株式会社 オフリバ(山口県)
眠る漁船に、命を吹き込んだ元消防士の挑戦
高齢化や後継者不足により、いま全国の港で増え続ける“動かない漁船”。そんな中、ある元消防士が、誰にも使われなくなった漁船に再び命を吹き込もうと立ち上がりました。目指したのは、漁船を一般の人が楽しめる“シェアリングボート”としてよみがえらせる、かつてなかった仕組み。なぜ実現できたのか? そして、その前例のないビジネスモデルとは? 今回は、港町の未来を動かすカンパニーのそ~だったのか!に迫ります。
山口県の周防大島町の港に浮かぶ使われなくなった漁船を蘇らせるため、2025年、「オフリバ」を設立した松永浩行さん。生まれ育った港町には、誰にも使われていない漁船が港に浮かんだままになっていたのです。船を処理するには数十万円の費用がかかってしまうため、多くの船が港に置かれたままに。この現状を打開しようと、一般の人が気軽に乗れる「シェアリングボート」として、漁船を蘇らせることにしたのです。しかし、これまでにない取り組みに、すぐに協力してくれる漁師はいませんでした。松永さんは、使われなくなった船を持つ漁師を説得するため、顔を合わせ語り合い、時間をかけて漁師たちとの信頼関係を築き上げていったのです。そして、1隻、また1隻と、協力してくれる漁船を増やしていったのです。
これまで誰も手をつけていなかった「漁船を再活用する」取り組み。頼れる人も、前例となる成功モデルも何ひとつありませんでした。準備は着実に整っていく中で、最後まで立ちはだかっていたのが、法律の壁。漁船に一般の人を乗せるというスタイルのサービスが、どの法律に該当するのか。そこで、松永さんが活用したのが「グレーゾーン解消制度」でした。これは、前例のない新たな事業を進める際に、法律に違反しないかどうかを国の関係機関へ照会できる制度。利用開始から約1年後、国から「この事業に違法性はない」という正式な回答がきたのです。使われていない漁船を所有する人と、漁船に乗って海を楽しみたいという一般の利用客を、ホームページやSNSを通じてマッチング。運航は現地の漁協を通じて実施される仕組みで、利用料の一部が漁師や漁協に還元され、動かしていない漁船が新たな収入源”になっているのです。