全国初の組織「テゴス」発足1年 イノシシやシカなどの被害防止 他県からも注目のプロ集団 広島

6/2(月) 20:30

イノシシやシカなどの鳥獣害対策に取り組むプロ組織「テゴス」が、本格稼働してから1年。
全国初の取り組みとしてどんな成果をあげたのでしょうか。

庄原市鳥獣対策のプロ組織「テゴス」のフィールドアドバイザー佐々木陽尚さん。

【「テゴス」フィールドアドバイザー・佐々木陽尚さん】
「サルも出るし、シカも最近増えてきていて」

この日向かったのは、サルの出没情報が寄せられた庄原市東城地区。
サルを捕獲する専用の檻を設置します。

【佐々木さん】
「今回はサルに首輪型のセンサーを付ける。それを付けるために箱罠で捕獲をする」

サルの群れの行動範囲を調べ、追い払うための対策に活かすのが狙いです。

【佐々木さん】
「サルが手でエサを取るので、あのように引っ張れるような感じにしている。イノシシやシカは手が使えないので、下に(エサを)置いているんですけど」

イノシシ、シカ、サル…
野生動物による農作物への被害は後を絶ちません。
2023年度の県内の被害額はおよそ3億3千万円。
ここ数年高止まりしています。
何とか被害を減らそうと県が立ち上げたのが、
全国初となるプロフェッショナル組織「テゴス」です。
その名前には、広島弁で「てごうする」「手助ける」という意味が込められています。
初年度となる昨年度は5つの市町でスタートし、農家の人の相談にのり技術指導にあたってきました。
テゴスが去年から重点的に取り組む対策のひとつは侵入防止柵の設置です。安芸高田市の向原町の千日集落、地域はシカやイノシシの被害に悩まされて来ました。

【「テゴス」フィールドアドバイザー・来栖伸明さん】
「こういうふうに農地を柵で囲って管理を徹底的にやるということで侵入防止をやってもらっている」

去年、20ヘクタールの農地にワイヤーメッシュの侵入防止柵を設置。

【米農家・渡辺徹也さん】
「(イノシシが)コンクリートの下をえぐり取ってのり面まで破壊する。補強のやり方を教えてもらい、特にワイヤーで角を補強した。下にパイプを入れてドアを補強したのも(侵入を)防いでいる」

対象となる動物によってその設置の方法は変わります。

【「テゴス」安芸高田市フィールドアドバイザー・栗栖伸明さん】
「イノシシは下側から狙って来るので、下を補強するのは良い方法」

この柵を設置してからイノシシの侵入は一度もなかったそうです。

【米農家・渡辺徹也さん】
「皆さんの協力によって効果をあげているのでありがたい。これまで以上にこの秋が楽しみ」

今年度からテゴスの取り組みに新たに5つの市町が参画することになり、先月26日にフィールドアドバイザーや県の担当者などが集まりました。
行政側も去年1年間の成果に期待を抱いています。

【昨年度から参画・北広島町】
「プロパーの職員では行けなかったところにフィールドアドバイザーが積極的に現場に出たこと、また地域ぐるみという思いも共有できていることが結果かなと」

【昨年度から参画・尾道市】
「イノシシ対策については、改善点を指導することで侵入防止につながっている。テゴスの活動の信頼度も日々高まっている」

県の集落実態調査によると、「テゴス」に参画した市町では、侵入防止柵が適切に管理されている集落の割合が、おととしに比べて6.7ポイント増加。柵を正しく設置することで、鳥獣被害がなくなったという声が届いています。

【広島県農業生産課・出原寛之課長】
「今まで思い込みでやってきたことや見よう見まねでやってきたことで被害が広がっていた。正しい知識を得て取り組んでもらうことで被害の軽減の実感につながっている」

さらに行政としての課題解消にも有効です。

【広島県農業生産課出原寛之課長】
「役場の職員は異動を伴うので、専門的な研修を受けても異動してしまうとまた一からと。研修を受けた専門人材が長期的に現場に入ることで、より多くの集落に正しい知識を植えつけることができる」

テゴスは同じような鳥獣被害に悩む全国の自治体が注目しています。
テゴスの本部を訪ねたのは山形県の職員です。

【山形県みどり自然課・木内真一課長】
「20年30年を見据えたときに、広島県のテゴスの取り組みは切り札になると考えている」

山形県でも動物による農作物への被害が深刻で、おととしの被害は4億円を上回るといいます。
この日視察したのは竹原市。
レンコン農家と一緒に活動するフィールドアドバイザーの取り組みです。

【辰已麗キャスター】
「実際に被害にあった農家のところに来て点検をしているところです。柵を触ったりしながら正しい設置がされているか確認しているところです」

こちらの農家では、これまで育てていたレンコンがシカに食い荒らされてきました。

【山形県・木内さん】
「イノシシとかシカは狙ってくるの?」

【レンコン農家・中嶋剛さん】
「シカが今出ている若い芽を食べに来てしまって…」

【「テゴス」フィールドアドバイザー・川崎治さん】
「ネットを張るならしっかり留めないと(シカが)越える」

フィールドアドバイザーの指導に耳を傾けます。

【山形県・木内さん】
「行政が丸抱えするのは難しい。そういう意味でも住民と市町村の間に立つ中間支援組織は有効だと思った」

県は将来的にテゴスの活動を県内全域に広げたいとしていますが、フィールドアドバイザーの育成や波及効果の拡大など課題が分かってきました。

【「テゴス」向谷敦志代表理事】
「相談者に対する対応はできた。でも地域の周りの人に浸透していない。その人だけにとどまったりしている。いかに地域に波及させるか。こういったところを本年度力を入れたい」

農家と行政の間に立って鳥獣害対策を行うプロ集団。
全国初の取り組みはまだ始まったばかりです。