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「この建物を見ると胸が詰まる…」”物言わぬ証人”に託す被爆者

07/30(木)  19:40 掲載

シリーズ「被爆75年」。今回は、これまで語らなかった被爆体験を語り始めた90歳の被爆者を取り上げます。彼女が思いを託したのは、被爆建物でした。

広島市安佐南区に住む切明千枝子さん。90歳。切明さんは、今平和が脅かされていると感じています。
【被爆者・切明千枝子さん】
「なんとなく肌ざわりというか空気というかそれがとても戦前に似てきたような気がして、黙ってしまったら、同級生や下級生が無残な死に方をして死んでしまったことがまた再び起きるんじゃないかなという。あーやっぱりこれは話しておかなきゃいけないんだわと思って」
ずっと忘れたいと思っていた75年前の記憶。それはまるで昨日のことのように、鮮明です。
【被爆者・切明千枝子さん】
「私が被爆したのはこの辺です」
切明さんは爆心地から1.9キロ、広島市南区の比治山橋のそばで被爆しました。あの日、15歳の切明さんは学徒動員先の作業で足を痛め、一人で病院へ向かっていました。
【被爆者・切明千枝子さん】
「ここ渡るのに本当に長いんですよ橋が。それで足は痛いですしね。少し影があったの、建物の軒下に入って汗を拭こうと思って入った瞬間だったですね、ぴかっと光ったのは」
地面にたたきつけられ、気を失った切明さん。気が付いたときは倉庫の下敷きになっていました。やっとの想いで抜け出し目にしたのは、さっきまでとは全く違う世界。
【被爆者・切明千枝子さん】
「カンカン照りだったのにあたりが真っ暗なの。ひょっと橋の向こう側を見たんですよ。対岸が真っ黒い煙がわっとったって大火事になっているの。もう沢山の人がぎゃーって悲鳴をあげながら逃げてくるんですよ。熱いからたまりかねて飛び込むんですよ、川へ川の中を見たら人がいっぱい、おぼれている人もいれば、生きているか死んでいるか分からないけど流れて行ってしまう人もいれば、それは地獄でございましたね」
広島の平和な街並み。しかし、切明さんは、目の前のビルがお墓に見えると言います。一体、何人の骨がまだこの下に眠っているのだろうか。だからこそ、90歳の今、呼ばれれば、精力的に被爆体験を伝えます。
【被爆者・切明千枝子さん】
「あのことがなかったことにされてしまったらあまりにもかわいそうと思ってね。やっぱりちゃんと伝えておかなきゃいけないはというのでね」
原爆症を患い、その後も4度の手術を乗り越えた切明さんですが、先月、体調を崩し寝込んでしまいました。回復した今は、いつも「今日が最後」と思って、証言活動に臨みます。
そんな切明さんが特別な想いを抱く場所があります。「旧陸軍被服支廠」。100年以上前に作られた広島に残る最大級の被爆建物で今も原爆の影響を残します。ここは戦前、旧陸軍の軍服や軍靴の製造・貯蔵に使われていました。戦後、大学の寮や倉庫として利用されたのち現在、国が1棟県が3棟を所有し長年使われていません。
切明さんはそんな被服支廠のそばで育ちました。母親が、被服支廠で働いていたため、敷地内の保育園に通い幼少期を過ごしました。広大な土地に沢山の軍需品が納められ、軍が栄えた時代を見てきたのです。
【被爆者・切明千枝子さん】
「広島がただ単なる被害を受けた被爆地であるだけでなく、軍都広島であったこと加害の地であったことそのことをこの建物が私は物語っていると思うんですよね」
戦況が厳しくなると、学徒動員で被服支廠に通い、血で汚れた軍服を洗い、破れた所を繕ったりもしました。被爆したときは、大勢の人がここに逃げ込み臨時の救護所にも。
【被爆者・切明千枝子さん】
「辛い厳しいある意味切ない戦争の歴史をね。無言のうちにこの建物が語っているような気がするんですよね」
しかし去年末、県は、「老朽化し、地震で倒壊する危険性がある」として所有する3棟のうち、1棟を保存し、2棟を解体する方針を示しました。すると直後に反対の声があがり、今年2月に先送りを表明、それ以降、国会議員も視察に訪れ様々な議論をよんでいます。県の試算では外観保存に1棟4億円耐震化も含めた保存には、1棟33億円もの予算が必要です。
【平口洋議員】
「国としても十分保存する意義があると思う。銭金には変えられないと思いますね」
【被爆者・切明千枝子さん】
「この建物を崩すなんて思わないでこれを今度は平和の砦にしてね。戦争の時代のようなことが、2度とこないとようにね祈りのような願いも込めて、この建物を見ると胸が詰まるんですよ」
今後の行方を見守りながら切明さんは「物言わぬ証人」被服支廠と共にこれからも伝え続ける決意です。
【被爆者・切明千枝子さん】
「平和というものは黙って座っていたら向こうからやってきてくれるものではないやっぱり自分でたぐりよせてつかみとってそれを離さないようにしっかり大事に守っていく平和を守ることの大事さを叫び続けていかないといけないと思っている」

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