子育てアドバイス

【よくある相談シリーズ】うちの子、反抗期かもしれません…。


ちょっとしたことで不機嫌になったり、屁理屈をこねて逆らったり、大人の痛いところをついて揚げ足を取ったり…。冷静に考えれば自分自身も通ってきた道なのに、思わずカッとなって小言を言ってしまい、さらなる反抗的な態度を招いてしまったこともあるかもしれません。これまで聞いたことがないような乱暴な言葉を浴びせられたり、あからさまに避けられたりしてショックを受けた話もよく聞きます。素直でかわいいあの子はどこへ行ってしまったのかと嘆いたり、育て方がまずかったのかと落ち込んでしまったりすることもありますよね。そんな時に、ちょっと気持ちを立て直すヒントになれば幸いです。

 


ポイント❶
まずは、子どもの言動を受け止めるための
自分の心の余裕を作る!


「反抗期」というと、幼児期の<第一次反抗期>と思春期の<第二次反抗期>が知られていますが、最近では<中間反抗期>という言葉も登場し、SNSなどで様々なエピソードが投稿されるなど、2つの「反抗期」の間の時期にも扱いづらさや育てにくさを訴える保護者の声を聞くようになりました。いずれにしても、「反抗期」は、大人にとってはちょっと厄介なものですが、子どもにとっては自立への歩みの一歩であり、保護者が子どもの成長を実感できる1つのサインでもあります。誰も手に取って見ることのできない“心の育ち”のまさにその過程を、子どもの反抗やその質的変化を通じて感じとることができるわけです。とりわけ、10歳頃からの反抗は、ただ単に保護者に逆らうだけでなく、これまでの生活の中で保護者の行動をよく見ていて、実に痛いところをついてくることもしばしばなので、余計に癪にさわるかもしれませんが、その言動のいたるところに、言われたことに疑問を抱くことなく従っていた段階から、自分で考え、判断し、納得してから行動しようとする段階へ進んだ証がちりばめられているので、できれば、多少ムカムカしながらも、子どもが自分なりに理屈をこねられるようになったり、保護者の過去の言動に照らして矛盾はないか、他の家庭と比較してどうかといったことまで考えられるようになったりした内的な成長を喜ぶまなざしも持ちたいところです。

とはいえ、仕事で疲れていたり、プライベートな気がかりを他にも抱えていたり、大人は大人でそれぞれ事情があるので、そんな時に子どもに反抗的な態度をとられたら厄介に感じたり、腹立たしく思ってしまったり、自分のこれまでの献身を無下にされたような気持ちになって傷ついて、悲しくなってしまったりするのは仕方ないことではないでしょうか。そうした思いを同じ境遇の人たちと共有し合うことも大切です。そして、理想の母親・父親像を自身に求め過ぎないで、親ゆえに冷静になりきれなかったり、子どもを案じる気持ちが空回りしてかえって子どもの反発を招いてしまったり、時に平静さを失ったり余裕をなくしたりすることもある等身大の自分を認めて許しましょう。その上で、子どもの発達についての知識を得ることで自分の見方を少しずつ変える努力をして、それによって、まずは自分の内に、子どもの言動を冷静に受け止められる心の余裕を作っていきましょう。

心に全く余裕のないまま子どもと向き合っても、なかなか良い結果にはつながらないものです。たいていは互いに相手の言動にイライラして売り言葉に買い言葉の悪循環を生み、消耗するばかりです。結局いつも感情的になって頭ごなしに叱ってばかりいるという悩みをよく聞きますし、あるいはそうしたやり取りに疲れ、結局さじを投げてしまって放置しているとか、常に顔色をうかがってご機嫌をとるようになってしまったという嘆きの声を聞くこともあります。これらはいずれも、かえって子どもの反抗を悪化させる可能性がありますし、子どもの人格形成上も、親子関係にとっても、あまり好ましい状況とは言えないでしょう。保護者も人間ですから、時には子どもとぶつかることだってあるでしょうし、子どもの言動が家庭内のルールや社会通念上の規範を大きく逸脱したような時には、直ちに毅然として叱らなければならない場合もあるでしょう。しかし、可能な限りは、子ども側の思いに目を向け、まずは冷静に受け止めることが大切です。子どもからぶつけられた感情やイライラに対して、同じように感情やイライラをぶつけ返すのではなく、大人には、それをいったん受け止めて、別の形で返していく工夫が求められるのであり、そのためのわずかな心の余裕をもっておく、あるいは作り出すようにする必要があるわけです。

子どもの反抗的な態度にイラッとしたら、ひと呼吸して、自分たち親子はそんなネガティブな感情さえお互いに躊躇なくありのままに表現し合える良好な関係性だ、むしろこれは確かな絆の証だと自分に言い聞かせてみると、少しイライラが静まって、気持ちを落ち着けることができるかもしれません。とにかく、子どもの感情に引きずられることなく、こちらはある程度冷静でいることが大切です。

 


ポイント❷
自立への歩みを踏み出しつつも甘えたいと、
成長の過程で揺れている子どもの心を理解する!

