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2019年07月10日(水)
【よくある相談シリーズ】うちの子、本を読んでくれません…。
もうすぐ夏休みですね。「子どもが本を読んでくれない」とお悩みのお父さん・お母さんは、夏休みの宿題の読書ノルマを聞いて、頭を抱えているかもしれません。そこで今回は、「子どもの読書離れ」について、心理学や言語学での考え方を紹介しつつ、小学生の子どもと親のコミュニケーションについて、私自身8歳の娘がいる母親という立場から、みなさんと一緒に考えてみたいと思っています。



●「おもしろい本」に出会ったとしても・・・。

◆私事で恐縮ですが、ウチの娘は本を読むことに抵抗がありません。私が本好きで、娘にも本を好きになってもらいたいと思っていたため、家にはテレビを置かない、娘に読んでもらいたい絵本やマンガは即買いして本棚に置いておく、娘が本を読んでいる時にはできるだけ声をかけずに読み終えるまで待つなどの工夫をしてきました。

◆もっとも、本を読み終えるまで動かなくなるのは良し悪しで、保育園時代は娘が本を読み終えるのを待ってから家を出ていたため、遅刻の常習犯でした(当時の担任の先生、毎日のようにご迷惑をおかけしてスミマセンでした)。また、娘は、私の小言が始まる気配を察知すると本を開いて小言を封じる、本を読んでいて聞こえないふりをするなどの小技も持ち合わせています。

◆子どもが本を好きになるかどうかは、早い段階でおもしろいと思える本に出会えるかどうかにかかっていて、親としては「読みなさい」と強制するのではなく、本との出会いの場をできるだけお膳立てしてあげるしかないと、最近まで考えていました。ところが、そうではないかもしれないという思いが現在は生じています。

 
●そもそも、本を「ちゃんと」読めているの?

◆読書習慣によって得られるものと言えば、「知識」「語彙力」「想像力」などが思い浮かぶかもしれません。でも、それらを得るためには、そもそも根底に、本に書かれた日本語を正しく読み解く力「読解力」がなければなりません。外国語で書かれた文章を読む時、その言語の単語・文法・文構造の知識を含めた読解力がなければ、文章の内容が理解できないのと一緒です。

◆赤ちゃんの時から日本語に接していれば、話したり聞いたりできるのと同じように、読む力も自然に身に付くだろうと私たちは考えがちです。しかし、子どもたちの日本語読解力に関して、2018年に出版された『AI VS 教科書が読めない子どもたち』(注1)には、小学生の子どもの母親としても、大学でコミュニケーション教育に携わる教員としても見過ごせない衝撃的な調査結果が報告されていました。「おもしろいと思える本に出会えるかどうか」以前に、本を読んでおもしろいと思えるだけの「読解力」を子どもたちが持っていないかもしれないというのです。

◆教科書や新聞によく出てくる「事実について書かれた文」を読む時、私たちは、主語や述語、修飾語、指示詞や省略された語といった文構造を解析した上で、体験や常識などの知識も動員して文の意味を推論します。また、文章と図形・グラフを見比べて内容が一致しているかどうかを認識する力や、文章で書かれた定義を読んで、それと合致する具体例を認識する力を使うこともあります。あまりに当たり前にできてしまうため、大人がその読解プロセスを意識することはほとんどありません。しかし、そのプロセスの途中でつまずいてしまう子どもが相当数(問題によっては半数近くも)いるということが、同書の著者である新井氏らの開発した「リーディングスキルテスト」の結果から明らかになりました。

◆中学の教科書から引用した「幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた」と、「1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた」が同じ意味かどうかを尋ねたところ、「同じ」と誤答した中学生は約43%で、高校生でも約28%が間違えたそうです。

◆「幕府」や「大名」、「追放」「沿岸」「警備」といった単語がわからないという、単なる語彙力不足・知識不足の問題というわけでもなさそうです。私たちは普通、たとえわからない単語がいくつかあっても、他の部分から内容を推測しようとします。上の2つの文は、例えば ❶「先生は、2時間目、ケンカした2人を職員室に呼び、他の生徒には自習を命じた」 ❷「2時間目、ケンカした2人は職員室に呼ばれ、先生は他の生徒から自習を命じられた」とほぼ同じ文構造です。多くの人は❷の文に不自然さを感じるのではないでしょうか。❶では、「先生」が何かを命じる立場、「他の生徒」が命じられる立場として描かれていて、その関係性は、私たちが持っている「先生」と「生徒」のイメージにも適合します。一方、❷では、「先生」と「他の生徒」との関係性がねじれてしまっています。だから不自然に思えるのです。「幕府は~」の問題に正解できなかった子どもたちは、1つ目の文を読んだ時、「幕府」と「大名」との間に命じる立場・命じられる立場という関係性があることを的確に読み取れていなかったことになります。

 

●読書習慣と読解力は関係ない?

