障がい者の作品を社会に発信 新たな事業に奮闘する女性 障がい者と社会の架け橋に

5/17(金) 20:30

県内の障がい者のアート作品を発信する事業が今、注目されています。
障がい者と社会をつなぐ取り組みが生み出す、新たな可能性を取材しました。

県内の福祉サービス事業所で作られた商品。
これらは、事業所に通う障がいのある人が手がけたものです。
そんな商品を社会に発信しようと活動する人がいます。
佐々木恵理子さんです。

【KONKON・佐々木恵理子さん】
「きょうは4つ報告があって来ました。以前報告した会社の広島本社で本田さんの作品を展示してましたが、これが終了しました。売り上げの6千600円をきょうお持ちしました。素敵な作品を貸してくれてありがとうございました」

佐々木さんが取り組んでいるのは、事業所の商品と社会をつないでいく活動です。
県内外の企業への卸売りを担当したり、イベントなどでの小売りや、独自のウエブサイトでの販売もしています。

さらに、3年前には、障害のある人が描いたアート作品を貸し出す取り組みを始めました。
佐々木さんが仲介して作品を貸し出し、レンタル料が描いた人に支払われるシステムです。
もともと、福祉の世界とは無縁だった佐々木さんには、ある出会いがありました。

【KONKON・佐々木恵理子さん】
「すごくかわいい商品があって、かわいいと思って手に取って裏側に書いてあるURLを検索したら福祉事業所で、そこがギャラリーも持っていたので見学に行ってというのがきっかけです。こんな素敵なアートが生まれていることに心を動かされて福祉に入ってきました」

福祉事業所で働き始めた佐々木さんは、そこで事業所の現実を知ります。

【KONKON・佐々木恵理子さん】
「福祉的な仕事をするだけでも職員はすごく忙しいので、ものを作るのは(事業所の)利用者と一緒にできるが、販売するとか宣伝するという時間は(職員が)勤務時間内に取るのはすごく難しいということを身をもって感じました」

佐々木さんは事業所を退職して、作品と社会をつなぐ会社「KONKON(コンコン」)を立ち上げました。

この日、事業所では、週末のイベントで販売する商品の準備が行なわれていました。
利用者の石澤美穂さん。イベント会場で、グッズの販売を担当します。

伊世伸一さんは体に障害があり、みんなと同じ作業はできませんが、得意のパソコンで商品の管理をしています。伊世さんも販売スタッフの一員です。

イベントで販売するのは、オリジナルのTシャツです。
シャツのデザインは、事業所の利用者が描きました。
年に1回、希望者が参加して開かれる展覧会。
今年は百数十枚の作品が描かれました。
その中から、Tシャツのデザインが選ばれます。

【利用者・石澤美穂さん】
「Tシャツは絵にみんなの思いとか、こうなってほしいという思いもあったりする」

これまで採用されたデザインは50作品近くあります。
この事業所では、利用者さんの描く作品のアートとしての可能性を大切にしてきました。

【利用者・石澤美穂さん】
「これ以外にも『平和Tシャツ』があるんです。平和の願いを思って書いてもらっている」

このTシャツは今から34年前、湾岸戦争の時に作られました。
ニュースで伝えられる戦場の映像を見て、利用者さんたちが「自分たちにできることはないか」と考えて、平和の大切さを伝えるTシャツを作ったのが始まりだったと言います。

週末のイベントで販売を担当する、石沢さんと伊世さん。
コロナ禍以来、久しぶりの対面販売です。

【利用者・伊世伸一さん】
「イベントで直接お客さんと触れ合うことがすごくうれしいです」
Q:楽しみですか?
「はい楽しみです」

客と触れ合うことは、働く人たちにとって大切なことです。

【利用者・石澤美穂さん】
Q:喜んでくれると頑張ろうと思う?
「仕事のやりがいがある」
Q:楽しみ?
「雨が降らなければいいとずっと思っていた」

たくさんの人の様々な思いが込められた作品。
佐々木さんがこだわるのは、作る人たちの魅力の発信です。

【KONKON・佐々木恵理子さん】
「必ず裏にQRコードを付けるようにしていて、ここを読み取ってもらうと私が取材した記事に飛ぶようになっています」

福祉事業所には、障害がありながら様々な特技を持った多くの人たちがいます。
商品1つ1つには作った人たちの思いがこめられています。

【KONKON・佐々木恵理子さん】
「この商品たちって、これをきっかけに作っている人たちのことを知るための媒体だと思っているので、これが拡がっていくことで作っている人を知ってもらう人が増えて、みんなが生きやすい社会につながっていけばいいと本気で思っています」

みんなが楽しく生活できる社会は、みんなにとっていい社会に違いありません。
佐々木さんの作る障がい者と社会の架け橋は、みんなが平等に生きる世界の実現に向けて、新たな可能性を広げ始めています。