芸備線のジオラマで勝負「鉄道の甲子園」 広島城北高校の熱い夏に密着 全国176校、3度目の栄冠目指す

8/19(月) 21:00

FNN近畿・中四国各局のシリーズ企画「夏よりアツい」をお届けします。
今回は広島から。夏!といえば甲子園ですが、夏は野球だけではありません。
『鉄道の甲子園』ともいわれる大会へ参加する生徒たちに密着しました。

本物かと見まがうほど精巧に作りこまれた駅舎や…メルヘンの世界にどっぷり浸れる鉄道模型。
今月2日から、東京で開かれた「全国高等学校鉄道模型コンテスト」には、176校が参加し、模型作りの技術を競い合いました。

「これはね、広島県の芸備線」
「あー、はいはい」
「ここね、廃線になるかみたいな」

この大会に出場した広島城北高校鉄道研究部。
彼らの熱い夏に密着します。
広島市東区にある広島城北中・高等学校。
1961年創立の中高一貫の男子校です。
体育館の一室に鉄道研究部はあります。
部室の中には、駅名標から製造銘板などなど鉄道に関するものがずらり…同好会時代も含めると30年以上の歴史があります。
放課後ともなると…

【部員】
「宮原、宮原。行ってみる?あった。わー!サロンカーおる」
「えー!見たい見たい」
Q:車両基地見るのが楽しい?
「レアな列車がとかいたら嬉しいみたいな」
「普通に現地に行って、奥まで見れないところを見ることができるので」

こうして鉄道車両を見たり、模型を操作したり…夏休みには鉄道で旅したりと、中学生から高校生まで総勢45人の部員たちがそれぞれの楽しみ方で部活動が行われています。
部を代表して、鉄道模型コンテストに参加するのが、高校一年生の藤附くん、竹本くん、温水くん、そして中学3年生の品川くんの4人です。

Q:どこのジオラマを作ろうとしてる?
「備後西城駅があって、その駅の近くに西城川があって、そこを渡る芸備線の線路ですね」

ジオラマの舞台は、岡山県新見市から広島市を結ぶ芸備線。
その中でも、備後西城駅付近の有名な撮影スポットです。
鉄橋と昔ながらの古い町並みが郷愁を感じさせます。

【広島城北高校鉄道研究部1年生・温水宥斗くん】
「ここがもともと撮影地として結構、有名なんですよね。それで見て、結構美しいなって思って。芸備線は今(存続の)危機に立たされているので、ジオラマを通して少しでも芸備線の魅力を知ってもらいたい」

ジオラマの一番の見せ所は、中央を流れる西城川。
リアルさを追求するため、芸備線に乗って現地の下見も行いました。
忠実に再現できるよう、制作していましたが…

【広島城北中・高校 鉄道研究部・奥迫勇治顧問】
「川は強く流れるところは、葉っぱなんか生えないわけよ。だけど、端っこって土とかが残ったり、水も少ないから、草が生えっちゃう。川をちゃんと考えるんなら、端に、草がないとリアリティーがない」
「はい」

およそ5カ月かけて制作。
会場への発送を考えると残り10日です。
まだまだ課題は山積み。
西城川に草むらを作り、リアリティを追及する人。
ジオラマに配線を巡らせ電飾を担当する人。
部員たちがそれぞれのパートに分かれて、ジオラマは少しずつ完成に近づいていました。

この日、東京の大会へ参加する4人が向かったのは…

「2重、これ下にやっとんやな」
「本当やな」
「建物の。しかもなんかストローで覆ってある」
「うわー、すごいな」

校舎の入り口、一番目立つ場所に飾られた原爆ドーム周辺と、坂の町・尾道のジオラマです。
実は広島城北高校は2016年と2019年に文部科学大臣賞を獲得し、日本一の栄冠に輝きました。
大会を目前に控え、偉大な先輩たちのジオラマから、何か得ることはできたのでしょうか?