 

第二次性徴が現われ始める時期には、個人差がありますが、子どもは、そうした身体的変化に誘われるようにして内面的にも変化を始め、徐々に「親」を「親」としてだけでなく一人の大人として客観視できるようになっていきます。それまで自分にとって絶対的な存在であった「親」の欠点や言動の矛盾等に気づくようになり、反抗を経ながら少しずつ心理的離乳を達成していくわけです。つまり、「親」への反発や批判は、「親」を少しずつ客観視しはじめた証であり、「親」といえども完璧な存在ではないことや、一人の人間の中に様々な側面があることをまさに学んでいる過程と言えるわけです。

一方で、子どもたちにはまだまだ甘えたい気持ちもあり、さっき大人びたことを言ったかと思えば、とたんに今度は子どもじみた態度をとったり、さっきまでの不機嫌がうそのように甘えてきたりすることもあります。子ども扱いを嫌い、自分で決めたがったり、保護者からの世話や干渉をひどく嫌がったりする一方で、“大人らしさ”を求められることには抵抗を示しますし、まだまだ大人からの愛と支えを必要としています。子どもたちは、時々“子ども”の自分として羽を休めて充電しつつ、精一杯背伸びして“大人”の視界を体験しつつ、両者を行ったり来たりしながら、小学校高学年頃から思春期を経て、ゆっくりと大人への階段をのぼっていくと言えるでしょう。子ども自身絶えず揺れ動いているので、大人からするとひどく扱いにくい感じがするわけです。

また、最近<中間反抗期>と呼ばれようになった8歳~10歳くらいの時期も、ちょうど子どもの思考が質的に変化していく時期にあたっており、そうした点にも留意が必要です。この時期には、人に対する見方も徐々に多面的になってきて、少しずつ複雑な感情も理解できるようになってくるため、仲間や周囲の大人との人間関係も次第にこれまでのように単純ではなくなってきますし、また、この時期に学習面でつまずいてしまう子どもも一定数おり、ストレスを抱えやすい時期でもあるわけです。この時期の子どもの内的混乱や試行錯誤はなかなか大人には捉えにくく、子どものイライラの背景には、自分でも気づかないうちに変わっていく自分への戸惑いや、それによる内的な混乱を大人に理解されないもどかしさやいらだちもあるのかもしれません。この時期の内的混乱の大きさには個人差もありますが、大人の方は、子どもがそうした時期であることを知っておいて、あれこれ指図するのではなく、子ども自身が十分に試行錯誤しながら、自分のペースで混乱を乗り越えていけるよう、その時々の子どもを冷静に受け止めつつ、受容的な関わりで支えていく姿勢が大切です。学習面においても人間関係においても、大人の考える“正答”をあまり早急に求めたり、そこへの最短ルートを示して無理に従わせようとしたりすることは、時にその後の大きな伸びや飛躍を妨げてしまうこともあります。その時は苦しくても、自分自身で十分に試行錯誤した子どもの方があとで大きな伸びにつながる場合があるのです。大人の受け止め支えようとする姿勢が伝われば、子どもも無駄な反発はしなくなり、厄介なやりとりも少しは落ち着くでしょう。

状況にもよりますが、少し冷静になって、できるだけ子どもの思いを聞き、言葉に耳を傾けるよう努め、子どもの内なる変化に目を向けてみるようにすると、子どもの語る内容や反応の端々に、ものごとの受け止め方や見方、感じ方など様々な面での成長を感じられたり、成長の過程で必死にもがいている子どもの健気な姿に気づけたりすることもあるかもしれません。

 


ポイント❸
子どもの変化にうろたえず、
終始一貫した態度で接するように心がける!

 

反抗期には、保護者の側からすると子どもの態度がある時から急に変わってしまったように感じられることも少なくないのですが、実際には、人間は生まれてから死ぬまで絶えず発達を続けていますから、本人も周囲も意識しないままに内面的な変化は少しずつ進んでいて、ちょっとしたきっかけや、機が熟すことで、ふっと周囲にも分かる形で表面化してくるわけです。当然、子どもには自分が突然変わった自覚はありません。保護者や周囲から、急に態度が変わったとか、突然様子がおかしくなったなどと指摘されると、そのことで、いっそう反発やいらだちを感じてしまうことさえあります。

子どもが反抗的な時も、甘えてくる時も、それ以外の時も、保護者は、常に一貫した態度で受容的かつ冷静に接するよう心がけておくことが大切です。日頃はやさしく関わっているけれど、反抗的な時にはこちらもケンカ腰になるとか、いつもは厳しく接しているのに、子どもが反抗してきた時には顔色をうかがったりご機嫌をとったりするのは、いずれも一貫した態度とは言えません。終始一貫した態度を貫くことは、骨の折れることかもしれませんが、どんな時も変わらずそこに居て自分を受け止めてくれる存在は、成長のための葛藤の中で日々もがいている子どもにとって大きな支えとなります。そして、子どもの変化にもうろたえることなく、一貫して変わらぬ愛情を示し続けていれば、子どもたちが一時的にどんなにひどく反抗したとしても、反抗期が終わる頃にはまるで嵐が過ぎ去るように、平穏なあたたかい親子のやりとりが戻っているはずです。

