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2018年08月14日(火)
答えのない世界を生きる これからの子どもたちへ
 イノベーションという言葉が頻繁に聞かれるようになりました。イノベーションとは革新という意味。新しい発明が世の中に広く受け入れられたときに用いられる言葉です。
 スティーブ・ジョブスがiPhoneを発表したときを境に、携帯電話は急速にスマートフォンに置き換わっていきました。イノベーション、すなわち時代が変わるような大変革は誰しも起こせるわけではありません。それでも、イノベーション人材の育成については各方面から求めの多いテーマでもあります。
 そこで今回は、広島大学産学・地域連携センター客員准教授の川瀨真紀先生にお話をお聞きしました。

皆がスティーブ・ジョブスにはなれない
 起業すること? IT分野で新しい技術を生み出すこと?
 イノベーションに対するこのようなイメージが一人歩きし始めたのは、世界がITを中心に大きく変化し始め、その代表的なものとしてスマートフォンが挙げられることは疑う余地もありません。
 しかし全ての人がジョブスになれるわけではありません。それでは、これからの時代を生きる私たちが求められるイノベーションについて、どのように考えれば良いのでしょうか。

 川瀬先生はまず、物事の考え方、多面的な見方が出来るようになることが重要だと話されます。
「ジョブスのようなイノベーションは誰でも起こせることではありませんが、イノベーティブであることは誰にとっても可能なことです」(川瀬先生)

 少し平たく言うなら、新しい考え方で捉えることは誰にでも出来るということ。これは勇気づけられる言葉です。しかし、イノベーティブであるとは具体的にはどのようなことを指すのでしょうか?


解決したい課題にぶつかった時、どのように考えるか
 川瀨先生はアントレプレナーシップ教育について、教える方法の一つであるプロジェクト型学習(PBL=Project Based Learning)をアメリカ・ミネソタ州の大学院で学ばれました。

「スタートとなる専門はリサーチデザインでした。自分で問いを立て、その問いに対してどのようなアプローチが取れるかということを学びました」(川瀨先生)

 問いを立て、答えの導き方を設計するという考え方はPBLとも親和性が高いものです。アントレプレナーシップ教育に関わり続ける中で川瀨先生がPBLに重点を置かれているのもそのためです。未来を生きる子どもたちにとって考える力となるものの一つが『何が本質的な課題なのかを見つけること』だと川瀨先生は言われます。

アントレプレナーシップ教育とは、起業すること?
「アントレプレナーシップ教育とは起業するためのものではありません。アントレプレナー(企業家)のマインド(精神)やスキルから学び、新しいことを始める態度を醸成するための教育です」(川瀨先生)

 結果として起業家になる人はいても、起業だけが目的ではないと話されます。
 大人になると職場や家庭でさまざまな課題やトラブルに向き合うことになります。しかし、解決したいことをテーマとして与えられると切り口は一つとなり、解決の方法も限られた選択肢の中からしか生まれません。

「課題を自分のものとして取り組み、新しいことに挑戦するということ。そういう考え方、力強さを大事にしたいと思っています」(川瀨先生)

子どもたちをイノベーティブに育てるには
 日本ではまだ、少しだけ枠組みから出たことをやりにくい環境だと川瀨先生は話されます。それはアメリカに比べてというより、諸外国と比べても難しい環境にあるようです。
 日本には新しいアイデアを持つ人が現れても理解されにくく、アイデアが海外に流出してしまうことも少なくありません。ロールモデルが少なく、イノベーティブな発想も形になりにくい現実があります。

 しかし、小学校などの教育現場では既にディスカッションを含めたワークショップや、課題に対して自らアプローチするPBLも行われるようになっており、親世代に比べると少しずつイノベーティブな方向に向かってきています。

 知識が未熟で、世界は知らないことだらけの子どもたちにとって、見ること、聞くこと、触れるもの全てが新しい体験の連続です。
 大人にとって見慣れた風景でも子どもにとっては見知らぬ不思議なものばかり。その度に子どもたちは「何だろう?」「どうしてだろう?」と思います。

