大平交通 株式会社(広島県)
瀬戸内海に浮かぶ向島で、地域の“なくてはならない足”として走り続けてきたタクシー会社。しかし2015年、突然の火災で主力車両を失い、売上の2割が一夜で消滅。さらに業界不況も重なり、会社は存続の危機に追い込まれます。誰もが廃業を覚悟する中、立ち上がったのは創業者の孫。彼は会社の財務状況をすべて公開し、社外へ助けを求めるという異例の決断を下します。そして導き出したのは、観光地・尾道という地域特性を生かした“常識破り”の戦略でした。小さな島のタクシー会社はいかにして再生を果たしたのか―。今回は、地域の足を守り抜いたカンパニーのそ~だったのか!に迫ります。


尾道市街から尾道水道を挟んだ対岸にある島・向島。ここで、1959年に創業したのが「大平交通」です。2015年、車庫で原因不明の火災が発生し、バスやタクシーなど5台の車両が焼失。タクシー事業の規制緩和も重なり、業績が悪化。火災の翌年には尾道営業所の閉鎖に追い込まれました。そんな中、2022年に父親から会社を引き継いだのが宍戸孝行さん。ますます経営が悪化していく中、地元の懇親会に参加した宍戸社長は、胸の奥に溜めていた弱音や不満をはき出しました。すると、先輩経営者から「全部、他責にしている!自責で考えろ」と厳しい指摘を受けます。そこで、宍戸社長は決算書を開示し、社外の先輩経営者たちに相談。島のタクシー会社として、どうすれば赤字を解消できるのか。そして、返ってきた答えは「利益率の高い事業を見極め、そこを徹底的に強化すること」だったのです。


宍戸社長が経営を立て直すための打開策として選んだのは、お客さんを観光地へ案内する「観光事業」。タクシーが道路を走りながら乗客を探す流し運転に比べ、利益率が高く、効率もいい。 しまなみ海道の玄関口・向島に本社を構えるカンパニーだからこそ導き出せた戦略でした。有名な観光地や絶景スポットを巡るプランに加え、しまなみ海道をサイクリングしながら、急な坂道や距離のある区間はタクシーに自転車を積んで移動するという非常にユニークなプランも誕生。これにより見事、赤字からの脱却を果たしたのです。さらに、インバウンド需要を呼び込むため、古美術品を扱う先輩経営者とタッグを組み、海外からの観光客に本物の甲冑を着てもらい、そのまま尾道の歴史や文化を楽しむ体験型観光プランを考案。尾道エリアならではの魅力を、国内外へと発信しているのです。