【後編】部活動の未来 複数校合同での活動を検討する自治体が多いなか、今まで通りの方針!広島・坂町の例

7/14(火) 19:00

■後編

前編に引き続き、今回は『部活動の地域展開』についてお伝えしていますが、県内自治体の状況について検討段階・展開時期を決めて動いている自治体が大半である中で、唯一、坂町のみが地域展開「しない」方針を決めています。
一体なぜしないのか?その理由を取材しました。

VTR

坂町にあるスポーツ施設のグラウンドで練習に励むのは坂中学校の陸上部。
地域展開しない方針を決めた坂町が選んだのは、ある『カタチ』です。

「ラスト1周、ラスト1周頑張れ!」
グラウンドで声をかけながら指導にあたるのは学校の教員と…。

「35、36、37、落ちるな、落ちるな!」
外部からの部活動指導員です。

坂町は、1995年度から外部指導員の導入をスタート。
現在は、運動部と文化部を合わせた6つの部活動で、教員と外部指導者が連携し、部活動を支えています。

【坂中学校の教員 大掛真実さん】
「学校の仕事もあるし、あとで30分後に行きますと、そういった形で連携を進め、土曜日など特別な対応があった時にはコーチに任せたりしながら、お互いに協力しながらできているところが心強い」

指導員が休日だけでなく平日も専門的な指導を行い、教員がサポートに回る事で、教員の負担を減らすことができるといいます。

【部活動指導員 貞永隆佑さん】
「学校の教員の先生がついてくれることで、学校生活での状況を把握しつつ、技術の方でアドバイスができる。とても良い両輪でやっていると思う」

また、教員が休日も通して部活動に関わることで、生徒たちの成長にもつながるといいます。

【坂中学校の教員 大掛真実さん】
「技術だけの指導ではない。この子たちが生徒が社会に出て、たくましく生きていけるようにそこを目標としておりますので、部活動は学校生活と切って切り離せないと思います」

生徒たちは部活動の在り方についてはどう思っているでしょうか?

【生徒】
「いつも学校生活で一緒の人と切磋琢磨しあいながらできるのでいいと思います」

地域展開しない方針に舵を切った吉田隆行町長は、今後も地域展開する考えはないといいます。

【坂町 吉田隆行 町長】
「坂町は地域展開は現時点では考えていない。中学校の部活動は学校教育の一環として、これからも取り組んでいく方針を決めている」

そのうえで、指導員の人件費や活動場所への送迎など、財政面でも支援する考えです。

【坂町 吉田隆行 町長】
「地域展開をすることになれば行政として支援ができにくい部分も出てくる。子供や保護者にも大変な負担を余儀なくせざるを得ない状況も生まれるかもしれない。子供第一!環境を大人たちがスクラムを組んで作っていくということが、将来のこの坂町、広島県、そしてこの国の発展につながってくるんじゃないかなというふうな思いをしております」

スタジオ

齊藤さん、改めてこの地域展開をしないという方針、これはこれでひとつの形かなと思いますが、やはりこの地域の特色というのを捉える必要がありそうですね。

【広島大学 人間社会科学研究科 齊藤一彦 教授】
「この坂町の例は全国的にもとても珍しい例ですね。坂町役場の職員の方が、例えば地域に行って教えたりということもされててですね、今、地域展開はしないというふうに出てるんですが、これもですね、学校の教員以外の方が、子供たちを指導しているという意味においては、地域展開の1つの形態だとも言えるんじゃないかなというふうに思ってまして、やはり地域に応じた地域の実情に合ったやり方があるんだというふうに思います」

さて、ここまで自治体の取り組みなど紹介してきましたが、改めて、自治体が抱える課題について整理します。

部活動の受け皿となる「地域クラブ」どうする?指導者の確保は?保護者や生徒の負担は?主にはこういった課題が挙げられます。

自治体も悩んでいて取材していると思わずこんなホンネも聞かれました。指導者が確保できない。持続可能な運営できる?中山間地と都市部では事情が違う。送迎はどうすればいいの?山内さん、「正直なところ困り果てている」という切実な声もあるようです。