ここで、受容的な関わりというのは、何でも子どもの言いなりになって受け入れることではありません。子どもの反抗に動揺するあまり、保護者が子どもの顔色をうかがうようになってしまうと、かえって大人への不信感や失望感を抱かせる結果となったり、この家の中では自分が強く出さえすれば、すべて思いのままにできるという誤った認識を抱かせてしまったりすることもあるので注意が必要です。

また、子どもが無視などを繰り返すような場合も、無視に無視で応じることや、親にそんな態度をとるならもう知らないと突き放して放置してしまうことも望ましくありません。自分はちょっとしたことでへそを曲げて気まぐれに保護者を無視したとしても、そうしたやりとりにうんざりした保護者から逆に自分が無視されたり手ひどく突き放されてしまったりすると、ひどく傷ついてしまうのです。場合によっては、自分が見放されたと感じ、その後の親子関係に禍根を残す場合もあります。努めてこちらは冷静に対応しましょう。そして、子どもが聞く耳のもてるおだやかな雰囲気の時に、愛しているからこそ、無視されるととても悲しいし、傷つくことを正直に伝えましょう。その時にすぐには伝わったように感じられなくても、届けた思いの種は胸に残り、いずれ時が来た時に芽吹くこともあるでしょう。

同様に、子どもの暴言に対し、暴言や暴力で応じることや、頭ごなしに怒鳴りつけるといったことも避けましょう。自分の中で怒りの感情や、子どもの態度を望ましいものに矯正したい気持ちがこみ上げても、その時その場では冷静に応じることに努めましょう。

いずれにしても、子どもが落ちついて話ができるタイミングを見て、子どもの言い分や気持ちをじっくり聞き、それを受け止めることが大切です。子どもの方は、どうせ大人は聞く耳を持っていないという先入観で、大人の方は、反抗期には子どもというものは親や教師とはあまりコミュニケーションは取りたがらないものだとはじめから諦めていて、互いに、話そうとする努力、聞こうとする努力をしていない場合も多いのです。しかし、子どもが落ちついている状態の時に、大人が子どもの言い分に耳を傾けようとする姿勢や理解しようとする態度を見せれば、意外と子どもが大人からの働きかけに応じてくれることも少なくないのです。だからといって、子どもからの反抗がすっかりなくなるわけではありませんが、無駄な衝突は少なくなりますし、子どものことが分からないという悩みも緩和されます。また、大人との対話は、子どもにとっても更なる成長のための糧となります。

対話の際には、せっかく子どもが心を開いて自分の思いや考えを語ってくれているわけですから、たとえなかなか話が要領を得なかったとしても、話の途中で口をはさんでこういうことでしょと勝手に先回りしたり、大人からすると未熟で短慮な印象を受ける考え方であっても、頭ごなしに否定したりするのではなく、必ず、じっくり最後まで話を聞く姿勢が大切です。そうでなければ、せっかくこうした機会をもてたとしても、子どもが大人の態度に失望してしまい、その時だけの1回きりのものとなってしまうでしょう。話を聞きながら、どうしても子どもの考えを正したいという衝動が沸き起こってきた時にも、「○○ちゃんはそう思ってるんだね」などと子どもの主張をいったん受け止めた上で、こんな風に思うんだけどと自分の考えを伝えたり、こんな風には考えられないかな、こういう見方をする人もいると思うよ、などと異なる考え方があることを伝えたりしてもよいでしょう。落ちついて話ができている環境であれば、子どもも自分の考えをすぐに変えるかどうかは別として、ひとまず耳を傾けてくれるでしょう。今どうしても自分が子どもの考えを変えなくてはと焦らなくても、きっかけさえ与えることができれば、案外、子どもたちは自分でしっかり考え、早いうちに自力でそこに到達してしまうかもしれません。

「反抗期」の子どもたちに寄り添おうとする時に最も大切なことは、その子の人生の主役であるその子自身の力を信じ、一番のサポーターとなって、子どもが自力で目指す場所に到達できるよう、その試行錯誤のプロセスを支えていくことではないかと思います。荒波の中で懸命にもがき必死に成長しようと一番あがいているのは子どもたちです。大人たちはそのことを理解して、大人のものさしで子どもたちを測って自分の設けた既存の枠の中に無理やり押し込めてしまおうとするのではなく、子どもたちの歩みにそっと寄り添いながら、できる限りあたたかいまなざしで自立までの過程を見守る必要があるのです。我々大人は皆、子どもの態度の急な変化やその反抗にもひるむことなく、常に愛情をもって子どもの内なる変化を受け止めつつ、その育ちを実感し、喜びながら、子どもたちの成長を見守っていきたいものですね。


 
加藤 美帆
広島女学院大学 人間生活学部
児童教育学科 准教授
一般社団法人 日本ホスピタリティ教育研究所 理事
博士(教育学)修士(心理学)
専門分野:発達心理学、教育心理学
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