少子化が深刻化も、安心して産み育てられる町へ 昨年開院の助産院で初の町民出産 広島・神石高原町
7/18(土) 09:00
広島県の山あいに位置する神石高原町。2004年の合併以降、20年にわたって「町内で赤ちゃんを産める場所」が存在しなかったこの町に、昨年秋、一つの助産院が誕生した。そして今年6月、開院後初めて町民がこの地で我が子を迎えた。少子化が深刻化する地方の現場で、「産む場所をつくること」が地域にどんな変化をもたらすのかを追った。
合併から20年、「産む場所」がなかった町
神石高原町では、2004年の合併以降、分娩を取り扱う産婦人科が一つも存在しない状態が続いてきた。出産を控えた女性たちは、車で30分以上かけて福山市内の病院まで通わざるを得なかった。県内で出産できる医療施設を持たない自治体は11にのぼる。
「地域再生の原点に」ーー昨年秋、助産院が誕生
この状況を変えようと、地元のまちおこし会社「MSERRNT(マサーント)」が町外から医師と助産師を招き、昨年秋に「神石のたまご助産院」と「神石のたまご産婦人科」を開院した。産婦人科院長の日下剛先生はこう語る。「地域が縮小しているってとこを変えるみたいなところの原点にしたいので、神石のたまごと名づけました」。院内では畳敷きの個室で分娩台を使わない「自然なお産」を提供し、妊娠から出産まで一貫したサポート体制を整えている。
第2子は地元でーー小学校教師・塚本さんの選択
開院からおよそ9カ月後の5月下旬、神石高原町在住の小学校教師・塚本智美さんが出産予定日1週間前の診察で施設を訪れた。第1子は車で1時間ほどの福山市の病院で産んだが、今回は地元の助産院を選んだ。1週間後、無事に元気な女の子を出産。さらに同じ日、知人も子どもをこの施設で産み、新たな町民2人が同じ日に誕生した。
町長も祝福ーー出生数は20年で3分の1以下に
この助産院で町民が出産したのは開院後初めて。報せを受けた入江義則町長も祝福に駆け付けた。神石高原町の出生数は2004年比で3分の1以下に落ち込み、去年はわずか16人。「町民がここで出産するのは『神石のたまご』の目的でもある。実現できて本当に嬉しく思っています」と町長は語った。
地元出産で気づいたこと
退院の日、塚本さんはこう振り返った。「子育てしやすいと思っていたけど、何が足りないかって言ったら、産む場所が足りなかった。町で産んで育てられることをすごく嬉しいと思って、より子育てしやすい町にぐっと近づいたなと感じています」。
日下院長も今後への思いをこう語る。「今、お産っていうのはどちらかというと、集約化っていう大きな病院でお産をするっていう方向に流れが行っているんですけども、助産院っていうものの存在が今まだあると。こういうふうにやればシステムとして、こういった小さいコミュニティでも存続可能な形でお産する場所って、継続できるんじゃないっていうモデルにしたい」。
「近くで産めること」が、子育てへの意欲と地域への愛着を後押しするーー。神石高原町に生まれた小さな命は、縮小を続けてきた地域に確かな変化の兆しをもたらしている。
日下院長も今後への思いをこう語る。「今、お産っていうのはどちらかというと、集約化っていう大きな病院でお産をするっていう方向に流れが行っているんですけども、助産院っていうものの存在が今まだあると。こういうふうにやればシステムとして、こういった小さいコミュニティでも存続可能な形でお産する場所って、継続できるんじゃないっていうモデルにしたい」。
「近くで産めること」が、子育てへの意欲と地域への愛着を後押しするーー。神石高原町に生まれた小さな命は、縮小を続けてきた地域に確かな変化の兆しをもたらしている。
