「無くなったら困る!」岐路に立つ赤字ローカル線 JR呉線が新しく追加 赤字額:約13億7000万円

11/6(木) 19:15

「無くなったら困る!困る!困る!困る!」

風光明媚な瀬戸内海すぐ側を走るJR呉線この路線に今突きつけられている問題が…

【JR西日本 飯田稔督広島支社長】
「呉線の「三原から広」の間が新たに2000人未満の線区として加わった」

JRは、「大量輸送」という鉄道の特性を十分に生かせていない区間として、JR呉線「三原~広」間を新たに追加したのです。

過去3年の経営状況は「赤字額:約13億7000万円」

【沿線住民】
Q無くなったら困る?
「無くなったら困る!困る・困る・困る!」

困惑を隠せない沿線の住民!

【呉工業高等専門学校 神田佑亮教授】 
「今後そのまま何もしなければ、より厳しい状態に行くのは間違いない」

警鐘を鳴らす専門家!

どうなる!?県内の赤字ローカル線その現状に迫ります。

JR西日本公表「輸送密度」が2000人未満の区間 広島では4路線 8区間

私たちの暮らしと共に走り続ける鉄道。

鉄道路線1キロあたりを、1日どれだけの人が利用しているかを示す指標を「輸送密度」といいます。

JR西日本は先月、昨年度までの3年間で「輸送密度」が2000人に満たない19路線・32区間の経営状況を発表しました。

これらの路線の赤字額は全体で約267億円。

広島県内でも福塩線や芸備線などの4路線8区間が赤字となりました。

【広島県内の対象区間】
〈JR福塩線〉「府中~塩町」
〈JR芸備線〉「備中神代~東城」「東城~備後落合」「 備後落合~備後庄原」「 備後庄原~三次」「三次~下深川」
〈JR木次線〉「出雲横田~備後落合」
〈JR呉線〉「三原~広」

中でも最も”採算がとれない”路線となったのが、JR芸備線「東城~備後落合」間。100円の収入を稼ぐためにかかる費用を示す「営業係数」は9945円にのぼり、収支率はわずか1%で、極めて厳しい経営状況となっています。

県内では山間部を走る路線が大半を占めますが、今回、新たに加わった路線もあります。それは…

赤字額は約13億7000万円 岐路に立たされたJR呉線「三原~広」間

JR呉線「三原~広」間です。

呉線は「三原~海田市」までを結ぶ路線ですが、JRが公表した2023年度のデータによると、「広~海田市」間の「輸送密度」が2万人を超えているのに対し、「三原~広」間ではわずか1653人にとどまり利用者に、大きな差が…

そして、その経営状況は…

【赤字額 約13億7000万】

JR西日本は、呉線の輸送密度が2000人を超える可能性もあり、効果が出る取り組みを目指すとしていますが、この路線が抱える課題は一体何なのか?

JR呉線「三原~広」間の課題とは?

まちづくりや公共交通機関について研究する、呉工業高等専門学校の神田佑亮教授は、赤字路線が抱える課題について指摘します。

【呉工業高等専門学校 神田佑亮教授】 
「沿線が住みにくくなっているところをもっと深刻にとらえるべき」

JR広駅では、通勤・通学時間帯のラッシュ時には多くの人が利用しますが、三原方面の利用については…

【利用者は】
Q「三原~広」間の列車を使うことは?
「ないです」
Qなぜ?
「用事がない…」

実際に竹原市の「忠海駅」に行ってみると、「ウサギの島」として知られる大久野島に向かう観光客の姿もありますが、人はまばらです。

【地元住民は】
「(三原から)忠海までは大久野島に行く人が多いから、忠海でほとんど降りる
竹原方面はあまりいない。JRが無かったら足が…バスだったら運賃も高いし、なかなか行けなくなる」

列車は1時間から1時間半に1本程度と本数が少ないのが現状…

【呉工業高等専門学校 神田佑亮教授】
「沿線の竹原市の人口をみると2020年の人口2万4、5千人に対して30年後はあくまで予測だが、半分以下になってしまう。今後そのまま何もしなければ、より厳しいおかれる状態に行くのは間違いない」

こういった沿線の人口減少だけでなく、街づくりも大きな課題だといいます。

【呉工業高等専門学校 神田佑亮教授】
「呉線の駅周辺を見ていきますと、なかなか寂しい駅というか、駅を降りても人気のない駅がかなり目立つなというのはあって、長い目で見た時に駅周辺の街づくりをどういう形でやっていくのか、今回の発表を機に1回冷静に考えてみる必要がある」

鉄道以外の交通手段との接続を含め、観光面の需要など視野を広げて施策を考えることが、利用促進に繋がるカギだと指摘します。

JR呉線「三原~広」間 地形の問題も 赤字解消はどうしていく?

さらに、「三原~広」間の海と山に挟まれた地形にも問題があるといいます。落石や倒木などに備え、25キロの速度制限が設けられた区間が長く、点検などの費用がかかるとされています。

【呉工業高等専門学校 神田佑亮教授】
「利用者が多いところとそうでない区間は、レールの管理するレベルがどうしても変わってしまう。利用者が少ないところになると、何らかのコストダウンをしなくてはいけなくなる」

赤字の解消について神田教授は…

【呉工業高等専門学校 神田佑亮教授】
「より地域の経済を循環させるという発想が必要だと思う。より一層、今後何人乗ったというよりも、むしろ何円稼いだという形で、モノを見ていくことが大切」

今回の発表受けて 沿線自治体はどう受け止めた??

では「三原~広」間が走る4つの自治体は今回の件をどう受け止めているのでしょうか。

どの自治体も、厳しい状況を飲み込まざるを得ないとしていますが…

特に呉線しか走っていない呉市や竹原市は「利用が減っているのは残念だ」「少ないというのは分かっていたが、ショックでダメージが大きい」と驚きを隠せない様子が取材を通して分かりました。

鉄道のあり方とは?

ただ、JR西日本は民間企業なので、当然、赤字を放置することはできません。
その反面、公共性の高い事業を行っているため、すぐに廃線とすることもできません。

だからこそ、利用者が少なくなった路線を今後どうしていくのか、沿線の住民や自治体だけでなく、私たち1人1人が考えていく必要があります。