保護犬猫の命をつなぐボランティア 月40万円の費用は自腹で 動物保護の最前線に密着 広島

5/28(水) 20:30

広島県は、かつて動物の殺処分数、全国ワーストを記録しました。
現在、その数は、大幅に減少しましたが、保護された動物たちの命をつないでいるのは、ボランティアたちの取り組みです。動物保護の最前線に密着しました。

広島市内の住宅街

【動物愛護啓発団体 猫は天使・中井百合子 代表】
「ここレバーを押してもらって上にあげると、これが開きます。かたまりで置くとくわえてそのまま逃げてしまうので、もしくは後ろから手を入れて取っちゃう。結構そういう猫との攻防があるのです」

彼女たちが取り組んでいるのは、保護猫活動です。
保護ボランティアの中井さんと上角さん。
そして、動物愛護団体の代表を務める荷堂さん。
住民の協力を得て、猫の通り道と思しき場所につかまえるための捕獲機を仕掛けます。
この日は11個、仕掛けました。

【動物愛護啓発団体 ワンミャツダクラブ・荷堂美紀 代表】
Q:人がいたら入りませんか?
「入りませんね。できるだけ離れて」

餌の匂いに誘われて猫たちがやってきます。

<その後、捕獲機の中に猫が…>

この活動は、行政や町内会などからの要請を受けて行っているもので、地域の野良猫を捕獲し、避妊や去勢の処置をして、元の場所に戻します。

<住民とのやりとり>
「来た。とうとうやっと来た」
「ボスボス」
「さっきからウロウロしていた」
「もう1頭います。あっちに」

避妊去勢されて、元の場所に戻されたネコは、その地域で一生を終えますが、繁殖しないため、野良猫が増えることはありません。
野良犬や野良猫を減らす事は、単に動物愛護という問題ではありません。
糞尿被害や騒音被害など地域課題の解決策でもあるのです。

【動物愛護啓発団体 猫は天使・中井百合子 代表】
「こんにちわ」

中井さんのお宅を訪ねました。
保護猫活動の中心と
なっているのは、中井さんたちのような無償で活動するボランティアです。

【動物愛護啓発団体 猫は天使・中井百合子 代表】
Q:ネコが何匹いるのですか?
「今32匹です」

中井さんの家にいるネコたちは、飼い猫の他に、一時的な預かり猫や保護されて預かっているネコなど様々です。

【動物愛護啓発団体 猫は天使・中井百合子 代表】
「最初は寄付から始めたんですけど、実際に活動に携わりたいという事から活動させてもらうようになって、この度自分でやろうかという事になって、2人でなんですけど」

今年、3月、上角さんと2人で動物愛護啓発団体を立ち上げました。

【動物愛護啓発団体 猫は天使・中井百合子 代表】
Q:1か月の費用は?
「40万円くらいかかります。エサだけではないので電気・ガス・水道から砂だったり色々な環境設備もの、あとは医療関係を入れて平均で40万円くらいかかります」

Q:それは中井さんが負担する?
「もちろん身銭です」

広島県では、保護された犬や猫の殺処分数が2011年度に全国ワーストとなる年間8千匹を超えたことから殺処分削減の取り組みが行われてきました。取り組みを支えているのは、保護動物を預かるボランティアです。

保護される動物には、病気のものもいます。

荷堂さんが自宅で預かる生後間もない保護猫。
兄弟4匹と捨てられていました。
この子は、風邪をひいて、肺炎を起こしています。
酸素室のケースをレンタルしましたが、費用は、1か月で、8万円程度かかります。
ボランティアの思いが、命を繋いでいます。

今月、開催された「ワンミャツダフェスタ」荷堂さんが代表を務める動物愛護団体が主催した保護動物の譲渡会です。
ボランティアが飼育する保護動物を減らすため、譲渡会はなくてはならないイベントです。

会場には、朝から、多くの人が訪れました。

【来場した男の子】
「かわいかった」
Q:連れて帰りたい?
「うん」

【保護ボランティア】
「多いですね。さすが大きなイベントだけあって」

広島県や広島市の動物愛護センターや保護ボランティアなど15団体が参加。

【保護ボランティア】
「大人の猫8匹に子猫が1匹保護された」

犬や猫、およそ100匹がエントリーしました。
中井さんたちも、ネコを連れて参加しています。

【動物愛護啓発団体 猫は天使・上角梓さん】
「ちょっと緊張しているのと、この子が、今気が立っているので、猫パンチを繰り出しています」

この日、広島市の松井市長が、初めて譲渡会の視察に訪れました。
譲渡会に参加している高校生たち。
広島市の動物愛護センターで、ボランティアをしています。

【広島市・松井一実 市長】
「動物愛護センターにいる犬の飼い主を見つけてあげる?」
【進徳女子高校 動物愛護サークル部員】
「散歩したり、世話をしたり」
【広島市・松井一実 市長】
「ありがとう」

中井さんは、現場での気づきとボランティアの実情を訴えました。

【動物愛護啓発団体 猫は天使・中井百合子 代表】
「『適正管理地域猫活動』といったTNRを普及しなければいけないという事は現場に立たされているものは強く感じています。多くのボランティアが自己犠牲を前提で活動している背景がまだたくさんあります」

動物保護に携わる人たちが、現状を説明します。

【マツダ社内の保護猫活動の担当者】
「捕獲した(猫の)頭数が73匹。その中の50匹は去勢手術をしました。23匹は子猫なので荷堂さんの方で里親探しをやってもらっています」

【広島市・松井一実 市長】
「よし、これをもうちょっと徹底しようと関係者が一緒になって、あとは去勢手術の費用がかかるから、それをどうするか行政的にどこまで支援するかだね」

行政と市民がタッグを組んで、新たな取り組みが、その一歩を踏み出そうとしています。

【動物愛護啓発団体 猫は天使・中井百合子 代表】
「すごく真剣にとらえていただいていたので、これからに期待させてもらいたいし、私たちもできることがあれば引き続き活動をもっと広げていきたいと思っていますので」

課題は、たくさんあります。しかし、命を繋ぎながら、人と動物の共生社会を作っていく取り組みは、少しずつ、歩み始めています。

《スタジオ》
ボランティアの皆さんの思いですとか、ボランティア自らの負担ばかりに頼っているわけにはいかないですね。
【コメンテーター:広島大学法学部長・吉中信人教授】
「動物愛護法の精神にかなったものなんですけれども、地域の力だけ、善意だけに頼りきりではよくないですね」

広島市の松井市長も「行政がどれだけ支援できるかを考えなくてはいけない」というふうに話していましたけれども、本当に皆さんの善意の力を借りているっていうところをしっかり私たちも知ること。それから例えば無責任に野良猫とかに餌をあげないとか、少しでもできることを知ることが大切なのかなと改めて感じました。