【全文】広島県知事挨拶「核による脅し、先制攻撃も厭わない考え方が核兵器使用のリスクを高めている」

8/6(木) 08:43

■令和8年広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式 広島県知事挨拶

被爆81年を迎えるにあたり、原爆犠牲者の御霊(みたま)に、広島県民を代表して謹んで哀悼の 誠(まこと) を捧げます。そして、今なお、苦しみの絶えない被爆者や御遺族の皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

水辺に囲まれた、美しい広島のまち。81年前、原爆投下による凄惨な現実がここにありました。
強烈な威力は、一瞬にして多くの人々を焼き、建物や生活基盤を破壊し、太陽を遮りました。その年のうちに14万人の方が亡くなり、その後も多くの方々が命を落としました。

生き延びた被爆者も、受けた傷や放射線による影響、そして心の傷を抱えながら、苦しみ続けておられます。昨年の被爆80年に、「戦争がどんなに悲惨なものか、子供たちにどうしても知ってほしい」と、初めて言葉を絞り出した被爆者。「生き残ったことも地獄」と多くの方々が、語ろうにも語れない体験をされてきました。

被爆者の言葉、そして声にならない思いに、私達は真摯に耳を傾けなければなりません。

核兵器により全ての人を傷つけ、全てのものを破壊することに、何の意味があるのでしょうか。
核抑止力への依存が、今なお、世界の安全保障政策において大きな位置を占めていることに、悲しみと怒りを感じざるを得ません。核による脅し、先制攻撃も厭わない考え方、それによる核武装の強化が核兵器使用のリスクを高めています。核抑止は核兵器を使用することを前提にしない限り成り立たず、各国の不信や軍拡競争を助長し、世界を不安定化させるという根本的な矛盾をはらんでいます。核抑止力を求める
こと自体が新たな戦争を引き起こしている現実を直視し、核抑止から脱却すべきです。

人は皆、平和に安全に生きたい。その願いは人類共通のものです。私たちは対立を超えて助け合い、共に豊かになる道を歩むことはできないのでしょうか。

ある被爆者は「終戦直後、あのときほど人々の優しさ、温かさを感じたことはありません」と語っています。
原爆投下直後から、救援のために多くの人々が広島市内に入り、自ら被爆しながらも廃墟の中にあって、失われた命や九死に一生を得た人々に寄り添い支えました。人間同士が支え合う精神が信頼と希望の灯を点し、復興を前に進め、今のこの広島があります。

今、世界に求められているのも、対立や暴力ではなく、信頼と協力によって平和を築いていく、この精神です。不信と憎悪を乗り越え、国家間だけでなく、人と人とのつながりにより、対話と協力による安全保障を実現し、誰もが人間らしく暮らしていける世界を築いていくために、世界のあらゆる叡智を集めなくてはなりません。
今年亡くなられた被爆者・森重昭さんは、「原爆の悲劇に国境はない」と訴えられました。核兵器が傷つけるのは、特定の国民ではありません。そこに生きるすべての人々、そして未来の世代までも深く傷つけます。

人類と核兵器は、共存できません。
核兵器を無意味なものに変える行動を世界のリーダーに、そして世界の皆さんに求めます。
核兵器を廃絶するために、共に行動していきましょう。広島県は、これからも被爆地の声を世界に届け、核兵器のない平和な世界の実現に向けて行動し続けていく事をここにお誓い申し上げ、平和へのメッセージといたします。

令和8年8月6日
広島県知事 横田 美香


「終戦直後、あのときほど人々の優しさ、温かさを感じたことはありません」国立広島・長崎原爆死没者追悼平和祈念館平和情報ネットワークにおける能見 孝子氏の被爆体験記から引用して要約
( https://www.global-peace.go.jp/taikenki/index.php )
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