知って役立つわんぱくミニ情報

生き物の命を守る活動 ~ペットを飼うということ

 広島県動物愛護センターに取材に伺ったのは2月のある暖かい水曜日のこと。この日、犬の飼育講習会が行われているということで講習会に参加させていただきました。
 この日、講習会に参加されていたのは合計3組。講習会を受講すればその後1年間は保護された犬を譲り受けることができるそうです。
 今回は広島県動物愛護センター所長の冨永健さん、指導課課長の菊池和子さん他、職員の方々からお話を聞いたり、犬のトレーニングについての説明を受けたりしました。
 
1年間にどれだけの犬・猫が保護されるか知っていますか
 広島県動物愛護センター(以下「センター」という)では広島市、呉市、福山市の3市を除く県内全域を管轄しています。
 管内で平成29年度(2017年度)にセンターで保護、引き取り、または持ち込みされた犬は合計1,691頭、猫は898匹。数字を見れば決して少なくない数ですが、10年前には犬が2,862頭、猫が4,331匹でその多くが殺処分という最期を迎えていたことを考えれば、これでも随分状況が改善していることが分かります。 
 現在では以前のように炭酸ガスを用いた処分機による処分は行っていません。
 必要性を認める犬・猫に限り獣医師が麻酔薬を投与して安楽死させています。センターでは交通事故などに巻き込まれた動物の保護も行っています。そのため、重傷を負った犬、猫も保護されます。ケガをしていれば対症療法としての治療は行いますが、生き永らえさせることが苦痛を長引かせるほどの重傷や重病等を負った犬・猫は、動物福祉の観点から安楽死が選択されるのです。

 瀬戸内海の温暖な気候や豊かな自然を背景に、誰も来なくなった空き家などを住処にしながら人間に飼われることなく生きている犬や猫もいます。
 犬においては狂犬病予防法に基づいて野良犬は捕獲を行いますが、野良猫は捕獲の対象になっていません。そのためセンターが収容している猫は見つけた方が持ち込んだ、連絡を受けて引き取った野良猫の仔猫が中心です。
 自活できない仔猫は、そのまま放置されれば餓死するかもしれません。また、交通事故や野生動物に襲われたりして傷つく可能性が高いため、引き取ることがあります。


ペットを迎え入れることの責任と義務
 犬を飼う場合は狂犬病予防法に基づく登録を行い、毎年、予防接種を行うことが義務付けられています。登録を行った犬には首輪などに犬鑑札を付け、万一、迷子になっても飼い主が分かるようにしなくてはなりません。さらに、毎年の狂犬病予防接種も飼い主の義務です。予防接種を受けさせたら注射済票も着け、適正に飼育されていることが一目で分かるようにしましょう。センターで保護されても、鑑札や注射済票を確認できた犬は飼い主の元に戻すことができます。
 冨永所長によると「花火の日や雷が鳴った日の翌日にはセンターへの犬がいなくなったという問い合わせが増える」そうです。大きな音や光に驚いてパニックになった犬が飛び出してしまうためです。興奮した犬は首輪から抜けたり、繋いであった鎖を引きちぎって逃げ出してしまったりします。
最近では犬などの形をした愛らしい鑑札を発行している自治体もあります


 また、首輪に鑑札をつけるだけでなく、マイクロチップを体内に埋め込む方法も取られています。迷子や地震などの災害、盗難、事故など予期しない場面で飼い主と離れてしまっても飼い主のところに戻ってくる可能性が高くなります。
 マイクロチップを埋め込むなんてかわいそう、と考える方もいるかも知れませんね。しかしマイクロチップは直径2mm、長さは8~12mmと非常に小さく、注射器のような器具で簡単に埋め込めるものです。センターでは保護したすべての動物に対し、専用リーダーを使用してマイクロチップの読み取りをしています。マイクロチップを管理機関に登録しておけば飼い主が分かるので返還がしやすくなります。ペットの安全のためにもマイクロチップの装着普及が望まれます。

 定期的な予防接種も飼い主の重要な役割です。日本では1年に一度、狂犬病の予防接種が義務付けられています。
 日本は狂犬病清浄化地域であり1957年以降発生していませんが、先進国を含む諸外国では未だに狂犬病の発生が報告されています。狂犬病がどのような経路で日本に入ってくるか分かりませんから、日本においてもワクチンは必ず毎年接種しましょう。
 この他にもジステンパーなどのワクチンや、蚊が媒介するフィラリア予防も必要です。犬を家族として受け入れるということは、犬の健康を守ることを含めて飼い主の責務となるのです。

繁殖予定がないなら、不妊・去勢手術を
 センターでは、不妊・去勢手術をしなかったために生まれてしまった仔犬や仔猫の引き取り相談を受けます。「手術をするのはかわいそう」と考えた結果、多くの仔犬、仔猫が生まれてしまい、飼えなくて困っているという相談です。

