怒りと落胆 NPT再検討会議3回連続決裂も「世界の終わりではない」核なき未来へ問われるヒロシマの役割

5/25(月) 17:39

アメリカ・ニューヨークの国連本部で開かれていたNPT=核拡散防止条約再検討会議は、核軍縮の目標などを盛り込んだ合意文書を採択できずに閉幕しました。
3回連続の決裂に、被爆者からは落胆の声が聞かれました。

先月27日から国連本部で開かれていたNPT=核拡散防止条約再検討会議。
合意文書の採択に向けて最終日の22日には4度の修正を加えた草案が各国に配布されるなどギリギリまで交渉が続けられました。
しかし・・・

【NPT再検討会議・ビエット議長】
「最善を尽くしましたが、この会議は実質的な議題について合意に達する状況にはないというのが私の認識です」

イランを名指しして核開発を強くけん制する記述などをめぐりアメリカとイランが最後まで激しく対立。
会議は2015年、2022年に続き、3回連続で決裂しました。

NPT体制そのものへの信頼が揺らぐ結果となり、会議の進行を務め、調整に奔走したベトナムのビエット議長は改めて、条約の重要性を強調しました。

【NPT再検討会議・ビエット議長】
「NPTは私たちにとって引き続き重要な枠組みです。この4週間で示されたようにたとえ最終的な合意に至らなかったとしても建設的な対話を続けようとする意志は確かに存在しています」

また、国連軍縮部門のトップを務める中満泉事務次長も危機感を示しました。

【国連・中満泉事務次長】
「非常に失望すべき結果ではありますが、国連として私たちは決してあきらめないということを強調したいと思います」

現在残る核軍縮に関する唯一の国際的な枠組みであるNPT体制の信頼が揺らぐ現状に、被爆者からは落胆の声が相次ぎました。

【県被団協・箕牧智之理事長】
「怒りと落胆よな。3回目も(決裂に)なると、また(次回)5年先にどうなるか、どんな時代になるかわからない。言うてみれば迷路に入ったもんよ」

もう一つの県被団協の理事長で、会議期間中に現地で核廃絶を訴えた佐久間邦彦さんも・・・

【県被団協・佐久間邦彦理事長】
「草案はみな全部やってほしいこと、一致してほしいことばかりだった。中にはこれは下げた(修正した)方がいいってのはなかったですよ。一致させない方が核保有国にとって(都合が)いいのか、ということさえ思ってしまった」

■なぜ3回目の決裂 

ここからは会議1週目を現地で取材した古賀記者とともにお伝えします。

ーー被爆者のみならず、広島市長や知事からも「極めて残念」との声が相次ぎましたが改めて、何が決裂の要因となったのでしょうか?

【古賀記者】
はい、まず前提として今回の会議で失敗が許されない、というのはどの加盟国も最低限の共通認識として持っているのを私も現地で感じていました。

最終文書の草案も通常は会議の4週目に配布して最後の数日間で合意を目指すのが通例でしたが、今回は会議2週目という異例の早い段階で最初の草案が議長から示され合意に向けた調整が進められてきました。

最終的に草案は4度にわたって修正が加えられたのですが、その過程では例えば前回2022年の再検討会議で対立の大きな要因となったウクライナ情勢をめぐって、ウクライナ国内の原発に言及した記述が削除されたり、日本としては譲りたくはない北朝鮮の非核化についての項目が削除されるなど、内容が大幅にそぎ落とされていきました。

ただ、最後まで残されたのがイランを名指しして、「いかなる核兵器も決して追求、開発、保有してはならない」という記述です。
ここは、アメリカが譲らず合意を阻んだ1つの大きな要因となりました。

ーーまさに今の世界情勢を反映していますね。

3回連続での決裂ということでNPT体制への信頼そのものが揺らぎかねない結果となりました。

■「世界の終わりだみたいに考える必要はない」

会議の前半を現地で傍聴した広島市立大学の梅原教授に受け止めを聞きました。

【広島市立大学・梅原季哉 教授】
「今191か国が入ってるわけですけど、そこからどんどん(加盟国が)抜けていく、『うちの国も核兵器を持とう』という国がどんどん増えるかっていうと、おそらく少なくとも今直近のこととしてはそれは起きないと思います。
そういう意味で大変残念な結果ですけど、3ストライクで試合が終わってしまった、世界の終わりだみたいに考える必要はないと思います」

「でも、(NPTへの)求心力を高めることにはならないので、長い目で見るとやっぱり北朝鮮のように或はインド、パキスタン、イスラエルのような形でNPTにしばられれない形で自分たちも核兵器を持った方がいいんだという行動に出る国がないとは限らないですし、そういう意味ではやっぱり残念というか、危惧すべき懸念材料は残っていますね」

ーー梅原教授は長期的な視点での懸念を指摘していましたが、核軍縮、核不拡散の後退が不安ですね。

核兵器を巡る世界情勢は緊張感が増しているのは間違いありません。
次の再検討会議は5年後の2031年に開かれることが決まりました。
その時には現地を訪れることができる被爆者の数もさらに減っていることが予想されます。

「核兵器が使われたらどのような結末が待っているのか」被爆者が身をもって伝えてきた実相をいかに世界に訴え、ブレーキ役となるか、被爆地ヒロシマそして、被爆国・日本の役割はますます大きくなっていきます。

ーーここまで古賀記者とともにお伝えしました。