患者の「もう少しよくなりたい」に応えるため、医療現場の取り組みが続きます。