 発情期に性的欲求が満たされない犬や猫はストレスを感じ、攻撃性や徘徊、遠吠えなどの問題行動が起こりやすくなります。繁殖を望まないのであれば、動物をストレスから解消してやるためにも不妊・去勢手術を行いましょう。手術後は生殖器由来の病気を予防する効果もあり、決して「かわいそう」な処置ではありません。
 もちろん、手術にはデメリットもあります。しかし、病気の予防だけでなく、寿命の延長にもつながるとされています。センターでは新しく飼い主になる方に不妊・去勢手術を誓約していただき譲渡しています。犬が一生、新しい飼い主の元で健康に暮らせるよう、そして不幸な命を増やさないよう理解を求めています。

しつけと芸は違います! 家族として共に暮らすためのしつけの大切さ
 「お手」「おかわり」と声をかけると犬が手を出す様子はとても愛らしいものです。人間が喜ぶ様子を見ると、犬も楽しんで前足を出してくれるでしょう。
しかし、これは犬の『しつけ』ではなく『芸』。しつけとは犬が人間の社会の中で家族の一員として生活していくために必要なルールやマナーを教えていくことです。

 例えば、「マテ」「オイデ」などのしつけは、急な飛び出しを防止したり、人にじゃれようとして飛びついたりするのを抑止できます。「フセ」は犬が吠えにくいポーズのため、無駄吠えしている時に「フセ」をさせると吠えるのを止めたりできます。
 散歩をするとき、飼い主をぐんぐん引っ張っていく犬がいますが、これもNG。散歩の際にはリードを引っ張らせず、きちんと飼い主の脇に沿って歩くようにしつけます。きちんとしつけていれば飼い主が犬に引っ張られて転倒したり、他の犬や人に向かって飛びついて咬傷事故になることもありません。
このように、犬の勝手な行動を防ぎ、犬や周囲の人々の安全と健康を守ることがしつけの目的なのです。
センターで飼われているサラダちゃんはとてもお利口。声をかけられるとアイコンタクトで返します。
動物愛護教室やしつけ方教室などで活躍しています。サラダは、仔犬の時にセンターへ収容されました。
こうした雑種の犬でも、しつけることによって賢い家庭犬になることを知っていただきたいです。


動物愛護センターでは収容頭数削減を目標にしています
 センターは不幸な犬・猫を少しでも減らそうと、動物に関する相談や正しい飼い方の指導など啓発活動を行っています。
 毎週定期的に行われている犬の飼育講習会には301人(平成29年度)の方が、猫の飼育講習会には179人(平成29年度)が受講されました。またセンター内外で行われるしつけ方教室や動物愛護の啓発活動にも多くの方が参加しています。

 しかし、センターに収容される犬、猫は後を絶ちません。
 10年前と比べれば、収容頭数は確かに減少し、その殺処分も現在では、必要最少限度となっています。それでもまだセンターに収容される犬・猫はゼロになりません。飼われていた犬や猫が迷子になったり、家で飼っていてもいつしか妊娠してしまい、予期せぬ出産に至ることも一因となっています。
 飼い犬であっても鑑札や注射済票をつけていなければ野犬として捕獲の対象となります。飼い犬には必ず鑑札と注射済票をつけましょう。そして、マイクロチップの埋め込みを行うようにしましょう。

 一方、いわゆる野良猫についてですが、センターでは地域猫活動を勧めています。センターが現地確認し活動を承認します。承認後は、エサやトイレの管理をしていただき、成猫であれば不妊・去勢を行った後に地域に戻します。法律で捕獲が定められていないことがその理由だそうですが、自活できない仔猫の場合には、動物愛護の観点から保護・収容し、健康状態などのチェックに合格した猫から一般にも譲渡を行っています。
 地域に戻された猫は「地域猫」と呼ばれます。地域猫はエサをやる人が責任を持って飼えれば良いのですが、地域に住み着いている猫の場合には、そこに住む地域の方々の理解を前提に地域猫として戻します。

 通常、屋内飼育されている猫であれば寿命は10~15年程度です。しかし、地域猫など人に飼われず外で生きている猫の寿命は短く5~6年とも言われ、生まれた仔猫の多くが事故や病気などで死んでしまいます。そのため、地域猫は去勢・不妊手術を施すことで、今以上に増やさないことで収容を減らせるよう取り組んでいます。
過去、不幸にも殺処分せざるを得なかった命を弔う慰霊碑。何千、何万もの小さな命が失われました。
センターでは命を弔う慰霊式も行っています。


 かわいいから。欲しいから。生き物は要らなくなったら捨てられるオモチャではありません。小さくてかわいかった仔犬は次第に体が大きくなり、顔つきや行動も変わってきます。やがて年老いて体が不自由になったり、若くして病気にかかってしまうこともあります。ペットを飼う前は、彼らの命の責任を負うことの意味を家族で話し合ってから飼い、一度飼い始めたら最期まで家族として愛してあげてください。

 犬・猫の飼うための選択肢はペットショップ以外にもあります。センターでは健康状態や人への懐きやすさを考慮して、一般家庭に適した犬・猫の譲渡を行っています。
 ペットを飼いたいと思ったら、仔犬や仔猫の譲渡を受けるため、あるいはペットを飼う心がまえを確かめるため、ご家族で飼育講習会に参加してみられてはいかがでしょうか。

(広島県動物愛護センター 動物愛護館の写真)

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