子育てアドバイス

【よくある相談シリーズ】LGBTQ+とは? 子どもの性の多様性に親ができること

LGBTQ+に関する理解が少しずつ進んでいるとはいえ、まだまだ「わからない」「どう接したらいいかわからない」という親御さんも多いのではないでしょうか。特に、自分の子どもが性的マイノリティだと気づいた時は、戸惑いや不安が大きいかもしれません。
今回は、LGBTQ+やSOGIの基本的な考え方から、子どもの性の違和感にどう向き合えばいいか、そして差別をしない子どもに育てるために親ができることなど、性的マイノリティ当事者グループ「NINA ARICA」共同代表の木谷幸広さんに聞きました。

LGBTQ+とは何か

LGBTQ+とは、性的マイノリティに関する多様なあり方を示す総称です。それぞれの頭文字には以下のような意味があります。

L(レズビアン):女性が女性を好きになる性的指向
G(ゲイ):男性が男性を好きになる性的指向
B(バイセクシュアル):男性・女性のいずれにも恋愛・性的感情を抱く人
T(トランスジェンダー):生まれたときに割り当てられた性別と、自身が認識する性別(性自認)が一致しない人
Q(クエスチョニング):既存の性の枠組みに当てはまらない、あるいは探している最中の人
+(プラス):ノンバイナリー(男女のどちらにも分類されない性自認)、アセクシュアル(他者に恋愛感情や性的欲求を抱かない)、パンセクシュアル(性別にかかわらず人を好きになる)などを含む、その他の多様な性のあり方を包括しています

LGBTQ+の人々は「特別」な存在ではなく、誰もが持つ性の多様性の一部として理解されるべき存在です。

「SOGI(ソジ)」という考え方

LGBTQ+と関連して、「SOGI(ソジ)」という言葉も近年注目されています。SOGIは “Sexual Orientation and Gender Identity”(性的指向と性自認)の略であり、すべての人が持つ性の構成要素を示す概念です。

SOGIは以下の4つの要素で構成されます。

身体の性:生まれたときに割り当てられる性(戸籍上の性など)
性的指向:誰に恋愛感情や性的関心を抱くか
性自認:自分自身が認識する性別
性表現:服装や言葉づかい、髪型など、自分を他者にどのように見せたいか・見られたいか

この考え方の重要な点は、LGBTQ+の人だけでなく、すべての人に関係があるということです。SOGIは、性のあり方に対する一人一人の違いを認め合うための視点です。

子どもの性の違和感に親はどう向き合うべきか

性的指向が異性ではないことに気づくのには個人差はありますが、多くの場合思春期あたりだといわれています。声変わりなどの体の変化が始まると、より戸惑いが大きくなることもあります。さらにメディアでは、男性は女性を、女性は男性を好きになることが当たり前のように描かれています。そこにあてはまらない自分はおかしいのではと、心が乱れてしまうのです。
それを親に話すことは、到底できないでしょう。親がシスジェンダー(生まれた性別と性自認が一致している人)で異性愛者の場合、その価値観と違う自分に対して「悪いことをしているのではないか」という後ろめたさを感じることが原因のひとつです。これは性的マイノリティの多くが幼い頃から抱える悩みであり、自己肯定感の低さにもつながっています。

また、トランスジェンダーの子どもの場合は、小学校入学時に制服がきっかけとなる場合もあります。例えば小学校から制服がある地域では、「男の子用(女の子用)の制服を着たくない」という子どもの声に親が真剣に向き合い始めることも少なくありません。
否定せず、まずは話を受け止めることが最も大切です。初めから100%理解できなくても問題ありません。大事なのは「あなたの話を聞きたい」「あなたを大切に思っている」という気持ちを伝え続けることです。ただ、親戚の子どもや近所のお子さんという第三者ならまだしも、自分の子どものことになると、受容度の低下傾向があるというデータもあります。だからこそ、親として意識的に理解を深めることが重要です。

差別をしない子どもに育てるために、親ができること

子どもがLGBTQ+当事者であるか否かにかかわらず、多様性に触れる機会を持つことはすべての子どもにとって重要です。日常生活の中で意識できるポイントとして、言葉づかいがあります。「さすが男の子!」「女子力が高いね」といった言葉は、性別に関する無意識の偏見を育ててしまいます。褒め言葉に、男や女を意識した表現は避けましょう。親自身がジェンダーにとらわれない表現を心がけることで、子どもにもその価値観が自然と伝わります。

