無人化の実現は? 「自律航行船」プロジェクトの今 あらたな段階へ 広島・大崎上島町

7/29(火) 17:55

本州との移動は限られた船のみ…。
そんな住民たちの生活を救おうと大崎上島町で進められているプロジェクトの今を追いました。

【鈴木記者】
「自律航行システムを搭載したこちらの船、今回は真っ暗の中、航行するということです。新たなフェーズに入ろうとしています」

暗闇を走り出した「スマート海上バス」。
その操舵室を見ると…船長は船の進行方向を操る「舵輪」を握っていません。
2021年から大崎上島を舞台に開発が進められてきた自律航行船。
AIを活用して将来的には「無人」での航行を目指しています。

【エイトノットのエンジニア】
Q:このサイズの船は初めて?
「そうですね。ちゃんと動かせるかなというのはある」

今年1月、大崎上島町などはこれまでよりも大きい船で”フェリーの運航時間外”の試験運航をスタート。
運賃は1人1000円で深夜や早朝に竹原港から大崎上島町の港をまわり竹原港に戻る航路で3か月間利用者の動向を探りました。
その結果、満足度は高く、利用した80人のうち8割以上が本格的に導入された際には利用したいと回答。
運賃についても平均でおよそ700円高く支払えると答えました。

そこで今回、スポーツ観戦やレジャー目的などで多くの移動需要が見込まれる夏から秋にかけて、中学生以上の運賃を500円アップし1人あたり1500円で試験運航してみることにしたのです。

【大崎上島町・谷川正芳町長】
「船が道路の変わりで24時間備わるというのは当たり前にそれをしてほしいというのが根底にある。できるだけそれに近づけていきたい。それが本音」

また、本格的な導入に重要なコスト面も意識し、出発30分前までに乗船予約がない場合は運休とする柔軟性ある運用も試します。
一方で社会実装に向けてはまだまだ立ちはだかる壁が…。

【谷川町長】
「国も考え方を少し変えていかないといけない。要するに知床で事故があったから非常に慎重になっているが、その慎重になっている姿を超えていく我々の技術的な完成度をやっていくと規制緩和という枠という捉え方ではなくて当たり前のようにそれが認められてくると思う」
気になる「無人化」の実現について、国は自動航行船の検討会を本格的にスタートさせていますが…。

【エイトノット・木村裕人CEO】
「無人に対しては正直まだまだハードルは大きいかなと思っている。そもそも自動運航船というくくりについては国内もそうだが、国際法の議論がされているのが現状あって(国は)それに合わせて日本版を作っていくというのが基本的なスタンスという風には伺っている。ただ私としてはそれを待っていては立ち行かなくなる場所が、これから数年の間には出てくると思う」

離島が抱える課題の解決へ…。
荒波の上を少しずつ前に進んでいます。

《スタジオ》
大崎上島町の自律航行船のニュースは「ライク」では、継続してお伝えしています。
技術的な進歩はもちろんですが、法律面などの環境整備も進めていかなければいけませんね。

【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
「本当に待ち遠しいなと思います。この路線だけでなく瀬戸内海全体で24時間、私たちが行きたいところにいつでも行けるシステムになると瀬戸内海の魅力がグンと上がって将来に希望が持てますね」

今、実際に大崎上島町にお住まいの方も道路がない中で、どのようにして生活を便利にして行くか?そのためにはこの自律航行は欠かせないのかなと感じました。