宮島・厳島神社「世界遺産30年」節目の年に地元企業が仕掛ける新戦略――東洋観光グループの挑戦

7/4(土) 10:00

広島を代表する観光地・宮島。来島者数が2年連続で過去最多を更新し、厳島神社の世界遺産登録30周年を迎える今年、地元企業・東洋観光グループが矢継ぎ早に新業態を投入している。インバウンド全盛の時代に、島内で戦う地元企業の戦略とは何か。

来島者数が2年連続で記録更新

広島を代表する観光地、宮島。去年の来島者数はおよそ497万人にのぼり、過去最多だったおととしからさらに11万人以上増え、2年連続で記録を塗り替えた。今年は厳島神社の世界遺産登録30周年という節目の年にもあたり、国内外の新規ホテルが相次ぎ建設されるなど、宮島をめぐる観光ビジネスの熱気はますます高まっている。

弁財天通りにカフェ「OAS」が誕生

宮島水族館付近、地元で「弁財天通り」と呼ばれる一角に今月オープンしたのが、カフェ「OAS(オース)」だ。"地域のオアシスに"という思いから名付けられた。瀬戸内レモンを使ったレモン抹茶ラテや、宮島のシカをリアルに再現した看板ケーキが話題を集める。運営するのが東洋観光グループ。同グループが宮島で本格的に事業を始めたのは2019年のことだ。

円安・物価高が生んだ二極化の現実

去年、宮島を訪れた外国人観光客はおよそ75万人。おととしの64万人から10万人以上増え、こちらも過去最多となった。「旅館はかなり高額なプランで設定されているので、インバウンドの方は円安でまだまだ増えると思う。ただ国内旅行の方には料金的に高い設定になっている」と旅館「みやじま杜の宿」の槇敬志支配人は話す。インバウンド好調の陰で、国内客の価格ハードルが高まるという二極化の構造が浮かび上がる。

古民家を和食店「しまの音」に再生

「夜のコンテンツが弱い。夜遅くまで開いている店が少ない」という課題意識から、今年7月に開業するのが和食店「宮島味処 しまの音」だ。築300年を超える古民家を改装し、瀬戸内の魚を中心とした料理を提供する。「夕方から営業している店が少なく、食事難民になっているお客を取り込むことは非常に価値がある」と山本義諒店長。将来的には宿泊事業への展開も視野に入れている。

「泊食分離」で快適な空間づくりへ

グループ旗下の旅館「さくらや」では、宿泊者の8~9割が海外客で、素泊まりを希望するケースが多い。「泊まる場所と食事をする場所をすみ分ける『泊食分離』の戦略です」と田淵潤太郎支配人。食事提供をなくした分のリソースは客室の快適性向上に充て、海側のシービュールームは予約が埋まりやすい目玉となっている。素泊まり客の夕食先として「しまの音」を案内する連携も自然と生まれつつある。

「広島飛ばし」が示す観光の課題

宮島の好調を喜びながらも、東洋観光グループホールディングスの今井誠則代表は根本的な課題を口にする。「平和公園と宮島を合わせても3~4時間で回れる。いわゆる広島飛ばしが残念ながら今も続いている」。島内で宿泊施設を増やすことにも環境保全上の制約がある中、観光客を広島市内や県内各地へ周遊させる仕掛けが不可欠だという。

インバウンドを超えた持続的な観光へ

「インバウンドも世界情勢で止まることがある。修学旅行や国内のお客にも使いやすい店づくりは大事」と槇支配人は冷静に見つめる。世界遺産登録30年の節目の年、東洋観光グループは宮島島内ならではの強みを磨きながら、その賑わいを広島全体へと波及させる長期的な戦略を着実に積み上げている。