障がいがある人にもミュージカルを!周りを巻き込み、誰もが楽しめる音楽会を企画した女性の思いとは 広島

7/27(月) 18:42

今月20日。
広島市内のカフェから聞こえてくるミュージカルソング。
店内では障がいのある人やその家族らが音楽を楽しんでいました。

【参加者】
「実際に2人で外出するっていうのは本当に久々なんですよ。こういう機会がないと。『よし2人で出かけよう!』っていうことも少ないので、本当にありがたい演奏会でした」

コンサートを企画したのは加地育子さん。
加地さんにはある思いがありました。
今回の特集はシリーズ「彷徨う居場所」です。
障がいのある人が鑑賞できる機会が少ないミュージカルを身近に感じてほしいと、コンサートを企画した女性がいます。
彼女の思いを取材しました。

今月中旬。
歌のレッスンを受ける加地育子さん。
2年ほど前から月に2回、ここに通っています。
教えるのは劇団四季でも舞台に立っていた元ミュージカル俳優の莉呼さん。
ミュージカルが大好きな加地さんですが、広島にはミュージカルの歌い方を習える場所が少ないといいます。

【加地育子さん】
「元四季にいた人っていうのが、やっぱり私のやりたいって思ったことで、日本の有名なトップレベルまで行った人から直接習えるっていうのもありがたいし、本当に夢がかなった。この年になっても夢叶うことってあるんだなってね」

ミュージカルを好きになったのは、幼少期にみた劇団四季の舞台がきっかけでした。
高校の入学祝いも舞台のチケットだったといいます。

【加地育子さん】
「見に行ったら、はあ~~~すごい!みたいになって、そこから劇団四季のとりこです。ずっと」

大学生になってからは演じる挑戦も始めた加地さん。
教師という道を選んだ後も市民団体に入り、休日は舞台に立ち続けました。
それでは物足りずミュージカルソングユニットを立ち上げたほどです。
教師とミュージカル俳優、2足のわらじで挑戦を続ける加地さんですが、教壇に立つ中で、ある壁にぶつかりました。

【加地育子さん】
「たまたま特別支援学校の教師の話があったので、そこからずっと特別支援学校の教員をやっているんですけど、初めて担任した時に途方にくれたんです。お話しても返ってこないし、絵本を見せても見えていないかもしれないし、音楽をかけても聞こえていないかもしれない。どうしたらいいのかなって途方に暮れていましたけど、いろいろやっていたら表情が変わったこともあったので、やっぱり音楽って障がいのある方に楽しみとか豊かさを与えられるんじゃないかなというのはずっと思っていました」

教え子たちを自分の舞台に呼び、生の音楽に触れてもらいたい…。
しかし、そこには高いハードルがありました。

【加地育子さん】
「なかなか劇場に車椅子席が少なかったり、体力的に2時間見られなかったりとか、家族が大きな車いすを載せて来るっていうのはものすごく準備が必要だったり、気軽に来てっていうのが言えなかった」

教師としても、ミュージカルファンの一人としても『音楽の力』を感じてきました。
そんな思いから今回のコンサートを企画。
この日は、コンサートを行うメンバーとの練習です。
会場や内容の打ち合わせにも熱が入ります。

【加地育子さん】
「大きい車いすの子もいるし、歩くのが難しい子もいるし、そのへんの座席はここで受付してもらって、座席配置をご希望に応じてできたらいいなと思います。今回のテーマは、サクッとだから。暑いし。だって。7月20日でしょ?絶対暑い。特に障がいのある人は体調崩しやすくて体力ないし」

加地さんが作り始めたのは小さな傘に…、鈴でしょうか?

【加地育子さん】
「『虹の彼方の空は』ってみんなで音を鳴らします。そのための手作り楽器です。障がいのある方って聞いたり見たり表現したりするのがなかなか難しかったり、持つのも難しかったりする方とかいるので、できるだけ簡単に鳴らせるものにして『できた』みたいな感動を味わってほしいなと思って」

メンバーの立花さんは、加地さんと同じ特別支援学校に勤務しています。

【立花まいさん】
「隣の教室なんですけど、よく笑い声が聞こえてきたり、加地先生と関わる子供の様子を見ていると、どの子もすごく笑顔で明るくて楽しそうで、それは加地先生のパワーだなと思ってみています」

そして迎えた本番。
会場となるのは、広島市にあるバリアフリーのカフェで、車いすでも簡単に出入りすることができます。
続々と会場に訪れる観客たち。
会場に華やかなミュージカルソングが響き始めました。
参加者は声を出したり、体を動かしたり吸引などの医療的ケアをしながら、コンサート中、それぞれ、思い思いに音楽を楽しみます。
そして、加地さんが思いを込めた手作り楽器が登場。
鈴の音色と観客の笑顔が会場を彩りました。

【参加者】
「音楽が好きなので、この子はすごく楽しんでいました。反応の鈍いゆっくりな子なんですけど、自分参加型のところがあったので一緒に鈴降って喜んでいたので楽しめていたと思います」

【参加者】
「息子もこうやって手が出たり、発作もあったりとかして心配ごとがあるんですけど、周りに強いメンバーがいるのが私自身も心強いですし、2人とも落ち着いてリラックスして楽しめる空間って本当に大事な場所だなと思っています」

【加地育子さん】
「やっぱりいい表情されていたりとか、学校の生徒も何人か来ていたんですけど、普段見ないような表情とかが見られたり手を降ってくれたり声を出して反応してくれたりして、すごく嬉しかったです。やっぱり音楽ってみんなが共通で楽しめるものだと思うので、障がいのある方・家族だけじゃなくて、一般の方と障がいのある方とそのご家族、本当に誰でも来られるようなコンサートができたらいいなと思っています」

音楽の力で誰もが笑顔になれる場所を作りたい。
加地さんの挑戦はまだまだ続きます。