 子どもが「どうして?」という疑問を発した時、「これは~~~だからよ」「そういうものなのよ」と答えを押し付けてはいませんか。
 子どもの疑問はイノベーティブの種です。子どもは本来、自ら問いを立てるという力を持っています。
既存の知識やインターネットで書かれていることが答えの全てではありません。それは課題の一つの側面を切り取ったものに過ぎず、与えられた答えに安住しているとイノベーティブの種は枯れてしまいます。


答えのない世界に一緒にいること
 子どもは自分の興味があることに真っ直ぐに向かっていきます。「なぜ?」「どうして?」を繰り返して親を困らせたり、ポケットの中からとんでもないものが出て来たりするような不可解な行動も日常茶飯事です。その度に親は戸惑ったり、驚いたり、呆れて怒ってしまったり・・・

 近年、働く親が増えました。両親共働きであったり、パートタイムなどで仕事をしていて忙しいご家庭が多くなりました。
 慌ただしい毎日の中で子どもたちのワガママに振り回されていては一日が終わらない!そんな悲鳴も聞こえてきそうです。

 しかし、考えてみると絶対にそうでなくてはならないルールというのは意外と少ないものです。
 毎日絶対に決まった時間にご飯を食べなくてはならないものでしょうか。毎週決まった曜日、決まった時間に習い事に行き、決まった分量の練習をしなくてはならないものでしょうか。時には子どもの要望に対して、頭ごなしにダメというのではなく、子ども自身の言葉で説明させてみてはどうでしょう。

 大人は答えを急ぎがちです。これまでの知識や経験から答えは決まっているものと思っています。そのスピード感で子どもたちに答えを求めることは、子どもの考えるチャンスを損ねてしまいます。
 時に子どもと一緒に答えのない世界にとどまってみることで、創造性を閉じ込めることなく、親子ともに新しい切り口で世界を見ることが出来るようになるのかも知れません。


非日常にはみ出してみることで、親子関係が変わることも
 親子でちょっとイノベーティブに出来ることについて、川瀨先生からある電車が好きな男の子とそのご家族の話を伺いました。
 彼は電車に乗るのが好き。見るのも好き。電車と一緒なら何時間でもいられるくらい電車が大好きでした。
 でも、彼のお姉ちゃんは電車が苦手。乗り物酔いをするから電車なんて乗りたくもない。だから、家族が一緒に電車に乗って遠出するという夢は叶えられそうにありません。

 そこでお父さんはほんの時々、彼のリクエストに答えて一緒に電車に乗って出かけます。出かける日は西とか東とか大まかな方向だけを決め、毎回行き当たりばったりで、男の子が思いつくまま電車を乗り継いで行きます。もちろん、お父さんにとっては目新しい路線に乗ることになり、行ったことのない駅ばかり降り立つことになります。
 駅から出て行く当てがあるわけでもなく、ただひたすら電車を味わう。気に行った駅に降り立てば、彼は何時間でも通り過ぎる電車を見続けます。こうして、お父さんと約束した帰りの電車に乗るまで、行き交う電車を見続けながら、たっぷりの時間を過ごすのです。

 「忙しいのに!子どものワガママにいちいち付き合う余裕はない!」
 思わずそう言ってしまいそうですが、ちょっと子どもの頃を思い出してみてください。
 流れていく川の流れをいつまでも橋の上から眺めていたこと。雲の流れを見ていたら、雲の形がどんどん変わっていくのが不思議でならなかったこと。昨日まで小さなつぼみだったのに、翌日には大きな花が咲いていたこと。親が悲鳴を上げる程、たくさん虫を取ってきて困らせたこと。

 そんな時代を一つひとつ忘れて私たちは大人になってきました。子どもとはまだその時代を生きている人たちです。
 大人にとっての非日常は、子どもにとっては日常のひとコマ。子どもたちに付き合って、ちょっと非日常にはみ出してみると、今まで忘れていたこと、気付かなかったことに目が向くかも知れません。そしてそれは社会に対してというよりも、ひょっとすると、我が子の新しい側面を発見するチャンスになるのかも知れませんよ。

川瀨 真紀(かわせ まき)

広島大学
産学・地域連携センター客員准教授

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