広島で被爆した南方特別留学生であり、その体験をもとに生涯にわたり平和の尊さを伝え続けた故ハジ・アブドル・ラザク・ビン・アブドル・ハミド氏(ラザク先生)の足跡を顕彰する平和をテーマにした展示室「RAZAK SENSEI Gallery(ラザク先生ギャラリー)」が、2026年8月6日、マレーシアのスルタン・イドリス教育大学(UPSI)国立教育博物館内に開館した。
被爆から81年を迎えたこの日、現地で開かれたオープニングセレモニーには、ラザク氏の長男で、RAZAK SENSEI Gallery開設の実現に尽力したマレーシア国際イスラム大学元学長のタン・スリ・ダト・ズルキフリ・アブドゥル・ラザク名誉教授をはじめ、四方敬之・駐マレーシア特命全権大使、スルタン・イドリス教育大学のモハメド・アミン学長ら国内外の教育者や研究者が出席し、広島とマレーシアを結ぶ新たな平和発信拠点の誕生を祝った。
ラザク氏は1945年8月6日に広島で被爆後、故郷であるマレー半島へ帰国。教育者として独立後のマレーシアにおける日本語教育の発展に尽力するとともに、ルック・イースト政策の推進を通じて日本とマレーシアの交流拡大に貢献した。また、自らの被爆体験を語り続け、核兵器のない平和な世界の実現を訴えた。ラザク氏の人生と平和への願いを伝えるRAZAK SENSEI Galleryは、被爆の記憶を未来へ受け継ぐ教育拠点として、マレーシアのみならず世界へ向けて平和のメッセージを発信していくことが期待されている。
オープニングセレモニーでは、被爆地・広島の放送局であるTSSテレビ新広島が制作したニュース「TSSライク!企画 マレーシア人被爆2世と被爆者との約束 母国に平和資料館を」(2024年2月13日放送)が紹介された。
英訳はアメリカ・アイダホ大学の協力によって行われ、テレビ新広島の平和推進企画「TSSアーカイブプロジェクト」公式サイトを通じて世界に向けて発信されている。
この映像では、広島で被爆した栗原明子さんとラザク氏との交流や平和への思いを紹介するとともに、ラザク氏の息子であり被爆2世のズルキフリ氏が、父の遺志を受け継ぎ、被爆体験を次世代へ伝える施設設立への思いを語る姿を描いている。
RAZAK SENSEI Galleryの開館は、広島で生まれた平和への願いが国境を越え、マレーシアの地で新たな形として結実したことを象徴する出来事となった。TSSアーカイブプロジェクトの公開映像は、今後、同ギャラリーで常設展示されるほか、スルタン・イドリス教育大学の平和教育教材として活用される予定である。ラザク氏が生涯をかけて伝え続けた平和への思いと被爆の記憶は、これからも国や世代を超え、多くの人々へ語り継がれていく。


