広島・長崎の被爆の実相をより多くの人に伝えたい 被爆テーマの「手話ダンスミュージカル」に密着

7/31(木) 19:00

TSSライクでは、80年目の8月6日を前に、「つたえるつなげる」をテーマに特集をお伝えしています。
きょうは、広島と長崎の被爆の実相をより多くの人に伝えようと被爆をテーマにしたミュージカルを手話で表現した県内初となる「手話ダンスミュージカル」の取り組みに密着しました。

先週27日(日)、広島市内のスタジオ。
彼らは、県内で活動する手話ダンサーたちです。
手話ダンスとは、曲の歌詞を手話に訳し、手話と全身を使って伝えるダンスです。被爆80年となる今年、彼らが挑戦するのは、被爆をテーマにした「手話ダンスミュージカル」です。

【ミュージカルを主催した手話ダンスチームSign・菊田順一代表】
「語り部の方たちが高齢のために亡くなっていると聞いた時に何か手伝える事がないかと思った。語り部を増やすというところでチームがチームを呼んでひとつの大きな作品になれば一気に語る人たちが増えるという単純な考えなんですが、色々な人を巻き込むことが出来るのが手話ダンスミュージカルなので」

この日は、台詞と手話の練習初日。

<セリフ練習風景>
「手話がこれでいいかの確認なので(手話を)大きめに」
「大きめにね。OK」

台詞の手話をチェックするのは、中村友映さん。
生まれつき聴覚に障がいがあり、人工内耳を使っています。

【手話ダンスチームSign・中村友映さん】
「何時帰る いいと思う。何時に帰る」(手話で表現)

ミュージカルでは、手話と台詞を担当する人と手話だけの人に分かれます。
長い台詞と手話を覚えなければなりません。

<菊田さんの手話練習>

「広島の方を見ると飛行機が3機飛んでいくのが見えました。そのあとドーンという音が聞こえ」

【手話ダンスチームSign・中村友映さん】
Q:初日ですよね?
「初日です」
Q:こんなにできてる?
「みんな考えてきた」
Q:菊田さん覚えてないでしょ?
「(練習が)先だと思っていたら、今日ですって言われて」
Q:長い(セリフと手話を)ちゃんとできてビックリ。
「もういっぱい、いっぱいです」

ミュージカルには、被爆をテーマにした楽曲を組み込みます。
その曲は広島出身のシンガーソングライターHIPPYさんの「日々のハーモニー」

広島在住のHIPPYさんが「語り部」として被爆者から話を聞き、その体験を伝える「被爆体験伝承プログラム」に参加した経験から作られた曲です。

今年、広島市の「20歳を祝うつどい」では、ヒッピーさんとコラボして、Signがダンスを披露しました。

長崎出身の現役医師のユニットで、福岡を中心に活躍するインスハート。
今年、広島市で開催されたコンサートでは、Signがゲスト出演しました。
今回、ダンスにするのは、長崎の被爆をテーマにした「おばあちゃんののこしもの」

ダンスや芝居の制作が進む一方で、ミュージカルの制作も進んでいきます。
菊田さんたちの思いに賛同する人たちが集まりました。
ミュージカル制作全体の進行を担当する濱島亮太さん。
これまで、多くの音楽イベントに携わってきました。
音楽を担当するのは、有留純さん。
これまで、ミュージカルなどの楽曲を制作してきました。
音楽を担当する有留さんには、あるプランがありました。
作品の音楽の一部を「被爆ピアノ」で表現してみたい。
被爆ピアノを保有する矢川さんを訪ね承諾をもらいました。

【Music Noah 作曲家 有留 純さん】
「響きがすごいすごく気持ちいい。すごく重いです。気持ちがこもり過ぎて色々な人の・・そういう音がすごいですなので、こっちもちゃんと整えていかないと音負けしそうです」

公演まで、1か月を切った頃、プロジェクトは、最後の難関を迎えていました。
「演技の難しさ」役を演じるのは、みんな、初めてなのです。

【手話ダンスチームSign・小林摩弥さん】
「3人でやらなきゃいけない場面、だからちゃんと場面をイメージして演技してほしい。ぼーっとしないで」

制作費をねん出するための活動も始まりました。クラウドファンディングで、資金を集めます。

【ミュージカルを主催した手話ダンスチームSign・菊田順一代表】
「ボランティアだけでは続けるのが難しいと思って、継続性をもってやるには資金が必要だと思って、クラウドファンディングにチャレンジしました」

この取り組みを将来も続けていきたい。そのためには、支援とともに、この活動の存在を知ってもらいたいと菊田さんは考えています。
公演を、1週間後に控えた最後の全体練習。
役者が手話だけで表現するパートは、ナレーターが台詞を入れます。

手話と台詞のタイミングを合わせるには、手話を理解していないとできません。
ミュージカルの音楽は、ダンス以外は、役者の動きに合わせて、生で演奏していきます。
エレクトーン奏者の明神あみさん。
演技の流れや、役者の動きを見ながら、タイミングを計ります。
本番に向けて、最後の通し稽古。
芝居やダンスに魂が入っていきます。

<最後の通し稽古>
「最後の記憶に残るのが笑顔であろうと微笑みながらこの頭をなでて逝った母もいたろう。熱い熱い熱い風を背に受けて子供を守ろうとした父もいただろう。何をすればいい?何ができるの?分からないし、こわいよ。目をそらして見ないふり。それじゃあの日と同じ日がやってくるから」

【芋迫紀子さん】
「やがてあの日を知る人はいなくなる。でもあの日とそのあとの出来事を絶対に忘れてはいけない」

最後の練習が終わりました。

【芋迫紀子さん】
「今日のぎりぎりまで手直しをしてもらって、自分の出番の前のダンスのシーンで自分が泣きそうになってて」

【手話ダンスチームSign・柳澤翼さん】
「どれだけ自分がそこの世界に入れるかが1番難しかった」
【手話ダンスチームSign・小林摩弥さん】
「最初はどうなるかと思っていたけど、形になって良かった」
【手話ダンスチームSign・中村友映さん】
「声を出すのと手話のタイミングが難しかったけど練習すればできます」
【ミュージカルを主催した手話ダンスチームSign・菊田順一代表】
「まだ70%くらいの安心感なのですが、それでもここまで来られたのはうれしいです」

被爆80年の今年、広島と長崎の思いを伝える手話ダンスミュージカルが8月3日、県内で初めて上演されます。
<スタジオ>
広島県内初の「手話ダンスミュージカルブルースター」は、8月3日、日曜日、午後2時から、広島駅南口地下広場で上演されます。
入場は無料、詳しくは、「手話ダンスミュージカルブルースター」で、検索してください。