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2013年11月07日(木)
「おなかが痛い…」を受け止めて
学年が上がるにしたがって有病率が増加傾向にある「過敏性大腸炎」。主な原因はストレスと考えられています。過敏性大腸炎が子どもたちに与える影響、家庭でできることなどを、内科医の窪弘之先生に教えていただきました。
(1)子どもの過敏性大腸炎とは?
 過敏性大腸炎(正式には過敏性腸症候群)とは、疾患の概念としては子どもと大人に違いはありません。大腸を中心とした腸管の機能的な異常により、腹痛や腹部不快感(痛みとはいえない不快な気分)が、排便の回数や便の形状の異常とともに起こり、排便によって改善する慢性的な腸の疾患のことをいいます。
 「機能的な異常」というのは、種々の検査で明らかな異常が見つからなかったことを意味します。腸の場合だと、炎症や感染症、腫瘍などの明らかな疾患(器質的な異常)はなく、腸の働きに問題があるということになります。
 過敏性大腸炎の診断には国際的に用いられている診断基準(ローマ分類)や、日本人向けにつくられたもの(BMW基準)を使いますが、基本的には大きな違いはありません。便の形状と排便パターンにより、(1)下痢型、(2)便秘型、(3)下痢・便秘混合型、(4)その他の4型に分類されます(下表参照)。
 過敏性大腸炎はストレスを起因とする現代病といえる疾患。思春期年齢以降ではおよそ5~10人に1人の割合でみられるともいわれています。診断基準の改定もあり、小~中学生に限定した経年的なデータはありませんが、高校生まで含めた断片的な統計でも以前と比較するとその有病率は確実に増加。学年が上がるに従って増加する傾向にあります。
 成人のデータでは男性よりも女性に多く認められ、男性では下痢型、女性では便秘型や混合型が多いようです。
(2)なぜ子どもの過敏性大腸炎が気になるの?
 過敏性大腸炎は、ストレスに対する脳の異常な過敏性が腸管に作用して起きる疾患です。ストレスを感じたりためやすい性格(真面目で完ぺき主義、きちょうめんで神経質、一人で抱え込みやすいなど)の子どもに、結果的には多く見られるようです。
 過敏性大腸炎による症状そのものが致死的となることはありませんが、症状の増悪によって日常生活や学校生活に支障をきたすようになったり、そのことを周囲に理解してもらえないなど、子どもにとっての精神的な苦痛は決して軽微なものではありません。不登校や抑うつ、引きこもりなどの心の問題の原因になることもあります。
 また、過敏性大腸炎が心身症や軽度発達障害(ADHD、学習障害、アスペルガー症候群など)、適応障害(不登校、引きこもりなど)の子どもに高頻度に併発することも知られています。
(3)原因、基本となる症状、治療法 は?
 過敏性大腸炎の原因はまだ確定されてはいませんが、最近では「脳-腸相関」という概念で説明されることが多くなっています(図)。ストレスなどの心理的な負荷に過剰反応した脳が、神経を介して腸の運動異常(下痢や便秘)や知覚過敏(腹痛や腹部不快感を感じやすくなる)を引き起こすというもの。セロトニンという物質が関与しているといわれています。
 過敏性大腸炎の自覚症状は、まずはおなかの症状の存在です。排便(回数や便の形状の変化)と関係する腹痛や腹部不快感を慢性的に認めます。痛みの部位はさまざまですが、排便によって軽快するのが特徴です。痛み以外では嘔気(おうけ)や嘔吐(おうと)、食欲不振、腹部膨満感などが見られることもあります。また、症状が長期間にわたっている場合には、不安、抑うつ感、焦燥感、緊張感、不眠などの精神症状を認めることもあります。
 過敏性大腸炎の治療法は、大きく生活指導、食事療法、薬物療法、心理療法があります。生活指導と食事療法については次の項で述べますが、最も大切なのは完治を目指すのではなく、大きな支障がなく日常生活を送ることができる70~80点を目標に根気よく続けることです。治療することがストレスになっては元も子もありません。
 薬物療法は、おなかに直接作用する薬を主に使用しますが、抗不安薬や抗うつ薬などの向精神薬を用いることもあります。「すごくおなかに効き目があるよ」と大人が言い聞かせると、薬の効果が増す場合もあります。最近では、セロトニンに作用する新しい薬も使われるようになりましたが、残念ながら小児への使用はまだ認められていません。
 心理療法には認知行動療法、遊戯療法、催眠療法などがありますが、小児精神科や心身医療の専門医にお任せすべきでしょう。
(4)家庭や学校でできること
 女性(お母さん方)では体質的に便秘という方は珍しくなく、普通に生活も送っている方が多いと思います。お子さんが下痢や便秘を訴えたとしても、重大なこととしてとらえられない親御さんも多いのではないでしょうか。その子が感じている腹痛や腹部不快感は、気のせいではなく実際に存在しています。日常生活にも、少なからず支障をきたしていることを理解してあげてください。
 小学校高学年から中学生になると、学校での排便を恥ずかしさから我慢してしまう子どもが少なくないようです。この傾向は特に男児に見られますが、我慢することでさらに腹痛が悪化し、学校生活に支障をきたす場合もあります。学校の担任や養護の先生と、かかりつけ医から得たお子さんの情報や疾患に対する知識を共有してほしいと思います。トイレや保健室に行きやすい環境を整えることが重要です。
 生活指導に関してはすべての子どもにいえることですが、早寝早起きや三食きちんと食べるなど、規則正しい生活を心がけることです。多くの子どもは登校前(午前中)に症状が出やすいので、朝食の後に排便する習慣をつけることも大切。何事も程ほどに、リラックスできる趣味や運動を楽しむのもよいでしょう。
 食事療法の基本は、バランスの良い食事を腹八分目で。過敏性大腸炎は精神的な影響が強く、過度な制限は逆効果になることも考えられるからです。ただし、腹痛や下痢が、カフェインや高脂肪食、乳製品、排ガスを多くする野菜(イモ類、豆類、根菜類、果物)、甘味料にソルビトールを含む菓子の摂取後に起こりやすい子どもでは、それらの摂取を制限することも有用です。便秘型の子どもでは、食物繊維を多く(年齢+5g)摂取することもすすめられています。
 また、簡単でよいですから日記をつけてみてください。症状(腹痛の有無、便の回数や形状)、服薬の有無、食事時間や内容などを経時的に把握することで、疾患のセルフコントロールが可能になるでしょう。そうすることで、薬物療法や新しく追加された治療の効果判定が容易になります。
 どのような疾患でもそうですが、気軽に何でも相談できて信頼のおける「かかりつけ医」を持つことが大切。少しでも当てはまる症状や気になることがあれば、早めに医療機関へ。
 夜寝ている時でも腹痛が起きる、右の下腹部が痛む(虫垂炎の可能性)、熱がある、便に血液が混ざる、体重が減少しているなどの症状があれば、過敏性大腸炎以外の疾患の可能性も考えられますので、かかりつけ医に相談を。通常の治療で症状がなかなかよくならない場合や精神的な症状が強い場合は、かかりつけ医と連携をとりながら小児精神医療の専門医を受診された方がよいでしょう。

くぼ医院 窪 弘之さん

くぼ医院院長。診療科目は内科、消化器内科、リハビリテーション科。広島市安佐北区医師会理事。

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