◆もちろん、上の問題に正しく解答できるかどうかと、その文が理解できているかどうかは、厳密に言うと同じではありません。文の内容は理解できていたけれど、何か他の理由で間違った解答をしてしまったとか、逆に、文を理解できていなかったのに当てずっぽうで正解したというようなことが起こりえます。また、どのようなテストでもその性質上、測定しようとする力(ここでは基礎的読解力)をごく限られた数の質問項目から推定しているに過ぎないという限界もあります。しかし、大量のデータ(本の中では累計2万5千人、WEB上の記載では2018年7月末までで約6万5千人のデータ(注2))の分析から、どの学年で、どのくらいの割合の子どもが、どのポイントで正解できていないか、が数値として示されたのです(注3)。さらに、測定された能力値は、その子どもが通う高校の偏差値と極めて高い相関(0.80~0.88)があったとのことです。その一方で、テストと一緒に実施した、生活習慣、学習習慣、読書習慣といったことを尋ねるアンケートの結果と照らし合わせたところ、基礎的読解力の能力値はどの項目とも目立った相関は見られなかったそうです。「小さい頃から読書が好き」という子どもの読解力が必ずしも高いわけではないという驚きの結果です。「こうすれば読解力が上がる」とか「このせいで読解力が下がる」と言える因子は特定されておらず、したがって読解力を養う処方箋も今のところ科学的に解明されていないのです。

◆リーディングスキルテストの結果から見える子どもたちの読み方について、新井氏は次のように述べています(注4)。「教科書が読めてない子がたくさんいるということです。文章を読んでいるようで、実はちゃんと読んでいない。キーワードをポンポンポンと拾っているんです。○○と○○と○○という言葉が出てきたら、こんなもんだろう、というような。」(注5)

◆そう言えば、以前、娘が本を読んでいるのを見て、気になったことがありました。かなりの量の文字が書かれている本なのに、ページをめくるスピードが異様に早いのです。「ホントにちゃんと読めているの?」と心配になりました。また、日頃の国語・算数の宿題でも、問題文のちょっとしたキーワードを見逃したり読み違えたりして、不正解になっているのです。「ケアレスミスが多いよね」と夫と苦笑していたのですが、もしかするとコトはもっと深刻なのかもしれません。

◆「子どもが本を読んでくれない」のはなぜでしょうか。単にその子が怠惰なのでしょうか。本を読んで、「へー」と思ったり、ワクワクしたり、感動したりした経験がないからでしょうか。それとも「本を読んで何の役に立つの?」「お父さんやお母さんだって本なんか読まないじゃん」と思っているのでしょうか。それ以前に、本を読んでも文章が理解できないから読むのが嫌なのでしょうか。その答えは、たぶん一人ひとり違うだろうと思います。

 

●夏休みに子どもと読書の関係を見つめ直そう。

◆夏休みの読書の宿題は、それを見極める良いチャンスです。選書を子ども任せにして「本、読んだの? 宿題なんだから読みなさい」と言うのではなく、親子で一緒に本を読む中で、子どもの様子を観察してみてはどうでしょうか。「お父さん(お母さん)が本を借りたいから、図書館につきあって」と促して、一緒に本を選びに行くのも一つの手です。

◆読むことが苦手な子どもの場合、いわゆる「ストーリー物」は避けたほうが良いでしょう。物語はエピソードの積み重ねで進んでいくので、途中でわからなくなると、途端に興味が失われてしまいます。むしろ、パズル要素が入っているもの、エピソードとエピソードが独立していて、前のページが理解できなくても先に進めるもの、親子でコメントしたりツッコミを入れたりしながら読み進められるものがオススメです。自由研究と兼ねて、図鑑や地図、レシピ本なんかを読むのも立派な読書です。

