不安の中で迎えた収穫の秋 産廃最終処分場近くのコメ農家 「川は死んでしまう」 広島・三原市本郷町

9/10(水) 18:27

「収穫の秋」を迎えていますが、手放しで喜べないコメ農家もいます。
三原市本郷町の産廃処分場周辺で長期化する苦悩を「ツイセキ」します。

先週、三原市本郷町の日名内地区で今シーズンの稲刈りが始まりました。

【コメ農家・竹之内昇さん】
「見てください。自信のコメができました」

竹之内昇さんの田んぼは産業廃棄物の最終処分場近くにあります。
天候に恵まれコメの出来に手ごたえを感じていますが、今年の作付け面積は例年の半分ほどにとどめました。

【コメ農家・竹之内昇さん】
「水さえあればもっともっと増やせるんですけどね。なんとかこの川を使えるように…いま産廃場の排水路になっていますんでね。安心して使える元の川に戻してほしいですね」

3年前に稼働が始まった本郷最終処分場。
有害物質を含まない廃棄物だけが埋められることになっていますが、水質検査で基準値を超える「汚れ」などが確認され、そのたびに搬入と埋め立ての中止が繰り返されてきました。
処分場を運営する事業者には県から合わせて4回、行政指導が出されています。
因果関係は特定されていませんが、去年、産廃処分場のすぐ下を流れる日名内川に「異変」が起きていました。

【五十川記者】
「ヘドロのようなものが流れていきます。オレンジ色のものがめくれあがって裏側には黒っぽいものが付着していました。流れていきます」

不安を取り除こうと、川を管理する三原市は産廃処分場の「上流」部分から黒いパイプを通し、もうひとつの農業用水を確保しましたが…

【五十川記者】
「この黒いパイプからも流れているように見えるんですけど、当然幅が違うわけですから使える水の量が減ったんだということがわかります」

「水質の悪化」や「十分な水量を確保できない」ことを理由に、今年9軒のコメ農家が作付けの縮小・断念を余儀なくされました。

【コメ農家・柄崎雅司さん】
「泡がずっと残っていくとこれが今は雨が降っていませんけど、大雨のときには大量の泡が出ます。普通消えます。それがずっと残っていくということですね」

今も時折「異変」は現れますが、処分場からさらに下流では川の水をひく以外に選択肢のない田んぼもあります。
待ちに待った「実りの秋」を迎えてもコメ農家の気持ちは晴れません。

【コメ農家・柄崎雅司さん】
「農協は検査・点検いうことでカドミウムの検査は毎年すると無料でするということになってるんですが、検査をされるという気分がちょっと違和感というか嫌だなというのもあるし、結果が良ければ安心証明にもなる。結果出るまではやはり不安です」

今年4月、県は水質検査をクリアしたことなどから産業廃棄物の搬入・埋め立ての再開を認めました。
今も、汚染源を特定することはできていませんが、住民の簡易検査では基準値を超える水質の「汚れ」が検出されているといいます。

住民たちは今月、県知事宛に「原因究明を求める」陳情書を手渡しました。

【コメ農家・水野克成さん】
「基準を下回っているから川の水を使えますよと言われるんです。冗談じゃないんですよ」

「汚れ」の原因が特定されない中、日名内地区の風景はすっかり変わりました。
コメ農家の不安に終わりは見えていません。

【コメ農家・水野克成さん】
「産廃は撤去してほしい。川は死んでしまいますよ。農業ができないようになる」


《スタジオ》
住民の生活に直結する問題です。
なぜ汚染が続くのか。根本的な原因究明を進める必要がありますね。

【コメンテーター:広島大学法学部・吉中信人学部長】
水質の安全確認は大前提ですが、必要な産廃施設の安全性確保も社会全体として最適解を求めていかないといけないのかなと思います。

住民の声に寄り添った対応が求められます。