一般財団法人 境港市農業公社(鳥取県)
“消えかけた特産綿”に命を吹き込んだ男の挑戦!
かつて“日本一の綿の産地”と呼ばれた鳥取県境港市。時代の波に埋もれ消えかけた特産品「伯州綿(はくしゅうめん)」を蘇らせたのは、農業経験ゼロの市の職員。耕作放棄地から始まった無謀とも言える挑戦。綿はやがて布団に、シャツに、そして赤ちゃんのおくるみに姿を変え、人々の心を動かしていきます。食べられる!?驚きの新展開も。情熱が町を変えた感動の物語。伯州綿にかけた一人の男の執念と奇跡の「そ~だったのか!」に迫ります。
境港市の弓ヶ浜半島では、かつて「伯州綿」と呼ばれる和綿が広く栽培されていました。しかし、安価な外国産の綿におされ、伯州綿は姿を消していったのです。そんな伯州綿を蘇らせようと立ち上がったのは、耕作放棄地の管理など農地の中間管理をする「境港市農業公社」。耕作放棄地を生かして、試験的に伯州綿の栽培を始めると、初年度から綿の栽培に成功。弓ヶ浜半島の砂地の土壌は水はけが良く、潮風が心地よく通り抜ける、伯州綿の栽培にとって理想の環境だったのです。カンパニーは伯州綿を中綿に使った布団をつくりますが、その価格は約7万円。高価な布団を販売して収入を得るのではなく、コンスタントに売れるものをつくらなければ事業として継続できないないと考え、伯州綿が持つ機能性を生かした商品化に挑むことにしました。
弾力性・保温性・通気性に優れている伯州綿。さらに、ふわふわとした肌ざわりの特性を生かせるのは、デリケートな肌をもつ赤ちゃんだと考えたカンパニーは、コットン製ベビー服で知られる山梨県の老舗・小林メリヤスに商品化を持ちかけました。そこで誕生したのは「おくるみ」。このおくるみは境港市が買い取り、2011年度から市内で生まれたすべての赤ちゃんに無償で送られています。14年前に始まったこのプロジェクトは、今も変わらず続き、これまでに贈られた数は3000枚以上になるのです。伯州綿の可能性はさらに広がり、シャツやストールなどにも。さらに、伯州綿の花から抽出された酵母を使い、パンを開発。酵母には高い保湿力があり、しっとりもちもちのパンが焼き上がるのです。