 

<夏休みに読んでみよう!オススメ図書紹介>

◆最後に、ウチの娘が繰り返し手に取る本の中から、いくつか独断的オススメ本を挙げておきます。

ヨシタケシンスケさんの絵本は、ぜひ1冊は手にとってみてください。カワイイ絵柄とつぶやきのようなセリフを中心に、毎回異なるテーマについての妄想(?)がほんわかと展開していきます。大人も子どもも、サクサク読めて、プッと笑える。最初はそれでいいのです。でも、どこかできっと、新しい気づきや発想の転換が生まれる,そんな奥深い絵本たちです。

❷私の研究の一環で、お父さんたちから子どもに絵本の読み聞かせをしてもらった時、大人気だったのが、『しんかんせんでいこう 日本列島 北から南へ』(間瀬なおかた 作・絵/ひさかたチャイルド)。ある驚きの仕掛けが施されていますが、それはネタバレしないでおきます。自宅や親戚の家の近く、旅行で行ったことがある場所を探しながら、話が弾みます。

『発見!冒険!大迷路』シリーズ(原裕朗&バースデイ 作・絵/ポプラ社)。タイトルの通り、迷路やアイテム探しなどのミッションをこなしながら、ストーリーを進めていきます。子どもだけではなかなかクリアできないので、お父さん・お母さんの手助けが必須です。

❹年長さんから小学1年生に特に人気がある『1ねん1くみの1日』(川島敏生 写真・文/アリス館)。年長さんは小学校入学の準備として。1年生さんは自分の学校と比べてみるのもおもしろいかも。1ヶ月分の給食の写真が並んでいるページは壮観です。

『へんないきものすいぞくかん ナゾの1日』(橋本利光 写真、なかのひろみ 文/アリス館)。鳥羽水族館の協力のもと、深海の「へんないきもの」が写真紹介されています。けっこうグロテスクな写真もあるので要注意。ウチの娘、ヒトデやサンゴは大嫌いなのに、なぜかこの本は好きで繰り返し読むんです。

❻おかし作りに興味を持っている子にオススメ、『キッチンでおやつマジック大百科』(村上祥子 料理製作・監修/学研プラス)。キッチンに普段からあるもので簡単に実験開始。終わったあとはおいしくいただけます。

『たのしい!科学のふしぎ なぜ?どうして?』シリーズ(村山哲哉 監修/高橋書店)。文字は多めですが、まず大人が読んで「へ~」となるはず。大人のその様子をぜひ子どもに見せてあげてください。

 


◆お子さんと楽しい読書時間をお過ごしください。私もこの夏、まずは娘をじっくり観察し、普段よりも意識的に娘と本の話をしてみようと思っています。

注1)新井紀子(2018)『AI vs 教科書が読めない子どもたち(電子版)』東洋経済新報社
注2)「一般社団法人教育のための科学研究所」https://www.s4e.jp/about-s4e
注3)ただし、本には限られた問題文の集計結果しか報告されていません。結果検証のため、より専門的な分析が書かれている論文も探してみましたが、現段階では見つかっていません。
注4)江川紹子「大事なのは『読む』力だ!~4万人の読解力テストで判明した問題を新井紀子・国立情報学研究所教授に聞く」https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20180211-00081509/
注5)実は、若者の似たような「読み方のクセ」はさらに前から指摘がありました。『下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち』(内田樹著/2009/電子版2013/講談社)では、マンガ、ファッション誌、情報誌といった身近にある活字媒体の文章ですら、平気で「文字を読み飛ばす」若い人の姿が論じられています。彼らは「わからないことがあっても気にならならない」「(自分の知らないことがあることを)特に不快には思っていない」のだと述べられています。『AI VS 教科書が読めない子どもたち』の研究結果はそれを数値で裏付けた形です。

鈴木佳奈

広島国際大学 
心理学部心理学科 准教授
博士(学術)

大学生を対象とするコミュニケーション教育(日本語の読み書き、アカデミックライティング、プレゼンテーション、ディベート)に携わっています。
専門分野は社会言語学、会話分析。日常会話を分析して、私たちがことばを使いながらどのようにお互いを理解し合ったり誤解したりしているのかを調べます。プライベートでも、8歳の娘とのコミュニケーションに笑ったり怒ったりしています。

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