【注目の書籍】『こちらはただの落とし物係です!』 舞台は広島南警察署! 作者の思いに迫る!

6/22(月) 18:38

去年、反響を呼んだ書籍。
「こちらはただの落とし物係です!」。
その舞台は広島南警察署です。
物語の中に、なじみ深い地名が出てくることでも話題となった注目作の作者に迫りました。

【作家・仁科裕貴さん】
「旧広島南警察署がこちらになるんですけど、当時と全く変わらずぼろぼろのままたぶん雨漏りとかしてる、あそこにちょうど南警察署ってつけられた看板の名残がちょっと残っている」

広島市南区の片隅に佇むかつての広島南警察署。
感慨深く見上げるのは広島出身の作家・仁科裕貴さんです。
『こちらはただの「落とし物係」です!』。
去年、話題のミステリー小説として注目されたその作者です。
読者を惹きつける作品自体の魅力に加え、広島県人にはなじみ深い地名がたくさん出てくることでも注目されました。

【作家・仁科裕貴さん】
「構造上のトリックを今回は用いたいなと思ったのがあって、基本ミステリーって序盤から様々な伏線を張ってそれが最終的に1点に収束してびっくりさせるっていうところが一番面白い部分」

小説の舞台は警察署。
でも、一見派手ではない身近な場所を選びました。

【作家・仁科裕貴さん】
「一般人が触れ合える機関って遺失物係くらいしかないと思うんですよね。誰しも一度は落とし物を届けたことがあると思うので、一番メジャーな親近感のある部署にしようと」

物語は毎日のようにやってくる落とし物の数々を管理する「落とし物係」の音無遠子と、警察官の鳴上がコンビを組んで次々に起こる不可解な事件を解決していきます。

【作家・仁科裕貴さん】
Q:行政職員を選んだ理由?
「一つには、普通に腕利きの有能な刑事が普通に事件を解いてもつまらないじゃないかと。
一風変わった警察ものを書きたいという気持ちがあったのと」

作家としてありきたりなものは書きたくない。
日常の中に仁科さんは、そのヒントを見つけたといいます。

【作家・仁科裕貴さん】
「道端に落ちている落とし物を、その場にあると車に轢かれたり誰かに踏まれたりするし、かといって交番に届けるのもちょっとめんどくさいっていうときに、その辺の木の枝とかフェンスとか看板とかに、落とし物拾っておいておく。なんでこの状況が生まれたんだと推理するというところから。散歩はいいです、散歩はね」

幼稚園のころから小学校受験のため塾に通い、毎日勉強ばかりで娯楽を常に求めていた仁科さん。

【作家・仁科裕貴さん】
「もうすぐ修道が見えてきますけど」

現実から逃れ、物語の世界に没入したい高校時代には今につながる思い出深いある出来事が…。

【作家・仁科裕貴さん】
「僕も例にもれずいたずらっ子だったんで、反省文をとにかく出した。毎日書いていましたね。作文が得意だったのでこだわるんですよ。文章に。そしたら怒られてる先生に『お前文章うまいな』っていわれるんですよ。それがうれしくてまたいたずらする」

大学に入学したころから本格的な小説を書き始め、新人賞に出品するなど小説家としての将来を見据えていましたが結果が出ず、就職の道を選択しました。

それでも作家の道は諦めたくない…。

【作家・仁科裕貴さん】
「とりあえず働くんであれば(小説の)ネタになるようなところでいいんじゃないかということで警察を選びました」

小説を書くために選んだのは警察という仕事。
奈良県警の交番勤務で強盗犯を捕まえるなど成果を認められ、国家の安全を脅かす犯罪やテロを未然に防ぐ「公安」の部署に勤務した時期もありました。
しかし…。

【作家・仁科裕貴さん】
「すごくしんどい仕事ではあったし、精神的にもだいぶつらい仕事ではあるんで、これを一生続けるんかなっていうのも考えると、小説家って楽そうだなってずーっと思っていましたね」

気楽に思っていた小説家生活を本気で目指したい。
退路を断ち、作家として歩み始めた仁科さんが物語の舞台として選んだのが、中学から高校まで見慣れた通学路にあった広島南警察署でした。

【作家・仁科裕貴さん】
Q:南署を舞台にした理由?
「僕が中学生、高校生過ごした頃の思い出の地というか。だいたいあの辺で遊んでいたんですよね。修道に通っていたので、修道から御幸橋渡ってすぐのあたりが南警察署なんですよね。自転車通学だったので、登下校に必ず通る場所だったので、あそこを舞台にしようという感じですね」

しかし、警察小説は男性読者のイメージが強いため、仁科さんはこの作品で女性読者を意識しました。

【作家・仁科裕貴さん】
「やはり普通の警察小説じゃだめだとと思って、お仕事小説。キャラクターは今回女性読者を取り込みたいという思いから、結構能動的に自分から動く女性をメインに据えようと。結構尖っているうちの嫁さんをモデルに書きました」

一方、モデルになった本人は…。

【妻・直子さん】
「キャラがそんなに強烈だったのかなと思って」

妻の直子さんとは、執筆を行うための自習室の利用者と自習室の経営者として出会いました。

【作家・仁科裕貴さん】
「本が出るたびに新刊を持ってきてくれて、持ってくるたびにちらっと会話して」

デビューしたころから作品は欠かさず読み、直子さんは仁科さんの生み出す文章に魅了されました。

【妻・直子さん】
「まず文章が美しい。心情描写が素晴らしくて背景描写がまた素晴らしくて、読んでいると映像が目に見えるような物語を書くので…。すごいなと思っていましたね」

仁科さんにとって、創作活動の中で大きな支えになっている一番の理解者です。

【作家・仁科裕貴さん】
Q:遠子は妻、鳴上は?
「僕です。昔の。悪い刑事だったころの僕です」

そんな、仁科さんがいま取り組んでいるのは『こちらはただの「落とし物係」です!』の続編です。

【作家・仁科裕貴さん】
「大変です。どこまで書いていいのか…。ご当地色強めで2巻もお送りいたします」

仁科さんが生み出す広島で起こる不思議な物語は、これからも広がりをみせそうです。