また、家庭を多様性に寛容な雰囲気にすることも大切です。テレビや本、日常会話で性別や見た目、人種に関する偏見的な表現があれば、「それってどう思う?」と問いかけて、「違っていてもいい」という価値観を共有していきましょう。親自身が「知らなかった」「勉強中」と正直に学ぶ姿勢を見せることも、子どもが親を信頼し、学ぼうとするきっかけになります。

子どもに差別的表現がみられた場合は、その場で「その言い方は相手を傷つけるかもしれないよ」と伝え、注意を促すことが大切です。後で落ち着いてから「どうしてそう言ったのかな?」「どんな気持ちだった?」と話を聞き、考えを深める機会をつくることも重要です。
また、子どもが差別的な言葉を使う背景には、社会構造の影響が大きいことも忘れてはいけません。差別は生まれつきのものではなく学習されたものであり、理解を深めることで改善ができるのです。

「わからない」からこそ、一緒に考える姿勢を

子どもの性で悩んでいるときは、決して一人で抱え込まないことが大切です。

恥ずかしいことでも、誰かに言いにくいことでもありません。実際、同じような悩みを持つ親御さんはたくさんいます。だからこそ、匿名で相談できる専門機関への電話や当事者グループなどに問い合わせてみてください。広島ではLGBTQ+(かもしれない)子どもとその保護者をサポートする活動をしている団体「ここいろhiroshima」がSNS上での相談も受けています。自分だけで抱え込まず、周りの支えを借りていくことが、子どもにとっても親にとっても良い方向につながります。

また「親としてこうあるべき」という完璧さを手放して、「よくわからないけど一緒に考えていきたい」という姿勢を子どもに見せることが、子どもにとって何よりの安心になります。性のあり方に正解はありませんが、「あなたのままでいい」「一緒に悩んでいこう」という親のメッセージが、子どもにとって大きな支えになるでしょう。大切なのは、性別や身体的特徴や国籍ではなく、人格や人柄なのですから。

木谷 幸広
1997年に名古屋でゲイバーを開店し、後に法人化して複数の店舗を経営。2019年から広島修道大学大学院でLGBTQ+に関する研究に取り組み、修士論文を執筆。その後、公益財団法人広島県男女共同参画財団に勤務し、LGBTスタディーズや図書イベントの企画・運営に携わるとともに、性の多様性やパートナーシップ制度について各地で講演。2023年に退職し、性的マイノリティ当事者グループ「NINA ARICA」を立ち上げ共同代表に。主催する交流会「つながり座」や、40歳以上を対象とした「おりおーて広島LGBTQ+シニアサポート」では、語り合いを通して参加者がエンパワーされ、ピアサポートし合える関係性を築ける場づくりを目指している。また、講演活動では、当事者でない人にも性の多様性について正しく深く学んでもらうことを目的に、地域社会への働きかけを続けている。2025年秋に広島県初開催となるプライドパレードの事務局長も務める。

【よくある相談シリーズ】高学年ですが、泳げません。今からスイミングに通うのは遅いでしょうか?

夏が近づくと始まる学校の水泳の授業。しかし、高学年になっても泳げないという悩みを抱えるお子さんも多いのが現実です。実は、スイミングは中~高学年から始めても、むしろその時期が最適だと言える理由がいくつもあります。今回は、少し大きくなってからスイミングを習う強みを、ファーストスイミングスクールの辻村研一コーチから聞きました。

「泳げない」が気になる高学年こそチャンス

日本におけるスイミングスクールの普及は、1964年の東京オリンピックをきっかけに始まりました。室内プールの普及、高度経済成長期における教育熱の高まり、そして学校水泳の導入により、全国に3000校以上のスイミングスクールが誕生。それ以降、スイミングは長らく「子どもに通わせたい習い事ランキング」の常連です。とくに現在では、年長から小学校1年生のタイミングで通い始める家庭が多いと言われています。

ですが、すべての子どもが年長〜低学年のうちにスイミングを始めるわけではありません。中には小学校4年生、5年生、6年生になっても「まだ泳げない」「水が怖い」といった悩みを抱える子もいます。保護者の方としては、「今から始めても大丈夫なのか」「年下の子たちに混じって恥ずかしい思いをしないか」といった不安もあることでしょう。

