呉市が舞台の小説「戦争と五人の女」 戦後を生き抜いた母親 自分のルーツに向き合った土門蘭の覚悟
9/7(月) 19:19
この夏、戦後の呉市を舞台にした小説が全国の書店で発売されました。地元出身の著者が故郷と自分自身のルーツに揺れ動きながら紡ぎだした言葉に迫ります。
この夏、全国で発売され広島市内の書店にも並んだ小説。
タイトルは「戦争と五人の女」。
終戦から8年が経った1953年の呉市が舞台です。
この小説を書いたのが呉市出身の文筆家・土門蘭さん。
タイトルは「戦争と五人の女」。
終戦から8年が経った1953年の呉市が舞台です。
この小説を書いたのが呉市出身の文筆家・土門蘭さん。
【土門蘭さん】
「特にやはり呉市は戦争の匂いがまだ色濃く残っていますし戦争と一緒に大きくなってきて戦争と一緒に傷ついた街。自分自身は戦争を体験していないけれども、自分だからこそ書けることがあるんじゃないかと思って勇気を持って書き始めたっていう感じですね」
「特にやはり呉市は戦争の匂いがまだ色濃く残っていますし戦争と一緒に大きくなってきて戦争と一緒に傷ついた街。自分自身は戦争を体験していないけれども、自分だからこそ書けることがあるんじゃないかと思って勇気を持って書き始めたっていう感じですね」
41歳。現在、京都で暮らしています。
小説だけでなく短歌、エッセイさらにはインタビューなど、「書く」「話す」「聞く」とそれぞれの分野に活躍の場を広げる土門さん。
今回の小説「戦争と五人の女」は今までの作品の中でも特に自分自身を追い込み、見つめ直した作品でした。
【土門蘭さん】
「物を書くときに自分がいつも思っているのは本当であること。なぜ本当のことじゃないといけないかというと強いから。強い文章を書きたいから。自分自身が生まれてきた場所、そして育ってきた場所という自分のルーツに触れることで、その強さが宿るのではないか」
小説だけでなく短歌、エッセイさらにはインタビューなど、「書く」「話す」「聞く」とそれぞれの分野に活躍の場を広げる土門さん。
今回の小説「戦争と五人の女」は今までの作品の中でも特に自分自身を追い込み、見つめ直した作品でした。
【土門蘭さん】
「物を書くときに自分がいつも思っているのは本当であること。なぜ本当のことじゃないといけないかというと強いから。強い文章を書きたいから。自分自身が生まれてきた場所、そして育ってきた場所という自分のルーツに触れることで、その強さが宿るのではないか」
物語の出発点に選んだのは東洋一の軍港として栄えた呉に戦前、実在した「遊郭」。
現在の、呉市役所の東側、朝日町にその「遊郭」はありました。
空襲によって市街地の大部分は焼かれ今は、戦前の面影はほとんど、ありません。
現在の、呉市役所の東側、朝日町にその「遊郭」はありました。
空襲によって市街地の大部分は焼かれ今は、戦前の面影はほとんど、ありません。
高校卒業までの18年間、呉で生まれ育った土門さん。
実家は朝日町からほど近い場所にありました。
【土門蘭さん】
「子どもの頃からここら辺ですごく遊んだりとか歩き回ったりしていたので、すごく懐かしい気持ちですね、今。図書館で資料を集めたあとにここら辺を歩いてみてこのあたりに遊郭があったのかなとか…」
過去の資料と自分自身の記憶を照らし合わせ実際に歩きながら、物語を紡いでいきました。
実家は朝日町からほど近い場所にありました。
【土門蘭さん】
「子どもの頃からここら辺ですごく遊んだりとか歩き回ったりしていたので、すごく懐かしい気持ちですね、今。図書館で資料を集めたあとにここら辺を歩いてみてこのあたりに遊郭があったのかなとか…」
過去の資料と自分自身の記憶を照らし合わせ実際に歩きながら、物語を紡いでいきました。
【土門蘭さん】
「すごく懐かしいですね。よくあそこらへんで子どものころ遊んでいてあの木もよく覚えています。子どもの頃はですね家の中でのコミュニケーションがなかなか取れない家族の中で育ったので自分の言いたいこととか、分かってほしいことをなかなか伝えられない。そのときからやっぱり一人で本を読んだりとか文章を書くっていうことがすごく好きな子どもでしたね」
