健康基礎知識

小学生で受けておきたい予防接種

乳幼児の時は母子手帳を見ながら計画的に受けていた予防接種も、小学生になると意識が薄れがち。また公費補助のあるワクチンの種類も年々変わってきているため、世代によって接種・未接種の違いも生じています。2018年時点で、小学生時に追加接種が必要となるワクチンや、打っておきたい予防接種について、杉野小児科医院の杉野禮俊先生に聞きました。

ワクチンで予防できる病気はワクチンで予防を
 まず言っておきたいことは、ワクチンで予防できる病気(VPD)は恐い病気、かかると辛い病気ばかりです。「ワクチンで予防できる病気はワクチンで予防して下さい」の一言に尽きます。
 ワクチンの歴史を紐解けば約200年前の1976年にジェンナーが天然痘の予防のために牛痘を接種(種痘)した事に始まります。1960年に北海道夕張から始まった「ポリオ」の流行は最悪の状況となり、時の厚生大臣が政治責任をかけ生ワクチンをカナダとソ連から輸入し全国一斉接種に踏み切った結果、劇的といえるほどすばらしい効果がありました。その一方で「ワクチン禍(か)」と言われる、ワクチンの副作用による疾病や障害の事件があったことも事実です。
 「MR(麻しん·風しん)」も、ワクチン接種の効果もあり2015年に日本はWHOから麻しん排除の認定を受けました。2011年から「小児用肺炎球菌」ワクチンと「Hib」ワクチンの公費負担が始まったことで、肺炎球菌による髄膜炎や敗血症などの侵襲性感染症は激減し、インフルエンザ菌による髄膜炎はほとんど0になりました。中耳炎は肺炎球菌やインフルエンザ菌が原因となりますが、重症の中耳炎で鼓膜切開が必要な症例も特に1歳で著明に減少しました(図)。2014年からは「水痘(水ぼうそう)」ワクチンも定期接種となり患者数は激減しました。
日本脳炎2期(9~13歳未満)とDT 2期(11~13歳未満)を忘れずに
 小学生の間に受ける必要のある定期接種もあります。一つは「日本脳炎」の2期で、9~10歳での接種が推奨されており、市町から通知のハガキが届くようになっていると思います。「日本脳炎」は現在でも世界で数万人の患者発生がある、アジアでは最も重要なウイルス性脳炎です。日本においても5000人を超える患者が発生していましたが、1992年以降は10人未満となりました。しかし髄膜炎患者から日本脳炎ウイルスが検出されることもあり、ウイルス抗体を保有するブタが80%以上の県も多く媒介する蚊もいます。
 次に「DT」の2期で、11~12歳での接種が推奨されます。「DT」とは、ジフテリアと破傷風の2種混合ワクチン。生後3か月から接種できた3種混合は、それに「P(百日ぜき)」を加えたもので、2012年からはさらにポリオを加えた4種混合となっています。「DT」2期も、市町から通知の封書が届きますが、接種率は広島県で72.5%。ジフテリアは1999年以降報告されていませんが、破傷風は土の中にいる破傷風菌により発病し、毎年100人前後報告されています。東日本大震災の時には泥にまみれた外傷から多く発症し、救助に行ったボランティアの間でも問題となりました。自衛隊員は10年に一度予防することが義務とされています。
 また未就学児の話まで含めれば、小学校入学前の就学時検診時の予防接種歴チェックで、就学前までに必要な予防接種を受けていない子どもさんがかなりあります。「MR(麻しん·風しん)」ワクチン2期は就学前の1年間、4種混合と日本脳炎1期は90月に至る(7歳6か月)までとなっています。小学校に入るまでに接種していないワクチンは全部済ますようにして下さい。


任意接種だが受けておきたいワクチン
 任意接種にはなりますが、小学生以降でも受けておきたいワクチンを以下に挙げておきます。
● B型肝炎ワクチン
 2016年4月生まれの子どもから定期接種に組み込まれました。B型肝炎ウイルスは、肝臓に感染することで炎症を引き起こし、国内では「100人に1人程度」の割合で感染者があると推定されます。出産による母子感染のほか、血液や体液、汗、唾液、涙からも感染するケースがあり、家族にキャリアがいなくても、格闘技などのスポーツや性交渉などが感染経路となることがあります。肝臓の炎症が持続すると、慢性肝炎、肝硬変と悪化し、さらに進行すると肝がんに至る恐れもあります。
 小学生はもちろん成人でもワクチン接種は有効。医療機関にもよりますが、自費負担額は5,000~6,000円程度で、3回接種となります。ほとんどの小児科には在庫があり、接種可能です。
● 水痘ワクチン
 2014年10月から定期接種に組み込まれました。いわゆる「水ぼうそう」のことで、水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる発疹性の病気です。主に小児の病気で、9歳以下での発症が90%以上を占めますが、成人での水痘も稀に見られます。成人に水痘が発症した場合、水痘そのものが重症化するリスクが高いと言われますので、まだ罹患していなければワクチンを打っておく方が安心と言えます。自費負担額は8,000~9,000円程度で2回接種が推奨されています。
● おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン
 日本では、1989年に定期接種として、おたふくかぜを含む「MMR(麻しん・おたふくかぜ・風しん)」ワクチンが導入されましたが、接種後の無菌性髄膜炎等の問題があり、1993年に中止され、おたふくかぜは定期接種から外れ任意接種となりました。おたふくかぜは片側あるいは両側の唾液腺の腫脹を特徴とするウイルス感染症で、通常1~2 週間で軽快しますが、髄膜炎の他、髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎など合併症を引き起こすケースがあります。成人男性の感染は不妊症の原因となります。まだ罹患していなければワクチンを接種しておくべきと言えます。自費負担額は5,000~6,000円程度です。
安佐医師会と安佐学校保健会が5年ごとに追跡している安佐地区3小学校6年生と、1978年から追跡している成人群のムンプスの罹患歴とワクチン接種歴のデータ(表)。約3分の1もの受診者が罹患し、小学生では約40%がワクチン接種をしていました。

 ワクチンによって、抗体ができるために必要な回数や、抗体の持続期間は異なり、追加接種しておいた方が安心なものもあります。気になる方は一度母子手帳を持って相談してみてください。
 ワクチンは100%安全とは言い切れず、副作用を起こす可能性もあることは知っておきましょう。しかし、ワクチンの研究は日々進んでいます。未だ判断が難しい「子宮頸がん」ワクチンもその一つです。研究が進んだワクチンによる予防は、罹患が引き起こす重篤化のリスクを低くするものであることは間違いないと言えるでしょう。

杉野 禮俊 (すぎの・ひろとし) 杉野小児科医院 院長
医学博士、小児科専門医。日本小児科学会、日本子ども虐待防止学会、日本臨床ウイルス学会、日本インターフェロン・サイトカイン学会所属

杉野小児科医院
広島市安佐北区亀山2-8-26
082-815-1334


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