ですが、ここで改めて強調したいのは、高学年からでもスイミングは遅くない。むしろ上達しやすく、本人の自信にもつながりやすいタイミングだということです。

高学年で水泳をスタートする3つの強み

スイミングは、単に身体を動かすだけでなく「考えて動く」スポーツです。そのため、小学校高学年から始める子どもたちは、低年齢でスタートした子よりもむしろ有利な点が多くあります。

1.理解力の高さ
高学年になると、言葉での説明を理解し、自分なりに考えて動けるようになります。
たとえば、水泳における最大の壁ともいえる「呼吸のタイミング」。顔を水から上げた瞬間に息を吸おうとすると、ほとんどの場合水を飲んでしまい、咳き込む原因になります。指導者が最初に教えるべきことは、顔を上げた瞬間には口から一気に息を吐き、その後に口から息を吸うことです。これは、子どもたちにとっては少し戸惑う部分かもしれませんが、理解力が高い学年になってくると、「どうして顔を上げた瞬間に吸ってはいけないのか?」という理由をしっかりと理解し、実践に移しやすくなります。この飲み込みの早さは、高学年ならではの強みです。

2.体力・筋力の安定
高学年の子どもは、ある程度の持久力や筋力がついているため、水中での動きにも対応しやすくなっています。少し苦しくても「もうちょっと頑張ろう」と思える精神的な粘りも備わってきており、技術の習得においても継続性が期待できます。

3.成功体験がわかりやすく得られる
スイミングは「できるようになった」が実感しやすい習い事です。
「今日は初めて顔をつけられた!」
「5メートル浮いて泳げた!」
「25メートルを泳ぎきった!」
特に思春期に水泳で自信を失いかけている本人、保護者にとっては水泳を習っての「出来た!」という感動の連続体験で、自己肯定感を得られる最適なタイミングになるでしょう。

スイミングスクールの選び方が一番のカギ

多くのスイミングスクールでは、泳力に応じた「進級システム」に基づいてクラスが分けられています。この仕組みは、年齢よりも技術レベルを重視してグループ分けするため、10歳以上でも初級レベルであれば、未就学児と同じクラスに振り分けられることもあります。

この状況を不安に感じる保護者は少なくありません。そのため、この課題に対応するスクールを選ぶ必要があるでしょう。たとえば、以下のような工夫を行っているスクールを選ぶと安心です。

●泳力に応じた柔軟なクラス編成があるか
スイミングスクールの中には、年齢や体格に配慮しつつも、泳力に応じたグループを組んでくれるところがあります。年齢に応じた理解力を踏まえた指導をしているか、まずは相談してみるのがベストです。

●コーチと直接話せる環境があるか
入会前にはぜひ子どもと一緒にスクールのフロントを訪れ、コーチに相談してみましょう。泳げない子がどういったグループに入るのか、レッスン中の雰囲気はどうか、同年代の子どももいるか…といったことを確認することで、不安が和らぎます。

●パーソナルレッスンの選択肢
グループレッスンに抵抗がある場合、最初は個別指導から始めるのも一つの方法です。基本的な技術や呼吸のコツを丁寧に教えてもらうことで、自信がつき、その後グループレッスンにスムーズに移行できます。

年齢を気にせず子どもの「やってみたい」を応援して

水泳は特別な環境(水)が必要なため、自宅では学びにくく、専門施設での習得が効果的です。ケガのリスクが少なく、安全性が高い点も大きな魅力です。集団行動に慣れることができ、協調性も育まれます。さらに、免疫力や体力の向上、姿勢の改善にもつながる、心身にとって理想的な習い事です。
また、泳げるようになることは、将来的にも大きなメリットとなります。中学校や高校での水泳授業に不安を感じずに取り組めるほか、大人になっても健康維持や趣味として続けられる、一生もののスキルです。

重ねてお伝えしたいのは、スイミングはいつ始めても遅くないということ。特に小学校高学年という時期は、理解力・体力・自発性が揃ったベストなタイミングとも言えるのです。習い事に年齢のリミットはありません。大切なのは、子ども自身が「やってみたい」と思ったときに、その気持ちを後押ししてあげられる環境をつくることです。

まずは近くのスイミングスクールを見学してみてはいかがでしょうか? コーチと直接話をして、クラス分けや進級の仕組みを聞いてみるだけでも、大きな安心材料になると思います。

辻村 研一
ファーストスイミングスクール広島コーチ
大阪の老舗スイミングスクールの高校卒業と同時にコーチとして従事。社内研修担当、店舗開発部長、系列会社社長を経てファーストスポーツ株式会社を設立。全国各地のスイミングスクール運営・コーチ研修のコンサルタント業務を担う。現在は、広島市西区の「ファーストスイミングスクール」を経営しながら、コーチキャリア44年の経験を活かし、幼児から全国大会出場選手まで幅広く水泳指導を手がける。

【よくある相談シリーズ】最近の中学英語が難しくなっていると聞きました。親ができることは?

