紆余曲折 広島高速5号線・二葉山トンネル 亀裂や水漏れ 掘削完了も住民の不安は拭えず、交渉は平行線

4/30(水) 18:32

広島高速道路公社は30日、広島高速5号線・二葉山トンネルの掘削が完了したと発表しました。
二葉山トンネルの建設案が浮上したのは、今から25年前の2000年でした。
当初、完成時期は2007年度でしたが、なぜ時間を要したのか…紆余曲折の経緯を振り返ります。

二葉山トンネルの建設をめぐっては工事が始まる前から住民の猛反発がありました。

その背景にあったのは、2006年に開通した広島高速1号線「福木トンネル」の存在です。

【住民は】
「ぞっとした。主人と2人でのぞいてみて、(亀裂が)どこまで行っているのか」

トンネル工事により周辺地区では、想定を超える地盤沈下が発生し、住宅が傾くなどの被害が続出。
同様の被害を懸念して、すでに計画されていた二葉山トンネルの事業案に対し、建設予定地の真上に位置する地区の住民が反対の声を上げ始めました。

【二葉山トンネル建設に反対する牛田東三丁目の会・棚谷彰 代表】
「意見の食い違いはあるが、トンネルを掘ることの不安は伝えたので、理解してもらえたのでは」

それから何度も行政と住民の間で話し合いが行われたものの、工事の安全性に対する住民の不安は払拭されず、議論は平行線をたどり続けました。

<住民説明会>
【参加した住民】
<資料を破って捨てる>

揺らいだ信頼関係は修復されず一時、事業が休止となりましたが構想からおよそ12年…

【広島市・松井一実 市長】
「広島高速5号線のトンネルの施工は可能と判断し、事業を再開することと致しました」

【広島県・湯崎英彦 知事】
「客観的には安全性を確保できるという判断に至った」

知事と市長の両者は広島駅と高速道路網を結ぶ重要なインフラであると判断し、事業再開を決断しました。
その後、地盤沈下の抑制に優れたシールド工法を採用するなど、度重なる計画変更を経て掘削工事が始まったのは2018年9月のことでした。

ところが工事が始まってからも、掘削機の故障が度々起こり工事は中断。
トンネル内の硬い岩盤を前に工事が思うように進みませんでした。

さらに…

<住宅地の外塀の一部が落下>

【二葉山トンネル建設に反対する牛田東三丁目の会・棚谷彰 代表】
「これ…(外塀)の上に乗っていた(外塀の一部)が落ちた」
【住民は】
「中に落ちたからいいけど、外に落ちてごらんなさいね。危なかったですよ」
【二葉山トンネル建設に反対する牛田東三丁目の会・棚谷彰 代表】
「一番振動を与えていた時ですからね」

住民たちが長い間、抱いていた懸念が現実のものに…。

<ふすまの建付けが悪化>

【住民】
「ここがつぎ足しましたよね」
【二葉山トンネル建設に反対する牛田東三丁目の会・棚谷彰 代表】
「公社が応急処置をした。冷暖房が効かない。隙間から(空気が)逃げるから直せと言ったんですよ」
【住民】
「ドアが動かなくなったんですよ」

亀裂や水漏れなど様々な異変が現れ、およそ半年間、工事が中断することもありました。
反対の声をあげ始めてから18年。
掘削完了という1つの区切りを迎えても心配は続くといいます。

【二葉山トンネル建設に反対する牛田東三丁目の会・棚谷彰 代表】
「現象・原因調査・因果関係をピシッと整理整頓しなきゃいけない。少しでも原因があったら補償の対象にすべきじゃないかと。そうするべきだと言うて、まだこれも交渉は平行線ですよ。まだね」

■もう1つの問題が「事業費の拡大」

<スタジオ>
このように工事が長引いたことで出てきたもう1つの問題が「事業費の拡大」です。
こちらは、計画変更に伴う高速5号線・全体の事業費の推移です。
事業着手の時点では965億円でした。

その後、4車線を2車線へと規模を縮小し一旦は220億円近く事業費が減りましたが、その後はトンネル工法の変更や期間延長に伴って、事業費は増加の一途をたどりました。
現時点で1289億円に膨れ上がっています。
新たな道路ができることによるアクセス向上との費用対効果はどうなのか検証が求められます。