小説のタイトルにもなった「戦争」と「女」をテーマにしたのは、自分自身の「ルーツ」と重なる部分があるからです。
「すごく懐かしいですね。よくあそこらへんで子どものころ遊んでいてあの木もよく覚えています。子どもの頃はですね家の中でのコミュニケーションがなかなか取れない家族の中で育ったので自分の言いたいこととか、分かってほしいことをなかなか伝えられない。そのときからやっぱり一人で本を読んだりとか文章を書くっていうことがすごく好きな子どもでしたね」
小説のタイトルにもなった「戦争」と「女」をテーマにしたのは、自分自身の「ルーツ」と重なる部分があるからです。
【土門蘭さん】
「私の母は韓国人で父は日本人なんですけど、私はいわゆる日韓のミックスと呼ばれる存在なんですね。(母は)スナックを自分で店をやりながら私を育ててくれていたので母は私の目から見て、強さと弱さを両方兼ね備えている存在。泣いている姿も見ましたしやっぱり日本で暮らすことの難しさっていうものも人一倍感じていたはずなので。だけど夜になると化粧をしてお店に立って笑いながら接客をしてお金を稼いで私を育てる…」
小説には年齢も生まれ育った環境も異なる5人の女性が登場します。
戦後も遊郭が形を変え身体を売る女性たちがいたという史実を背景にしたフィクションで、貧困や差別、暴力にさらされながら登場人物がそれぞれの方法で「戦後」を生き抜く物語です。
「私の母は韓国人で父は日本人なんですけど、私はいわゆる日韓のミックスと呼ばれる存在なんですね。(母は)スナックを自分で店をやりながら私を育ててくれていたので母は私の目から見て、強さと弱さを両方兼ね備えている存在。泣いている姿も見ましたしやっぱり日本で暮らすことの難しさっていうものも人一倍感じていたはずなので。だけど夜になると化粧をしてお店に立って笑いながら接客をしてお金を稼いで私を育てる…」
小説には年齢も生まれ育った環境も異なる5人の女性が登場します。
戦後も遊郭が形を変え身体を売る女性たちがいたという史実を背景にしたフィクションで、貧困や差別、暴力にさらされながら登場人物がそれぞれの方法で「戦後」を生き抜く物語です。
土門さんの母親はまだ朝鮮戦争が続いていた最中、韓国で生まれ、言葉の壁がありながら少しでも豊かな暮らしを求めて呉にやってきました。
シングルマザーとして自分を育て上げた母親について土門さんは。
【土門蘭さん】
「母は戦争に翻弄されながら戦争を引きずりながら日本にやってきてそこでもまだ差別という形で戦争を引きずったまま生きてきた人だなっていうふうに自分の目からは映っています。自分自身が呉と母というものを書こうとしたときに実は母自身の中に戦争という要素がすごくあったんだと」
人では抗えない時代や運命の中で何を信じ、生きていけばいいのか。
作者として故郷・呉と母親の存在に向き合った執筆の時間は目を背けてきた自分自身のルーツを受け入れるための時間でもありました。
シングルマザーとして自分を育て上げた母親について土門さんは。
【土門蘭さん】
「母は戦争に翻弄されながら戦争を引きずりながら日本にやってきてそこでもまだ差別という形で戦争を引きずったまま生きてきた人だなっていうふうに自分の目からは映っています。自分自身が呉と母というものを書こうとしたときに実は母自身の中に戦争という要素がすごくあったんだと」
人では抗えない時代や運命の中で何を信じ、生きていけばいいのか。
作者として故郷・呉と母親の存在に向き合った執筆の時間は目を背けてきた自分自身のルーツを受け入れるための時間でもありました。
【土門蘭さん】
「やっぱりどこにも属せない感覚がありました。ずっと普通になりたいな、ずっと普通の日本人になりたいなっていう気持ちが自分の中にすごくあって。私自身も母に対してずっとどこか反発している気持ちとか遠くに行きたいっていう気持ちがすごくあったんですけど、こうやって小説に書くことで母を改めてちゃんと愛しているような感じですし、母からもらったものってすごく大きいんだなっていうことを改めて感じる機会になったので、小説が私たち母と娘の関係性をすごく意味のあるものにしてくれたなと思います」