2020年度から、小学校での外国語教育が必修化され、すでに5年が経過しました。早期に英語に触れることは、子どもたちにさまざまなメリットをもたらすと期待されていますが、一方で中学校に進んだ際に、英語に苦手意識を持つ子どもが増えているという課題も浮かび上がっています。小学校段階でどのような英語教育を行うべきか、子ども英語講師の石賀美希先生にそのポイントを伺いました。
小学生の英語教育の進化
小学校での英語教育は、2011年度から小学校高学年での外国語活動が必修となり、2020年度にはさらに進化し、外国語が教科として必修化されました。これにより、現在の5・6年生は週に2回、年間70時間の英語授業を受けています。授業の目的は、英語を使ってコミュニケーションを図るための基礎を育むことです。具体的には、聞く・話す・読む・書くの4つの力を総合的に伸ばすことを目指しています。各学校では、子どもたちが楽しみながら英語に親しむことができる工夫がなされています。

また、3・4年生の段階でも、成績はつかないものの外国語活動として英語の授業が行われています。この時期は、主に「聞く」ことと「話す」ことに焦点を当て、英語に対する親しみを育むことが目的です。これにより、5・6年生の英語学習に向けた準備ができるようになっています。
中学校の英語教育は格段にレベルアップ
親世代にとって驚くべきことかもしれませんが、現在の中学校では、卒業時に英検3級以上の英語運用能力を身につけることが目標となっています。中学1年生の段階から、be動詞や一般動詞、助動詞などが混在し、高度な文法が登場します。これまでの英語教育では、1回の授業で1つの文法事項を学んでいましたが、今では1回の授業で複数の文法を学ぶスタイルが一般的です。英語で短いエッセイを書く力も求められるようになります。さらに、2年生になると、自分の意見を英語で表現し、結論を述べるという能力が重視され、プレゼンができるよう求められます。これにより、英語力だけでなく、自分の意見をしっかりと伝える力も養われます。

中学3年生では、ディベートを通じて論理的な思考力や英語で自分の意見を積極的に表現する力が試されます。実際に社会問題や環境問題などをテーマにしたディスカッションや発表が行われます。これらの内容は英検準2級レベルに相当し、かなり高いレベルの英語力です。

30代、40代以降が学んだ中学英語はきっと、アルファベットを学ぶことから始まったでしょう。自分の意見を英語の複数文で話すなど当時は求められなかったと思います。つまり、現在の中学英語は、親が思う以上にハイレベルなのです。
中学に進んでからのつまずきが課題に
小学校で英語に触れ、中学校で高度な内容を学ぶこと自体は素晴らしいことですが、現実には中学に進んでから英語に苦しむ子どもも多く見受けられます。小学校の英語教育が、中学英語にどれだけつながっているかというと、必ずしも十分に準備されているとは言えません。特に文法の細かな部分に関しては、小学校ではあまり学ばず、より抽象的なコミュニケーションの部分に重点を置いています。そのため、いきなり中学校で難しい文法や複雑な英語の文章を学ぶ際に戸惑う子どもが増えています。

また、地域や学校によって英語教育の進め方に差があるため、同じ中学校に進んだ子どもでも、基礎学力に差が出てしまうことがあります。さらに、小学校と中学校の授業スタイルの違いも、スムーズな学びの継続を難しくしている要因です。このような背景から、中学に入った際に英語に苦手意識を持つ子どもが増えている現状があります。
小学生のうちからできる英語教育のサポート
小学校での英語教育が中学英語にうまくつながるようにするために、家庭でできるサポートや対策を考えることが重要です。まず、塾や英会話教室に通うことで、英語の基礎力を高めることができます。特に、英語の「読み」「書き」に重点を置いた学習を行っている教室を選ぶとよいでしょう。最近では、オンラインで短期集中講座を提供している教室も多いため、時間が限られている場合でも柔軟に学習できます。

