死亡事故あった「勝手踏切」の封鎖 安全第一だが…地元の同意得られず難航するケースも 広島

6/4(水) 20:30

踏切はないのに住民が生活道路のように線路の上を渡るいわゆる「勝手踏切」。
広島市とJRは、去年、死亡事故があった2カ所の勝手踏切の封鎖に向けた手続きを進めていますが、ある『ハードル』を超えなければならず、時間を要しています。
危険なのに対策には時間がかかる…その実状を取材しました。

【広島市安佐南区祇園の自治会長】
「市のほうから頂いてですね」

安佐南区祇園の自治会長が見せてくれたのは、広島市から渡された、『勝手踏切の封鎖』を知らせる書類です。

その勝手踏切は、住宅街の中の細い歩道の先にありました。
警報機や遮断機はなく、歩道と線路を隔てるフェンスがこの場所だけ途切れていて、簡単に立ち入れるようになっています。
去年10月、この勝手踏切を渡っていた男性が、列車にはねられ死亡する事故がありました。
事故以降、通る人は少なくなったものの、いまも『近道』として利用する住民は多いといいます。

【安佐南区祇園の自治会長】
「市とJRから説明があって、そこを封鎖するような形でフェンス設置するような感じなんですが」

Q:封鎖する事への受け止めは?
「やむを得んのじゃないですか?また同じような事故があってはいけないのでね」

この事故の半年前には、安佐南区緑井にある別の勝手踏切でも死亡事故が起きました。
広島市とJR西日本は、事故があった2カ所の勝手踏切について封鎖に向けた手続きを進めていますが、ある『ハードル』を超えなければならず、時間を要しているといいます。

勝手踏切は、古くからあった「里道」と呼ばれる生活道路にあとから線路が敷かれてできたケースが多く、封鎖するには、里道に隣接する土地の所有者や、地区の自治会長の同意が必要となります。

【勝手踏切近くの住民】
「ここに来て40年くらい…40年以上か(そのころから?)勝手踏切?あったよ。当然ね(封鎖は)理解はできるが、やっぱり生活道路みたいなもんじゃけえ。半分はね」

長年、生活道路として利用されてきた勝手踏切。
広島市とJRは、『地元の同意』というハードルを丁寧にクリアしながら、手続きを進めています。

まず、勝手踏切の近くの住宅を戸別訪問し、封鎖の同意書に署名してもらった後、地区の自治会長に承認を得るための協議を行い、勝手踏切の近くに封鎖を知らせる看板を立てて周知したのちに、ようやくフェンスを設置するなどの具体的な対策を取る事にしています。

勝手踏切のすぐ近くの住民は、市とJRが自宅に来て、封鎖への同意を求められたといいます。

【勝手踏切近くの住民】
「『封鎖することに賛成するか』ということで、もちろん賛成なんですけど、やっぱりね。いろんな不幸があったりしたから、封鎖のほうがいいですもんね」

【放課後児童クラブの職員】
「線路に興味を持っている子どももいる。あそこはちょっと怖いなというところで、必ず見守りを登下校の時は絶対に立つというので徹底させてもらっている」

Q:封鎖に関しては?

「大賛成。僕たちとしてはやっぱり何か起きてからでは遅いので」

住民の多くが封鎖に理解を示した事もあり、「祇園の勝手踏切」は、今年9月中にフェンスが設置される見通しです。

【広島市・松井一実 市長】
「地域の方々、関係する方々の了解のもとで、これまでの慣例というか取り扱いを変えていこうという事が成果に結びついたと考えている」

一方、去年4月に死亡事故があった安佐南区緑井の勝手踏切は、通行する人が多いこともあって自治会などの承認を得るのが難航し、事故から1年以上経った今も封鎖のめどは立っていないという事です。

県内には中国地方では最多となる544カ所の勝手踏切があり、JR西日本は、自治体や地元住民と封鎖に向けた協議を進めたいとしています。
生活に密着した存在である一方、危険性もはらんでいる勝手踏切。
地元の同意をどう得ていくのか?対策の難しさが浮き彫りとなっています。

<スタジオ>
生活に密着している分、同意を得るのが難しいということですが、やはり安全第一というところは意識したいですね。

【コメンテーター:広島大学法学部長・吉中信人教授】
「勝手踏切は法的には踏切ではないんですね。昔からあったんですけれども、やっぱり粘り強く説得して早くこういったところをなくしてほしいですね」

事故が起きた当時取材した記者によりますと、いざ目の前に立ってみると踏切の音が結構聞こえないということで、急に電車が来る印象があったということです。本当に子どもとか危ないですから、しっかりと理解を得ながら進めていってほしいなと思います。