「細かいところの作り込みが、なんかもう全然違うっていうか」
「例えば、この柵のところも紙で一本一本を全部作っていったって、聞いたんですよ。そういうところがもうすごいなと思います」
「建物の照明が明るすぎない感じで。ストローでちょっと覆ってあって明るさを調節しているので、そこは見習いたいなと」

この日はジオラマの中央に位置する川に、色を付けた液状の樹脂を流しこみ、川の水を作りこみます。
固まる前に樹脂が漏れ出せば、すべてがまさに水の泡。
川の底は石膏で、川を囲う板とのつなぎ目は粘土でがちがちに固めました。

「あとは横から漏れないように祈れ」
「ちょっとこっち側の新聞見といてよ。新聞紙にたれてないか」

準備の甲斐あって、樹脂が漏れ出すことは無く、この後も、水面に波を立たせたりと、発送ギリギリまで作業は続きました。

【鉄道研究部顧問・奥迫勇治教諭・生徒・記者】
「これ好きな切符とって、はい」
Q:何で行くの?
「サンライズ出雲号ですね」
Q:寝台特急?
「寝台特急です」

新幹線ではなく、夜行列車を選ぶところが鉄道研究部らしいですねえ。

【広島城北高校鉄道研究部1年生・温水宥斗くん】
「いってきます!」

元気に行ってらっしゃい!
そして迎えた全国高等学校鉄道模型コンテスト。
大会は3日間に渡って行われ、模型の出来だけでなく、ステージでのプレゼンテーションも評価の対象です

「これなんですか?」
「あのスイッチバック」
「スイッチバックですか?」

来場者も趣向を凝らした鉄道模型に興味津々。
176の参加校が自慢のジオラマを説明します。

そして居ました!我らが、広島城北高校鉄道研究部!
芸備線のジオラマはどのような姿になったのでしょうか?

【温水宥斗くん・記者】
Q:出来た?
「はい、出来ました。川は非常に満足のいく出来かなと思います」

彼らがエントリーしたのは、幅90cm、奥行き30cmの規定のなかで情景を表現するモジュール部門です。
ジオラマ中央の西城川には川の流れを作り、鮎釣りをする人まで配置。
古い街並みや鉄橋もとてもリアルな仕上がりです。
中学3年生の品川くん、来年は中心メンバーを担います。
気になる模型があるようで…それが初出場『尾道高校』の尾道の街並みを舞台にしたジオラマです。

【広島城北中学校品川くん・尾道高校 工業研究部 渕山京平さん】
「渡船はどうやって作ったんですか?」
「こちらは3Dプリンターで作成しています」
「建物とかも3Dプリンターで作ってあって塗装であったり、建物の形とかがすごいきれいでいいなと思いました」

熱い!来年の大会に向け、早くも研究です。
全国から176校が参加した大会もいよいよ大詰め。
大会3日目の最終日には、最優秀賞が発表されます。
広島城北。
プレゼンで最後のアピールを行います。

【プレゼン】
「今回再現した場所は広島県北部の庄原市に位置する備後西城駅近くの街とその周辺です」
「今回の作品の見せ場の一つである川は西城川の流れをできるだけリアルに再現しています。実際の模型と写真と動画を比較し、石の配置や川面に立つ白波を丁寧に表現しました」

全国高等学校鉄道模型コンテスト。
最優秀賞の栄冠を手にするのは?

「最優秀賞は白梅学園清修中高一貫部です。おめでとうございます」

5年ぶりの最優秀賞奪還とはなりませんでした。

「おめでとうございます」
「ありがとうございます」

最優秀賞の作品は、『「ようきてくれんさった」垣間見る岐阜』。川と柳、古き良き日本の風情を表現しています。
目標には届きませんでしたが、広島城北高校はベストリアル情景賞を受賞しました。

【広島城北高校鉄道研究部1年生・温水宥斗くん】
「部員たち全員で作り上げた作品だったのでそういう風に評価されたというのはいいことかなと思います。たぶん芸備線を知らない人がほとんどだったと思うんですけれども、思いを馳せてくれたので存在を知ってもらうだけでもすごい良かったかなって思います」

およそ5カ月かけ、鉄道研究部の部員一丸で作り上げた芸備線の鉄道模型。
制作にかけたその熱い思いは、これからも後輩たちへと受け継がれていきます。