家庭内でできる対策としては、小学生の教科書に付いている二次元バーコードを活用することが挙げられます。これをスマートフォンで読み込むと、英単語の発音やイントネーションを身につけるための音声チャンツが流れます。リピートして学ぶことで、自然に英語の音に親しむことができます。

また、日本の英語教育では耳から英語を学ぶ機会が少ないため、まずは「聞く」ことに重点を置くことが大切です。耳で英語の音を覚えることで、次第に目で見る文字や書くことにも慣れていきます。英語を全身で感じながら学んでいくことが、英語力向上のための第一歩となります。そしてインプットだけでなくアウトプットも大事です。国際交流のイベントを見つけて参加するなど、英語に対して興味付けをするのも有効な手段となるでしょう。

英語を学ぶことは、単に言語能力を向上させるだけではありません。異なる言語や文化に触れることによって、子どもたちは新しい視点を得ることができます。これにより、広い視野や寛容性を養い、共感や柔軟な思考を育てることができます。その結果として、日本文化への理解や平和教育にもつながると考えられます。現在の英語教育に関する情報を得て、無理なく子どもたちをサポートし、楽しい英語学習の世界に導いてあげてください。英語力はグローバルスタンダード。素晴らしい未来が子どもたちに待っていますよ。
石賀 美希
子ども英語講師。呉市押込在住。これまで、大手英会話スクールや幼稚園での指導経験を経て、出産を機に自宅で子ども英語教室を開講。イギリスの教育省認定の英語の読み書き指導プログラム「ジョリーフォニックス」を年長クラスから導入して英語の基盤を作りながら、英語運用ができる子どもを育てることを目標に指導。コロナ禍以降は、オンラインで読み書きが苦手な学習障害の小学生や、英語初めての中学生のための短期コースを開講。小学生2児の母。

【よくある相談シリーズ】長期休みは、子どものご飯に悩みます。作り置きについて教えてください。

こどもが長期休みに入ると、お母さんやお父さんは子どものお昼ごはんについて、考える機会が増えるのではないでしょうか。長い休みの間、毎日3食の献立を考えるのはとても大変です。そんな時に便利なのが作り置き。日々の生活に役立つ作り置きのコツを管理栄養士の藤田恵美子先生に聞きました。
子どもも親も幸せになる役立つ作り置き
作り置きとは、事前に料理をまとめて作っておき、冷蔵庫や冷凍庫で保存しておく方法のことを指します。忙しい日々の中で、食事の準備を簡単にし、時間を節約するために便利な手法です。時短になることはもちろん、バランスのとれた栄養を献立に取り入れやすくなるなど、まさに子育て真っ最中の家庭にぴったりです。特に春休み、夏休みなどの長期休みになると、忙しさから、子どもの昼食を外食やコンビニ食に頼ってしまう機会が多くなります。出費が増加し、心の余裕もなくなるなど、親を悩ます子どもの休みですが、それらを助けてくれるのが作り置きという手法なのです。
作り置きするために覚えておきたい調味料と調理法
レシピの種類にもよりますが、作り置きの日持ちは、火を通してないもので約2~3日、味付けの濃い煮物など調理済みの料理は約4~5日です。ただ作って置いておくだけでは、作り置きになりません。保存が効きやすい調味料や調理方法をいくつかお伝えしますので、参考にしてみてください。

―料理の日持ちを助ける調味料―
作り置きのレシピ本や料理サイトを見ると、大体どの調理にも同じような調味料が使われています。これらには全て意味があるので、覚えておくといいでしょう。

例えば、酢は、殺菌作用があり食材を酸化から守ります。醤油やみりんは、含まれる塩分や糖分、アルコール分により保存性を高める効果があります。また、塩も食材を保存するために欠かせない調味料で、食品の水分を抜き、細菌の繁殖を防いでくれます。オリーブオイルは、食材をコーティングして酸化を防ぐ役目があります。

逆に、作り置きに向かない調味料もあります。子どもが大好きなマヨネーズは、時間が経つと分離してしまったり、酸味が強くなったりすることがあります。作り置き料理に使う場合、マヨネーズは加熱した後に使用するか、食べる直前に追加しましょう。生鮮食品であるヨーグルトは、作り置きしておくと酸味が強くなり、食感が変わることがあります。加えて、長期間保存すると水分が分離し、見た目や食感が悪くなるため、調味料として使う場合は直前に加えることをおすすめします。

