ラオス政府の不発弾処理機関に密着 国内に約8000万個の不発弾 経済発展を妨げる ラオスと広島#1

11/3(月) 20:00

シリーズ特集です。
皆さんは「ラオス」という国についてどのようなイメージを持っていますか?
ラオスは中国、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーの5カ国に囲まれている内陸国で、アジアの中でも最貧国と言われ、経済発展が遅れている“後発開発途上国”のひとつとされています。

そのラオスを発展を妨げている1つが“不発弾”の存在です。
1週間連続でお伝えするシリーズ「ラオスと広島」第一弾です。

東南アジアにあるラオス人民民主共和国。
人口はおよそ758万人。
仏教文化が息づく美しい街並みや自然豊かな風景が広がっています。

しかし、かつては世界で最も激しい空爆にさらされた“世界最大の不発弾汚染国”と言われています。
ベトナム戦争中の1964から1973年にかけて、アメリカ軍は広範囲にわたってラオスへ空爆を繰り返しました。
それはなぜか?
アメリカと敵対関係にあった北ベトナムの補給路がラオス国内を通っていたため空爆に巻き込まれたのです。
投下された爆弾は、およそ2億6000万個。

今も、ラオス国土の3分の1に不発弾が残っているとされています。
これまでに5万人以上が死傷するなど、不発弾はラオスの経済発展を妨げる1つの要因となっています。

この男性は26年前、不発弾で手と足に大けがをしました。
当時は治療費のために借金をするなど経済的に苦しみ、回復したあともけがの影響で手足が思うように動かなくなりました。

【不発弾で大けがをした男性(55)】
「農業をしていましたが、けがで重いものを持てなくなり、農業は妻や子供がやり自分は手伝うことしかできなくなりました。すべての不発弾を撤去してほしいです。
村人たちは不安に思っているので、安全に生活できて、農地も開発できるようになってほしいです」

被害者をこれ以上出さないために日々活動を続けるのが、政府の不発弾処理機関「UXO Lao(ユー・エックス・オー ラオ」です。
不発弾の調査、処理、啓発教育などを行っています。

【UXOLaoの職員】
「これはクラスター爆弾です。およそ600個のクラスター爆弾が入っていて、直径2キロの範囲に散布されます」

そんな中、資金不足などの課題を抱えるUXOLaoは、海外からの支援に頼らざるを得ない状況が続いています。
アメリカからの資金支援が最も多いものの、20を超える国や機関が援助を行い、日本の国際協力機構=JICAも、探知機などの機材のほか長期戦略の策定など組織能力強化のための支援を続けています。

TSSは今回、特別にUXOLaoの許可を得て、現場を取材することができました。

【胡子記者】
「今から爆破処理の現場にいきます。山の中に入るんですが、かなり緊張感があります」

UXOLaoのスタッフに同行しました。
すると…!土に埋まった状態の不発弾が…

【UXOLaoの職員】
「BLU26という爆弾です。散布されたら早くに爆発します」

処理する場合は周辺の住民に事前に通知し、十分な距離をとったうえで爆破します。

【胡子記者】
「こういうものが、民家のすぐ近くにあると思うと本当に恐ろしい」

大きな音とともに、10メートルほど離れた場所に設置したカメラの方にも、破片が飛び散りました。爆破させた跡を見に行ってみると…

【UXOLaoの職員】
「爆弾の中にこういう玉がたくさん入っていて、爆弾からの距離が5メートル以内は死亡する確率が高くなり、10メートル以内ではけがのリスクが高まります」

戦後残った不発弾およそ8000万個のうちこれまでに除去されたのは、そのうちの2.5%にあたる200万個。
広大な土地をくまなく歩き、一つひとつ探さなければならない作業には、膨大な時間と労力がかかります。

【UXOLaoの職員】
「不発弾はラオス各地のどこにあるかわからず、どのくらいの予算を使って、いつまでに全ての不発弾を除去できるのか、まだわかりません。日本の皆さんにもラオスのこの状況を知っていただき、ラオスがまだ皆さんの国からの援助が必要だということを、知ってもらえたらと思います」

戦後、50年以上経っても人々の暮らしの下に危険が潜んでいるラオス。
“負の遺産”との闘いは、続きます。

《スタジオ》
戦後50年以上経っていますが、まず改めてまだ2.5%にあたる200万個しか処理できていないということですが。

【コメンテーター:元カープ・山内泰幸さん】
7800万個近くある。怖くてで歩けないですし、安心して暮らせないですね。

近くに住んでいる方もいらっしゃるということでしたけれども、新川さん改めてこのラオスの現状はどうなんでしょうか?

【コメンテーター:JICA中国・新川美佐絵さん】
「ラオスはコーヒー豆の産地で農業も盛んなところではあるんですけれども、こういった問題があるのでなかなか農地としても開拓ができません。観光地として発展するであろう遺跡も残っていますが、まだ外国人が入れないようなエリアもたくさんあります。

この問題なかなか知られてないと思いますが、実は私のこのピアスは不発弾でできているものなんです。こういった物やキーホルダーなどで観光客に情報発信してるんですが、なかなか知られていない。

こういう話を聞くと、世界の知らない国の怖い問題だと思ってしまいますけど、日本でも不発弾の問題はまだまだたくさんあります。広島でも今も不発弾が見つかっています。経済大国の日本から途上国のラオスへの支援ということだけではなく、戦後平和復興してきた日本だからこそ伝えられるものがあるのかなと思います。まずは知っていただくっていうことが一番大きいいいのかなと思います」