有限会社 佐々木豆腐店(広島県)
行列を生む老舗豆腐店の挑戦
広島市中心部・タカノ橋商店街。午前11時前から行列ができる人気の油揚げ定食を提供しているのは、三次市で130年続く老舗「佐々木豆腐店」。大手メーカーが台頭し豆腐店が減少するなか、なぜ「佐々木豆腐店」だけが売上を伸ばし続けられるのか。答えは、3年前に就任した若き5代目社長の大胆な決断にありました。伝統の味を守りつつ、新たな挑戦に踏み出したその背景とは?今回は、逆境を力に変えるカンパニーのそ~だったのか!に迫ります。


明治27年創業の「佐々木豆腐店」。130年受け継がれてきた豆腐は、わずか1時間で完売してしまいます。カンパニーでは、原材料である大豆を異なる気温・湿度・大豆の状態を見極めながら、つぶしていきます。そのつぶした大豆を煮てできた豆乳に「にがり」を加えてかためますが、この作業がもっとも重要な行程で、力の入れ具合・角度・手の動きをその日の気温にあわせ、丁寧にかくはんしていきます。機械にはできない、この繊細な手仕事こそが、カンパニーの豆腐を130年もの間、愛され続ける味に仕上げているのです。しかし、豆腐の消費量は年々減り続け、かつての3割減。材料の大豆は値上がりし、人件費も上昇。小さな豆腐店には、あまりにも厳しい現実が立ちはだかっていたのです。


130年受け継がれてきた、こだわりの味と手仕事を守るため、5代目社長の佐々木猛瑠さんは長年続けてきた卸販売を完全にやめることを決断。そして、広島市中心部に直営店を出店し、豆腐製造で生まれる大量の副産物を生かした惣菜づくりに力を注ぎ、販売することにしたのです。そのレシピはすべて社長のお母さんが考案した家庭の味。タカノバシ商店街に出店したお店には総菜だけではなく、ランチメニューも提供。午前11時の開店と同時に満席になるほどの人気店となっているのです。さらに、カンパニーは居酒屋形態での営業も始めようとしています。豆腐とお酒を組み合わせ、仕事帰りの“ゼロ次会”というニッチな需要を狙った新たな市場の開拓に踏み出したのです。