―作り置きを長持ちさせる調理方法―
食材が腐る原因の多くは水分が関係しています。水分が野菜から出て、保存温度によって菌が繁殖し始めるのです。そのためには、料理をできるだけ早く冷まし、水分が出ないような方法をとることが大切です。

野菜などを茹でた場合は、きっちり冷まして水分を切りましょう。保存容器も重要です。密閉できるガラス容器や、冷凍用のフリーザーバッグを使用することで、菌の侵入を防ぎ、鮮度を保ちやすくなります。冷凍する場合、「冷凍用」と明記してあるものを選びましょう。耐冷性があるため衛生面で優れ、食品の鮮度も長持ちします。
手洗い、消毒などのひと手間で食中毒の防止を
食中毒のリスクも考えて、調理をしましょう。ひと手間で、食中毒防止に役立つポイントがあるので、ぜひ実践してみてください。まず、基本的なことですが手洗いの徹底です。食材を触る前や調理器具を使う前に、必ず手を洗いましょう。また、肉類や魚介類は十分に加熱してください。使用する器具や器の消毒も重要です。使う包丁やまな板などは、使う前後にしっかりアルコール消毒をしましょう。衛生面に不安があれば、使い捨てのまな板シートが役立ちます。まな板シートは、洗い物が減るだけでなく、食中毒回避という利点があるのです。
高学年の子どもが意識的に取り入れたい栄養素
1. タンパク質
高学年の子どもは筋肉や骨の発達が進むため、良質なタンパク質が必要です。肉、魚、卵、大豆製品(納豆、豆腐)、乳製品などがいい食材例です。特に成長期には、成長ホルモンが活発に分泌されるため、身体の修復や免疫機能の向上に欠かせません。

2. カルシウムとビタミンD
骨の成長にはカルシウムが必要です。この時期に十分なカルシウムを摂取しておかないと、骨密度が低くなり、将来的に骨折しやすくなり、骨粗鬆症のリスクが高まります。カルシウムは牛乳や乳製品、緑黄色野菜、魚(小魚やしらす)に含まれています。また、カルシウムの吸収を助けるビタミンDも大切で、魚やきのこに多く含有されています。

3. 鉄分
特に女の子は月経が始まることで、鉄分の消費が増えるため、鉄分を意識的に摂ることが大切です。鉄分は貧血を予防し、エネルギーの供給にも重要です。鉄分を多く含む食材には、赤身の肉、レバー、ほうれん草、海藻類、豆類などがあります。
栄養も成長もメンタルも作り置きでカバーを
焼きそばやうどんなど、シンプルで一辺倒になりがちな長期休みの昼食ですが、作り置きがあればメイン料理にプラス1品を添えて栄養面をカバーできます。仕事を終えてクタクタで帰宅しても、冷蔵庫に出来上がった料理があれば、子どもと一緒にすぐ食卓を囲めます。お弁当が必要ならば、冷蔵庫にある作り置きを子ども自ら選んで、お弁当箱に詰めるという自立を促す作業もできます。親が楽になるだけでなく、子どもたちの食生活を持続的に整えるという大きな役割もあるのです。この春休みから、ぜひ作り置きを習慣にしてみてください。みんなが笑顔になる食卓と未来が待っていますよ。
藤田 恵美子
管理栄養士。山口県下松市在住。日本最大級のスキルシェアプラットフォーム「ストアカ」にて、オンライン料理教室を行うなど、食の大切さを伝える活動を行う。管理栄養士の知識と主婦の目線をいかした時短でおいしい献立が好評。災害時に役立つ調理と食の知恵が人気を呼び、受講生は2500人超え。2児の母。

【よくある相談シリーズ】スポーツを頑張る子どもを支えたい。補食の観点から親にできることとは?

