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2019年01月07日(月)
子どものスマホ・ゲーム依存症と学習への影響について
 最近では、中学・高校生はもちろん小学生に至るまで、スマートフォン(以下、スマホと略)を持たせる家庭が急速に増えています。しかし、「食事中や勉強中までスマホを手放さない。注意すると怒りだして、どう接したらいいか分からない」等の悩みも増えているようです。そこで、今回は、スマホ・ゲーム依存症の相談、診察を行っている倉田健一先生(こころの健康クリニック可部)にお話を伺いました。

スマホ・ゲーム利用率の増加と依存症について
 ここ5年間でのスマホを始めとするインターネット接続機器の急速な普及スピードには驚かされます。具体的には、平成28年度 子どものインターネット利用環境調査では、インターネット利用(スマホ、PC、タブレット、インターネットに接続できるゲーム機のいずれかを利用)が10歳で57.1%、12歳で72.6%、15歳で87.5%と年齢を追うごとに高くなり、また同時に所持・利用率も高まっています。
 同調査によれば、スマホの利用率は10歳で11.2%、12歳で22.7%、15歳では57.3%と高い水準となっています。

[低年齢層の子どものインターネット利用環境実態調査 調査結果](平成29年5月 内閣府)
年齢を追うごとに利用率は右肩上がりに増えていきます。中でもスマホ(赤色)は12歳以降、急激に増加していきます。

 友達と連絡が取りやすく、ゲームや動画が手軽に楽しめる便利なスマホ。しかし、家庭での使われ方、特に長時間利用に対して、違和感を覚える方も少なくありません。
 例えば、華やかに持てはやされるIT技術とは反対に、「歩きスマホの危険」、「食事中でもスマホを操作している」、「夜中までゲームをして、朝が起きられない・・・」など社会問題にもなっています。

 「日常生活に影響が出てきても、自分の意志でスマホやゲームを止められないという状況になれば、スマホ・ゲーム依存症と診断できます」(倉田先生)

スマホ・ゲームの長時間利用による学力低下
「長時間ゲームをする青少年の学力が低いことは、世界の共通認識になってきています」(倉田先生)
 日本でも、スマホを長時間利用する子どもの学力が低いことが、国や民間による様々な調査によって、徐々に明らかになってきました。
 ゲームやスマホの利用そのものが学力低下を招くのでしょうか?それとも、長時間ゲームやスマホを利用することで勉強時間が確保できなくなったり、睡眠時間が短くなったりして学力が低下するのでしょうか?
 この疑問について、倉田先生は平成30年3月に出版された『スマホが学力を破壊する(副題 スマホをやめるだけで、偏差値が10上がります)』(川島隆太 著)の調査データ等を引用しながら説明してくださいました。

 「家で2時間以上勉強しても、スマホを3時間以上使用すると、ほとんど自宅で勉強しない生徒の成績と同等かむしろ悪くなっていることが分かりました。原因としては、基本的な学習能力が低下し、学校の授業で学習がうまく成立しなかったことが考えられます」(倉田先生)
 スマホを利用し続けると、衝動性をコントロールする脳の前頭葉や短期記憶を司る海馬の発達が悪くなることが研究から明らかになっています。
 スマホやゲームの長時間利用によって、脳の前頭前野に抑制がかかります。例えば、アルツハイマー型認知症は海馬の萎縮が特徴的ですが、スマホ利用によって前頭葉や海馬の機能低下が起これば、当然、学習に影響します。さらに、子どもは脳がまだ十分に発達していないため、短期間で依存症に陥りやすくなるそうですから更に気掛かりです。



睡眠との関連は?
 睡眠時間が短く、生活リズムが悪い程、学力低下が認められることも今や常識になってきました。短時間睡眠により、レム睡眠が短くなると記憶の定着が悪くなることが分かっています。
「受験期には睡眠時間を削って勉強することもありますが、勉強に集中しているため、スマホとの相関は薄いとされます。ただし、脳の発達段階の子供においては、睡眠・食事・運動のバランスをとって、規則正しい生活リズムで過ごすのが良いに越したことは間違いありません」(倉田先生)

 長時間のスマホ利用により睡眠時間を削っていることは問題ですが、著者・川島先生らの調査結果からは、睡眠を十分に取っていてもスマホを利用した時間と学力低下には相関があることも示されています。つまり、睡眠時間の確保は元より、スマホの利用自体が子どもの学力に影響するようです。


スマホ・ゲームとの健康的な付き合い方
 スマホなどの通信機器は私たちの生活に欠かせないものとなってきましたが、情報は錯綜し、正しい利用法については、その判断に迷います。
 長年、臨床医として各種の依存症を診てこられた立場から、倉田先生は「『スマホ育児は安全性が明白になるまでは、禁止すべき』だと考えますし、また中学・高校生になってからも、「1日1時間まで」、など、家庭内で時間設定をして、きちんと約束ができたら、親のスマホを利用させる程度が妥当だと思っています」と話しておられました。

 米国の小児科学会の2016年の声明では、『保護者は学童期の子供に、スマホ、テレビといった情報通信媒体の使用時間を厳格に定めること』を推奨しています。また、日本小児科医会においても、『スマホに子守りをさせないで!』というリーフレットを作成して配布しているそうです。
 実際、ビル・ゲイツ氏や故スティーブ・ジョブズ氏が自分の子供達には、厳格なスマホ管理をしていたのは有名な話です。

 学習到達は、将来の進学や職業選択の可能性を大きく左右します。さまざまな知識を取り入れていく学習段階にいる子どもたち。その子どもたちの脳の発達に悪影響が出ることは避けたいものです。今やスマホのない時代に逆戻りできないからこそ、スマホの使い方、付き合い方を親も一緒に考え直す必要があるのではないでしょうか。
 「まずは、親もだらだらスマホをやめて、お手本を見せていくことが大切だと思います。子どもにだけ制限をつければ、子どもの反発は当然でしょう」(倉田先生)

 最近では、ニュースなどの情報でも頻繁に取り上げられる程、スマホの影響や弊害についての調査が進んできました。倉田先生は、調査により研究証拠が揃えば《夜間のゲーム使用》《アプリごとの使用時間制限》などの法整備や規制も進むと考えていらっしゃいます。
 「その利用指針が出ることを受動的に待つのではなく、積極的に親が発達期の子どものスマホの使い方について考える必要があり、それが親の責任だと思っています」(倉田先生)

 日本でスマホ依存症対策は急務となっています。現在、倉田先生は平成29年6月の厚生労働省の通知に基づき、「広島県依存症専門医療機関」に認定された瀬野川病院で、スマホ依存症対策のためのチームを立ち上げている最中とのこと。スマホ依存症の相談も開始されているようです。
 すでに専門家による治療が必要とされるほど、スマホ依存症が社会問題になってきていることを踏まえ、子どものスマホ利用について「仕方ない」「これくらいは」で済ますことなく、正面から向き合うことが求められています。

倉田 健一(くらた けんいち)先生

こころの健康クリニック可部 院長 
医学博士、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医

現在、広島県立総合精神保健福祉センター、瀬野川病院にて、依存症治療のための相談・診療業務を兼務

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