【野球解説者 山内泰幸さん】
「そうですね。前例もないし難しいと思いますし、やっぱり月謝の部分で、部活動を地域に頼むとちょっと違いがあると思いますよね。お金の部分も。」

こうした中、県も対策を強化する考えです。
「部活動改革推進計画」を策定し、指導者の確保や地域との連携強化を図る方針を打ち出しました。

VTR

県の部活動改革推進室の好満室長は、少子化と教員不足が部活動を維持することは困難だと指摘します。

【県部活動改革推進室 好満修 室長】
「学校単位での活動の実施が困難で、教員も必ずしも専門性を有していないため、負担は増大。現状の部活動を維持することは、こんな状況になりつつある」

地域展開によって教員の負担は軽減され、生徒にとってもメリットもあるといいます。

【県部活動改革推進室 好満修 室長】
「活動の選択肢が増え、専門的な指導が受けられる。他校の生徒や地域スポーツ文化芸術活動を支えてくれる人々と豊かな交流ができる」

一方で、自治体が抱える指導者の確保や活動にかかる費用負担など財政支援についてもサポートしていく考えです。

【県部活動改革推進室 好満修 室長】
「(今年の2月から)指導者リストの登録募集を開始し、さまざまな団体・事業者への働きかけを行っております。必要な情報共有や関係団体との調整を行い、積極的に関わってまいりたいと考えております」

スタジオ

県も具体的に動き出した訳ですが、指導員に係る経費補助、指導者リストの提供、地域クラブ活動の経費補助、こういった支援をやっていくと、齋藤先生、これで自治体の動きも前進するのでしょうか?

【広島大学 人間社会科学研究科 齊藤一彦 教授】
「はい、今後ますます加速していくと思いますし、これからが本当のスタートかなというふうに思っています」

一番大切なのは、子供たちがスポーツや文化活動に触れる機会を減らさないことですね。
山内さんそこは守ってほしいですよね?

【野球解説者 山内泰幸さん】
「そうですね。やりたいものの、選択肢は狭めないようにやってもらいたいですし、広島ってスポーツ盛んなところですから、ベストな形に探ってほしいですね」

齋藤先生、改めてこの『地域展開』が目指すところは?

【広島大学 人間社会科学研究科 齊藤一彦 教授】
「地域展開の目的は、子供たちの放課後の活動をなくすことではなくて、残すことだというふうに思っています。そのためにどうやったらいいのかという検討が今まさに必要なのかなと思います。今日のお話は、どちらかというと運動部のことがメインだったかなと思いますけども、同様に文化部の問題もあります。例えば、吹奏楽部なんかでいうと、もし学校から地域に展開していくと、楽器の管理はどうするのかとか、そういった課題もたくさんあるんではないかなと思います。部活動の地域展開を通して、生徒の多様なニーズに応えられるような、こういった活動の機会を保証することも大事ですし、この地域展開をきっかけにして、地域そのものが、活性化していくことがとても重要なんじゃないかなというふうに思っています」

齊藤先生、改めてこうした地域展開っていうところ、最初にも触れましたけれども、やっぱり学校だったりだとか、生徒だったりだとか、この問題かなというふうに思いがちなんですが、この地域の教育力、生涯学習の充実というところでいうと、地域にもたらすメリットっていうところも、やはりこれはあるんでしょうか。

【広島大学 人間社会科学研究科 齊藤一彦 教授】
「この機会に、子供たちだけじゃなくて市民が、スポーツや文化芸術活動に触れていく機会を増やすこともとても大事ですし、これから、学校だけで部活動を見るのではなくて、地域全体で、これを支えていく仕組みが必要かなというふうに考えています」

今回は広島の部活動の未来についてお伝えしました。