スポーツをしている子どもたちにとって、成長に必要な栄養素をしっかりと補うことは非常に大切です。特に、運動量が多くなるとエネルギー消費が激しく、体は多くの栄養素を求めるようになります。今回は、スポーツキッズにとって補食がどのように重要か、そしてどのタイミングでどんな補食が効果的なのかを、スポーツ栄養士の上原寛恵さんに聞きました。
子どもの成長を支える3食にプラスする補食
「補食」とは読んで字のごとく、「食事を補うもの」です。朝食、昼食、夕食の3食以外に摂る食事のことで、エネルギーや栄養素を補うために食べ、成長期の子どもやスポーツなどをする人にとって、疲労回復やパフォーマンス向上に役立ちます。

スポーツに取り組んでいる子どもたち、特に成長期にあるスポーツキッズにとって、補食は単なるエネルギー補充以上の意味を持っています。アスリートとしてのパフォーマンスを高めることはもちろん、成長をサポートし、健康を維持するためにも適切な補食は欠かせません。
成長スパートを見逃さず、適切な食事と補食を
成長期におけるエネルギー補給は、単にスポーツをしているから必要というわけではありません。子どもたちが体重や身長を伸ばし、骨や筋肉を作るためには、十分なエネルギーが必要です。特に、成長スパートが始まる時期、これには個人差がありますが、男の子は早くて9歳から、女の子は12歳から14歳の間に急速に身長が伸び、骨や筋肉の成長が加速します。この時期にエネルギー不足が続くと、成長が停滞するだけでなく、本来到達するはずの最終身長に影響が出る可能性があります。

特に、運動量が多いスポーツキッズは、成長スパートを迎えるときに、通常よりも多くのエネルギーを必要とします。運動する量に対し食べ物の摂取量が少ないと、疲労骨折や貧血、パフォーマンス低下などのリスクが増加します。これらの問題を防ぐためにも、補食を上手に取り入れることが不可欠です。補食は「食べなくてはいけないもの」と考えてもらった方がいいと思います。
内臓を疲れさせない食事を選んで
体づくりのために、無理矢理たくさんの食事をとることは推奨しません。また、消化が遅い脂っこい食品や、体に負担をかけるような食品は避けるべきです。内臓は食べ物を消化する適切なキャパシティがあります。食べすぎてしまうと内臓が消化不良を起こし、きちんと栄養が吸収されません。また、大量に食べると消化ができない分、 便の状態が悪くなり、トイレに行きすぎて出血してしまう場合もあります。微量の出血でも貧血になる可能性もあります。つまり、たくさん食べればいいという考えは捨てましょう。だからこそ、1回の食事量を子どもの年齢や体格にあったものに合わせ、3食で食べきれないぶんを補食で補うことが大切なのです。
補食の目的とタイミング、選び方
スポーツキッズが補食を摂取する目的は大きく分けて2つあります。まずは成長を支えるためのエネルギー供給、そして運動後の回復をサポートするリカバリーです。運動前、運動後の適切なタイミングで補食を摂取することで、体が必要とするエネルギーを効率的に補い、パフォーマンス向上や怪我予防に繋がります。

運動前は、目安として、1〜2時間前に糖質を含んだ軽食を摂取することが望ましいです。エネルギーをしっかり補給できる食品を選びましょう。おにぎりや果汁100%のジュース、果物、エネルギーゼリーが良い選択肢です。

運動後は、なるべく早く消化吸収されるものを選んでください。おすすめは、コンビニエンスストアでも手軽に買えるプロテインドリンクです。体への吸収スピードが早く、1本飲めばタンパク質もしっかり取れます。加えて、バナナやおにぎりをセットにしてもいいでしょう。タイミングは運動後30分以内が理想的です。なぜなら、成長ホルモンが活発に分泌され、筋肉の修復が促進されます。このタイミングで補食を摂ることが、成長を支えるためにも重要なのです。
補食で子どものスポーツ環境と成長をサポート
補食は、成長を支え、競技のパフォーマンスを高めてくれる鍵となります。ぜひ、頑張る子どもたちのために補食を習慣にしてみてください。もちろん無理せず、できる範囲でかまいません。将来プロアスリートになるならないに限らず、子どもが大好きな運動を続けるためにも、今回お話した内容が参考になれば嬉しいです。
上原寛恵 公認スポーツ栄養士・管理栄養士
広島県北広島町出身。管理栄養士として病院に勤めるなか、スポーツと食の関係性に気づき2014年に公認スポーツ栄養士の資格を取得。広島県内の陸上長距離選手、実業団卓球、実業団ラグビー、ソフトテニスなど、幅広いスポーツ選手のコンディション管理から試合前後の栄養アドバイスを行う。現在は倉敷を拠点に、福山シティFC他、実業団チーム全体を栄養面で全面サポート。小学校、中学校、高校での栄養セミナーも多数開催。アスリートやスポーツチームのパフォーマンスを食で支えながら、スポーツ栄養の大切さを広めている。
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