【詳細】「将来に絶望したことは想像に難くない」裁判所が下した執行猶予付き判決 息子殺害の母親に

12/17(水) 17:00

アルコールの多量摂取により、記憶障害となった息子を殺害した罪に問われた80歳の母親。17日、広島地裁は懲役3年、執行猶予付き5年の判決を言い渡しました。(求刑:懲役8年)

判決によりますと、広島市中区の無職・清原和子被告(80)は、2025年5月5日午後6時半ごろ、酒を欲しがる長男・剛さん(当時55)を広島市中区白島九軒町の川土手に連れ出し、睡眠導入剤と酒を飲ませて意識をもうろうとさせると、剛さんの首にロープを巻き付けて締め付けるなどして殺害した罪に問われていました。
裁判員裁判で審議されたこの裁判。

17日の判決公判で、広島地裁の後藤有己裁判長は「清原被告は、アルコール依存症の息子の異常行動を目の当たりにして将来に絶望し、その日のうちに犯行に及んだ。殺意は強く、結果は重大」と指摘。

その一方で、「7年にわたり息子の世話を全面的にしながら、依存症克服のために様々な努力をしてきたが、息子は治療に消極的で思い悩んでいた。将来に絶望して精神的に追い詰められたことは想像に難くない」としました。

清原被告の心情などを考慮し、懲役3年、保護観察付きの執行猶予5年の判決を言い渡しました。(求刑:懲役8年)

判決が言い渡される間、清原被告は時折深く頷きながら聞いていました。
●今回の裁判の争点
「被告人に対して、どのような刑罰を科すべきか」

〈裁判での検察側の主張〉
「剛さんがアルコールの多量摂取により、回復が極めて困難な脳障害となり、事件当日、意味不明な言動を繰り返す剛さんを見て、和子被告は将来に絶望し、殺害を決意した。親族が被告の処罰を求めていないことや、警察に自首したことなど、全ての事情を考慮しても執行猶予付き判決では償えない」

〈裁判での弁護側の主張〉
「「被告は被害者のアルコール依存症が治るなら、どんなことでもしてやりたいと思い、酒を捨てたり、玄関で寝たり、涙ぐましい努力をした。事件当日、剛さんが『酒を飲みたい』と被告のもとへ何度も酒を求める姿に絶望し、もう元に戻れない、楽にさせたいと思い、心中目的で殺害した。極めて同情の余地がある」