「やっぱりどこにも属せない感覚がありました。ずっと普通になりたいな、ずっと普通の日本人になりたいなっていう気持ちが自分の中にすごくあって。私自身も母に対してずっとどこか反発している気持ちとか遠くに行きたいっていう気持ちがすごくあったんですけど、こうやって小説に書くことで母を改めてちゃんと愛しているような感じですし、母からもらったものってすごく大きいんだなっていうことを改めて感じる機会になったので、小説が私たち母と娘の関係性をすごく意味のあるものにしてくれたなと思います」
今年の春、土門さんはもう一冊、まったくジャンルの異なる本を出版しています。
「書くこと」全般についての考えをまとめた「ほんとうのことを書く練習」実は今、全国で異例のヒットとなっています。
【土門蘭さん】
「自分の代弁者としてのAIという使い方もされてきてどんどんどんどん自分が本当にどう思っているかを書けなくなってる時代だなというふうに思います。だからこそそれにやっぱり逆行するように、やっぱり本当のことが書きたいんだよなとか、本当のことが読みたいんだよなっていう人間らしさみたいなものが浮き彫りになっている時代でもあると思っていて。その皆さんの潜在的な気持ちと私のその本のタイトルがすごく一致したのかなというふうに思っています」
様々なジャンルの「文筆家」として活躍する土門さん。
譲れないのは丁寧に、そして誠実に「ほんとうのこと」に向き合う姿勢です。
「書くこと」全般についての考えをまとめた「ほんとうのことを書く練習」実は今、全国で異例のヒットとなっています。
【土門蘭さん】
「自分の代弁者としてのAIという使い方もされてきてどんどんどんどん自分が本当にどう思っているかを書けなくなってる時代だなというふうに思います。だからこそそれにやっぱり逆行するように、やっぱり本当のことが書きたいんだよなとか、本当のことが読みたいんだよなっていう人間らしさみたいなものが浮き彫りになっている時代でもあると思っていて。その皆さんの潜在的な気持ちと私のその本のタイトルがすごく一致したのかなというふうに思っています」
様々なジャンルの「文筆家」として活躍する土門さん。
譲れないのは丁寧に、そして誠実に「ほんとうのこと」に向き合う姿勢です。
【土門蘭さん】
「対話をする中で自分と自分、自分と他者の中で本当のことを探していくみたいな行為が私にとっての『書く』ことなのかなあというふうに思います。せっかくこの世の中に肉体と心を持って生まれてきたんだったら、それを使って大きな問いに向かって筆を走らせてみたいっていうふうな欲はなぜかずっとあって、これからもまたチャレンジしていきたいなというふうには思っています」
故郷・呉と、母親の存在に真正面から向き合えるようになったからこそ、「文筆家」として筆を執る意味を改めて見つめなおします。
【土門蘭さん】
「読んだあとに自分自身の声にちょっと耳を傾けていただける機会になったらすごくうれしいなと思っていて、世の中の大きな声にかき消されそうになっている自分自身の小さな声を拾い上げて、そこから物語の種みたいなものを見つけていただけたらすごくうれしいなと思っています」
「対話をする中で自分と自分、自分と他者の中で本当のことを探していくみたいな行為が私にとっての『書く』ことなのかなあというふうに思います。せっかくこの世の中に肉体と心を持って生まれてきたんだったら、それを使って大きな問いに向かって筆を走らせてみたいっていうふうな欲はなぜかずっとあって、これからもまたチャレンジしていきたいなというふうには思っています」
故郷・呉と、母親の存在に真正面から向き合えるようになったからこそ、「文筆家」として筆を執る意味を改めて見つめなおします。
【土門蘭さん】
「読んだあとに自分自身の声にちょっと耳を傾けていただける機会になったらすごくうれしいなと思っていて、世の中の大きな声にかき消されそうになっている自分自身の小さな声を拾い上げて、そこから物語の種みたいなものを見つけていただけたらすごくうれしいなと思っています」
