障がいのある子供たちの記念写真を残したい 「親の願いを叶える」カメラマンに密着 広島

11/27(木) 20:00

特集、シリーズ「彷徨う居場所」の第11弾です。
障がいのある子供たちの記念写真を写真スタジオで撮ることが難しいと言われています。その子供たちを専門に撮影するカメラマンに密着しました。

今月15日は子供の健康を祝う七五三の日。
家族は子供が成長する姿を楽しみに写真に収めます。
しかし、写真スタジオで撮影することを諦めなければいけない家族がいます。

【koco photo 榎 春菜さん(40)】
「おはようございます。よろしくお願いします。荷物を運んでいきます」

自宅に出向いて七五三の撮影を行うカメラマンの榎 春菜さん。
訪れた家に即席の写真スタジオを組み立てます。

【夏井美咲さん】
「起きて、これクッションじゃないよ。ねえね」

長女の夏井梨瑚ちゃん、3歳です。

【夏井美咲さん】
「もうちょっとしたら起きようね」

梨瑚ちゃんは生まれてすぐ、染色体の異常による、4p欠失症候群と診断されました。
5万人に1人の確率で発症する難病です。

【夏井美咲さん】
「病気が発覚したときに先生にいつまで生きられるか分からない。笑うこともできませんと断言された」

榎さんは身体障がいのある子供の記念写真を専門に撮影し、着物の着付けも行います。

【夏井美咲さん】
「かわいいんですけど、かわいいね」

母の美咲さんが自宅で七五三の撮影を頼んだのには理由があります。

【夏井美咲さん】
「座位がとれない。寝たきりなので、着物を着せるのが大変、普通のスタジオで撮るのはハードルが高い。スタジオに行って発作が起こったり心配があります」

梨瑚ちゃんはチューブを通して鼻から胃にミルクを送り、栄養をとっています。

【榎 春菜さん】
「チューブを生かして、何かかわいくできないかな。水引で花を作ってみた。その子たちにしかできない飾りを何かできないかなと思って」

障がいのある子供のために自分には何ができるのか?

榎さんが障がいのある子供たちを撮影し始めたきっかけ。障がい児施設で働いていたとき、写真スタジオで子供が撮影を断られたと耳にしたことでした。

【榎 春菜さん】
「医療ケアが必要な子供だと触ることができないから撮ることができない。そういう子たちに合う衣装がないと言われたり、撮影の時間が限られているので、発作やパニックを起こしたときに対応できる時間がなくなってしまうから撮れないと聞いたことがあります。なんで撮れないんだろう。受け入れてもらえないんだろう。という疑問が残っていた」

障がいがあっても、なくても…子供たちはかわいい。
目に触れて、知ってもらうことが周囲の理解を深める一番の近道だと考えています。

撮りためた写真を見てもらうため展示会を開いてきました

【榎 春菜さん】
「施設で出かけていたとき、周りの人からかわいそうな目で見られたり、見てはいけないオーラを感じて、なんで同じ人間なのにそんな目で見られないといけないんだろうという疑問と悔しさがあった。障がいがあってもなくても子供たちはかわいいことを伝えたい。目にする機会を作るのが一番、写真展をすることにしました」

見て欲しいのは、その…表情です。

【訪れた人】
「いい表情をしています。見ているだけで楽しい」
「普段そういう方がいるのは分かるけど、気に留めていなかった。こういう表情もあるんだ。避けていたかもしれない」

理解するためにまずは知ってもらいたい。
榎さんが望んでいるのはほんのわずかな1歩です。

【榎 春菜さん】
「社会で過ごす中で、まだ不平等な場面が多いと感じている。写真を通して障がいに対する理解が伝われば」

≪カシャ・カシャ≫

生まれたとき、医者に笑うことはできないと断言された梨瑚ちゃん。

しかし、その時です!

(笑顔をみせる)

【夏井美咲さん】
「すごいじゃん。かわいい」
【榎 春菜さん】
「急にモデルさんじゃん」
【夏井美咲さん】
「カシャカシャ聞こえ出したら」
【榎 春菜さん】
「そういうことか」

家族の元に完成した写真が届きました。

【夏井美咲さん】
「かわいい。見て、梨瑚ちゃん、水引かわいい。笑ってるじゃん。笑顔できているよ。笑ってくれるようになったこと。たったちょっとだけのことですけど、うれしいですね。成長してくれているという証が残せましたね」

成長する我が子の笑顔を写真に残したい。
親なら誰もが抱く当たり前の願いを叶えるため、榎さんはきょうもシャッターを切り続けています。