県警航空隊一筋44年 隊長の「ラストフライト」 日航機事故、能登半島地震…数々の現場を飛ぶ 広島

3/30(月) 21:12

上空からの災害救助や犯人追跡などにあたる広島県警の航空隊。
その航空隊、一筋44年まさに空にささげた隊長が、今年度で現役を退きます。
昭和・平成・令和と、広島の治安を空から守り続けた隊長の、ラストフライトに密着です。

【広島県警航空隊・河戸隆隊長(65)】
「ラストフライトを迎えるにあたって本当にやめるんだなという気持ちでいっぱいですね」

警察航空隊人生、44年。
隊長の、”ラストフライト”です。

【能登半島地震救助活動ヘリ(県警提供映像)】
「そこ左下1人手を振っている2人いますよ」

能登半島地震で、孤立した集落にヘリで降り立ち被災者を救助する、広島県警の航空隊。
大規模災害が発生した時には、県内はもちろん全国各地に出動し人命救助や情報収集にあたります。

多くの要人が詰めかける8月6日の平和式典でテロの警戒にあたるなど、警察の”空の目”として、さまざまな任務にあたっています。

「航空業務安全7則 1.心身を常に健康に保て 2.飛行規律・整備基準を守れ…」

航空隊隊長河戸隆さん65歳。
60歳の定年を迎えた後、5年間の再任用で勤務を続けていましたが、今年度で退職です。
この日、”ラストフライト”の日を迎えました。

航空隊は、事件や事故、災害などの出動がなくてもほぼ毎日のように飛行し、上空からのパトロールを欠かしません。

【河戸隊長】
「いまちいと(雨が)降りよるには降りよるんですがね、雲も高いし視界も十分取れとるんで大丈夫。きょうが最後になります。人生の3分の2はここで勤務しておりましたんで」
Q:今はまだ寂しさは?
「まだですね。まだしっかり隊長職がありますんでですね。まだ全うしなければなりませんので。それじゃあ私も準備します。では行ってまいります」

(河戸さん隊員へのあいさつ)
「じゃあお願いします」

河戸さんは、操縦を担当する後輩隊員の横に座り、「副操縦士」として、最後のパトロールに臨みます。

【航空隊歴22年・夛久美宏樹隊員】
「ずっと一緒に勤務してきて、ついにこの日が来たのかと。なんとも感慨深い。とても頼もしいというか命を預けられる唯一の存在だと思います」

【管制との会話】
管制:もっと天気がよければよかったですけどね、隊長
河戸:いやもうだめかなと思いよったけえね
管制:そういう面で言えばまだ
河戸:よしとせにゃ

”空への憧れ”は物心ついた時から、抱いていました。

【河戸隊長】
「父が裏庭でエンジン付きの飛行機のエンジンを回しているのを初めて見ましてですね。それからずっと飛行機が好きで「いずれは操縦士になりたいな」というのが夢だったんですね。外国のほうでライセンスを取ったんですが、日本に帰って警察にもヘリがある。父も公務員だったんで公務員としてヘリの操縦をやってみようかなということで」

1983年の入隊以来、航空隊一筋44年。
途方もない時間を空の上で過ごし、様々な現場を見つめてきました。
その中で、特に忘れられない出動があります。

【河戸隊長】
「入って2年目ですか。昭和60年に御巣鷹山で発生しました日航機の墜落事故。これから航空人生を始める私にとって衝撃的な事件ではあります」

広島を含めた一部の地域の警察にしかヘリが配備されていなかった時代。
全国のヘリが総動員され、遺品の回収などにあたったといいます。

【河戸隊長】
「現場に向かう途中、日航機が飛んだであろう経路を飛んで行ったんですが、急峻な山々でここまで(よく)操縦してこられたなという感じで、何とか機長さんは空港に戻る、今載せている乗客の命を守る、いわゆる誇りと使命感がそこにあったんだなと思っていますね」

「県民の命を守る」という決意を強くした、航空隊員としての原点ともいえる事故だったといいます。

そして、河戸さんにとって初めての県外への災害派遣となった、阪神・淡路大震災。
この現場で味わったのは、”無力感”でした。

【河戸隊長】
「町並みで火災の現場なんでですね。なかなか救助もできないじゃあ、なにができるかとなると、医療品とか物資の搬送そういったことがメインになりましたんで。火が燃え盛っている中でただそういうことしかできなかったというのが残念な思いがあります」

この震災を教訓に、警察庁は、大規模災害が発生した際、県境を越えて救助活動を行う「広域緊急援助隊」を、全国の都道府県警に設置。
航空隊は援助隊の一員として、被災者救助に加わるようになりました。

現場での活動で教訓を得て、活動の幅を広げていく―その航空隊の歩みを、河戸さんは最前線で見てきました。

【ラストフライトの河戸隊長】
「平和公園まで戻って着陸しようか」
(今週末にはサクラ咲いてますかね?)
「そうじゃろうね」

警察航空隊人生の集大成。
およそ1時間のラストフライトが…終わりました。

【管制から激励】
「きょう本当にお疲れさまでした。本当にお疲れさまでした」

ラストフライトを終えた河戸さんを待っていたのは
航空隊の隊員や機動隊員、警備部の警察官など、これまで任務を共にしたたくさんの仲間たちです。

【河戸隊長あいさつ】
「本日をもちまして44年と5カ月の警察航空人生にピリオドを打つことになりました。私人生の3分の2、この航空隊で勤務させていただきました。航空隊のみなさまは引き続き航空隊の歴史を引き継いでいってもらいたいと思っておりますので、本日は本当にありがとうございました」

【河戸隊長】
「好きな仕事じゃないと長く続けていけないんでですね。(航空隊の)皆さん航空機のことが好きなんで、そういったモチベーションはしっかり持ってもらってこれから起こりうるであろう各種災害に柔軟に対応してもらいたい」

空から県民の命を守るー
44年もの間、大きな事故なくその重責を全うしました。
昭和・平成、そして令和と、3つの時代の空を飛んだ河戸さん。
最後も高々と空中を舞い、航空隊人生に幕を下ろしました。