「マツスタや甲子園で試合したい」桜が丘、修大協創高校が高野連に加盟 がむしゃらにボール追う球児たち

3/15(金) 07:00

毎年、汗と涙の結晶が詰まった熱い戦いが繰り広げられる高校野球ですが今、全国的に部員が減り続けているのが現状です。

そんな中、16年ぶりに今年、広島県高野連に加盟する2つの高校があります聖地・甲子園を目指しがむしゃらにボールを追いかける、選手たちの思いに迫ります。

<練習の様子>
「もう一本お願いします!」
土まみれになっても何度も白球に食らいつく野球部員。
広島市東区にある「桜が丘高校」の硬式野球部の選手たちです。

【桜が丘高校 硬式野球部 安部 良亮 監督】
「練習も嫌な顔をせず一生懸命やっています。言われたことをまずやってみて、彼らなりに考えてやっている」

実はこのチーム、秋まではゴム製のボールでプレーする軟式野球部として大会に出場していました。

【1年・天野 輝くん】
「軟式と全然ちがいますね。(ボールの)跳ね方が、軟式と違って跳ねなかったりする」

なぜ彼らは今、硬式ボールを追いかけているのか…

遡ること1年前、部員から「マツダスタジアムや甲子園でプレーしたい」といった声が挙がり、軟式から硬式への変更を学校に願いでました。

【桜が丘高校 硬式野球部 安部 良亮 監督】
「生徒が主体で今回、硬式野球部になりたいということで、この学校で軟式野球部から続けていることを継続して新たなものを作れたらなと感じました」

【1年・平井 湊くん】
Q:硬式と軟式どっちがやりたかった?
「硬式の方がやりたかった。レベルが高いところで対戦してみたいなという思いがあった」
Q:憧れの場所は?
【1年・天野 輝くん】
「甲子園です」
【1年・平井 湊くん 】
「甲子園です」

バッティング練習ではテニスボールを使うなど安全面を考慮することを条件に部の変更が承認されました。

【1年・吉田 恵一くん】
「硬式野球になると決まった時に”よっしゃ!硬式野球部決まったー!”ってなりました」
Q:それくらい嬉しかった?
「はい」

そして先月、広島県高野連の理事会で硬式野球部として加盟することが正式に承認されました。

【桜が丘高校 硬式野球部 安部 良亮 監督】
「野球を通じて学ぶ人間関係であったり、コミュニケーション能力であったり、自信を持ってもらうことを頑張ってもらいたいと思います」

県内の高校が高野連に新しく加盟するのは、2008年以来、実に16年ぶりです。
しかし県内の硬式野球部員数の推移を見てみると、少子化などによってピークだった10年前を機に年々減少。
今年度は10年前よりおよそ800人少なくなりました。
野球人口が減っているなかで全国的にも珍しい新しい加盟校の登場。
県高野連も高校野球を通して人間力を高める機会にしてほしいと期待を寄せます。

【広島県高等学校野球連盟・折田 裕之 会長】
「ここ10年は下降の一途をたどっていたので大変うれしく思っている。教育の一環というのが高校野球、野球を通して人間性を磨いていくところが必要だと思う」

今回、新たに承認されたのは桜が丘高校だけではありません。

固いコンクリートの上で黙々とバットを振る子どもたち。
去年4月に創部したばかりの「広島修道大学ひろしま協創高校」の硬式野球部です。
2019年に女子校から男女共学になり、生徒を確保し学校を盛り上げるきっかけにしようと野球部を創部しました。

【修大協創高校・硬式野球部 谷口 直哉 監督】
「最初はボールもない状態で12球ほど寄付していただいた形で、12球を大切にずっと使わせてもらって、汚れたら部員と一緒に消しゴム使って汚れを落とすところから始まりまして」

学校に野球部の専用グラウンドはなく、他の部活と練習場所を共有しながら、1年生部員5人が日々、練習に励んでいます。

なぜ新設のチームを選んだのか…選手たちの思いは様々です。

【1年・砂連尾 寛大くん】
「一期生っていうものに憧れて、一から始めてみたいと思ってきました」
【1年・主将 加藤 幸誠くん】
Q:なぜこの学校にした?
「僕は強豪校っていうよりはこの一から歴史を創るとか伝統を創るっていうのに魅力を感じてここにしました」
【1年・小川 隆太郎くん】
「他の学校で野球をやるという選択肢もあったんですけど、監督さんに憧れて入った」
【1年・常盤 大空くん】
Q:監督はどんな人?
「監督さんは熱がすごい方で、僕たちと野球が目いっぱいしたいという気持ちがあふれている」
【修大協創高校・硬式野球部 谷口 直哉 監督】
Q:一期生はどんな子たち?
「一生懸命で素直な子が揃ってます。だから私自身が出来た指導者じゃないんですけど、子どもたちが一生懸命頑張ってくれるから、なんとかここまでやっています」

<練習の様子>
「いけいけあげろあげろ」「おっしゃー」

限られた環境のなかで知恵を絞って練習に取り組む選手たち。
しかし、この1年間、高野連に加盟していなかったため、規則により他の高校と試合をしたことはありませんでした。

【1年・主将 加藤 幸誠くん】
Q:中学時代のチームメイトで試合に出てる子もいる?
「います」
Q:うらやましいと思うことある?
「それは思います」

暑い日も寒い日もめげずに厳しい練習と向き合ってきたからこそ、今回の加盟はチームの念願でした。

【1年・常盤 大空くん】
「一年試合がないままやってきたので、やっと試合ができる楽しみな感じもあって、それとやっぱ高野連に入ったっていうので、本当の高校球児として見られるっていうのがあるので、しっかり行動や言動に責任を感じて日々頑張っています」

さらに4月には10人ほどの新入生が入部する予定。
先輩となる一期生は闘志を燃やしています。

【1年・吉永 京介くん】
「下の世代もすごい子が入ってくると思うんですけど、自分は1年間下積みで色々やってきたので、負ける気はあんまりないです」

【修大協創高校・硬式野球部 谷口 直哉 監督】
「やっぱり野球ができる嬉しさっていうか、野球ができることにすごく感情が一気に雲が晴れたような気持ちになった。当然、勝ち負けもあるんですが、それ以上に一期生の子どもたちと野球の試合ができるっていうことで、大変楽しみにしています」

夏の広島大会が公式戦デビューとなる両チーム。
聖地・甲子園を目指し、がむしゃらに白球を追いかける広島の高校球児の姿に今後も目が離せません。

<スタジオ>

安部さん、球児たちと監督の熱意、どう受け止めました。
【元・広島東洋カープ 安部友裕さん】
「高野連に加盟した2校、本当に部員、野球人口減ってる中で嬉しいですし、こうやって誰かがここで監督に憧れたりするっていうのもね。非常に嬉しいことです。この球児たちの今後の活躍に幸あれって感じです」
【新川 美佐絵さん(JICA中国)】
「昔JICAの職員がアフリカで子供たちに野球を教えたときに、バッターボックスに立てば敵も味方も観客も1回はみんな自分を振り向いてくれる。野球は必ず1回はヒーローになれる世界で一番民主的なスポーツだって言ったらしいんですよ。いろんな角度から野球の魅力を再発見していきたいです」