出版不況でも、本屋さんを開く。広島で見つけた「本との新しい出会い方」

7/5(日) 08:00

書店の閉店ニュースが後を絶たない時代に、あえて本屋を始める人たちがいる。ブックカフェの書店、元国語教師が営む癒やしの棚、そして業界を変えた取次会社の新戦略――「独立系書店」と呼ばれる新しい波が、静かに、しかし確実に広がっている。

不況の時代に本屋が増えるワケ

「活字離れ」が叫ばれて久しい。全国で書店の閉店が続く中、広島県内では個人が小規模から立ち上げる「独立系書店」が静かに増えつつある。出版不況だからこそ、逆に「自分の手で本の場所をつくる」という選択をする人たちが生まれている。

店主の"眼"が宿る尾道の棚

昨年12月、尾道市中心部に誕生した「Books&Cafe灯書堂」。出版取次とチェーン書店で長年働いてきた新家幸太さんが、妻・知秋さんとゼロから築いた店だ。並ぶのはランキング本ではなく、新家さん自身が「置いておきたい」と感じた一冊一冊。東京からの観光客は「出合いがある場所。知らない本ばかりで、それが好きです」と語った。

夫婦1年越しの説得劇

開業への道は平坦ではなかった。知秋さんは当初、半分反対だったという。「本当にやれるのかっていう話を1年、2年はずっとしていた」。それでも新家さんは語り続け、コーヒーの技術は愛知の名店店主から直接学んだ。「緊張するなぁ。手が震えるよ」と笑いながら、カフェの腕も磨いて経営を軌道に乗せた。

元国語教師が開く癒やしの本棚

広島市の「和books」を営む加藤由佳さんは、昨年まで県内の高校で国語を教えていた。毎朝、その日の一節を小さな黒板に書く。訪れた日には夏目漱石「こころ」の一文が記されていた。特にエッセイやケアに関する本を意識的に選び、「背表紙を眺めているだけで、自分に言葉をかけられている気持ちになる」と語る。

取次会社が変えた開業のハードル

こうした動きを支える構造変化もある。取次大手・トーハンが小規模開業への参入障壁を引き下げ、家族経営や自宅改装型の店舗でも開業しやすい環境を整えた。結果、カレー屋や花屋との兼業も含め、この2年で全国に80軒の新たな本屋が誕生している。

若い人ほど、実は本を読む

「若い世代ほど本を読まない」という通説は、現場では当てはまらないようだ。加藤さんは「若い人がたくさん読まれているのは、この店を始めてすごく実感した」と話す。アルゴリズムが届けられない"偶然の出会い"を、人々は今も求めて店へ向かう。