夏の風物詩『稲川淳二の怪談ナイト』のプロモーションで、稲川淳二さんが来広!

ニッポンが誇る怪談界のレジェンド・稲川淳二さんが、ミステリーナイトツアー2026『稲川淳二の怪談ナイト』のプロモーションのため、来広されました。
>>>70代最後の夏を迎える今の心境をお聞かせください。
おかげさまで、ミステリーナイトツアーも34年目。今年はツアー史上最多の全国39会場57公演を予定しています。古希を迎えた頃から「怪談は70歳から!」なんて言ってきましたが、実際に70代になってからは本当に楽しくなりましたね。若い頃は欲しいものもたくさんありましたし、「ああしたい」「こうしたい」もいっぱいあったんです。60代は油気があるというか、まだ若さに未練がありましたが、今では欲も憧れもなくなって、さっぱりした自分がいる。さらっと人生を楽しんでいる自分がいるわけです。そして気がつけば79歳、70代最後の夏を迎えるわけですが、怪談に対する気持ちだけは全然変わらないんですよね。何か気の利いたことをやらなきゃいけないんじゃないか、なんて思ったりするわけです。寝ていたら、ほぼ死体と変わらないのにね。最近は、自分でも少し妖怪になってきたんじゃないかと思うんですよ。できることなら、本当に妖怪になりたいと思っていますし。だって私は、ツアーをやればやるほど元気になるんですから、不死身の妖怪です。本番が終わると、普通は疲れるでしょう。でも私は違う。本番でお客さまから命をもらっているんです。広島は特にそうなんですよ。疲れるよりも喜びの方が大きい。気分も乗っているし、うれしい気持ちの方が大きいんです。広島は都会なんだけれど、ちゃんと自然がある。そのバランスがすごく好きなんですよね。大好きな町なので、広島公演は毎年特別な気持ちになります。広島は別格なんです。
>>>今年の怪談は、どんな内容になりそうですか?
今年はね、メインでちょっと今までにないような話をするんですよ。怪談と言えば、ゾクッとするとか、ヒヤッとするとか、言うじゃないですか。今までの怪談は、そのゾクッやヒヤッが皮膚感覚だったんだけど、今回の話はちょっと違うんです。皮膚ではなく、内臓が寒くなる。そんな話なんです。事件や事故って、毎日起きているでしょう。人も亡くなっている。でも幽霊を見たという人は、そんなにいない。でも、どういう事故で、どういう状況で発見されて、どういう形で運ばれていったのか。そういうことって、頭の中に焼き付いてしまうじゃないですか。今年の怪談は、そんな焼き付いた情景が、後になってじわじわ効いてくるような話なんです。ただね、事件の状況や空気をうまく伝えられなかったら、ただの寒い話になってしまう。だから、チャレンジなんですよ。そこが今年の勝負処です。去年はあれで良かったけれど、今年はできるかな? 大丈夫かな?って、毎年不安になるんです。今頃になって、間違っちゃったかな?なんて思ったりもする。でも考えてみたら、そうやって不安になるということは、まだ情熱があるということなんでしょうね。
>>>なぜ怪談を語り続けているのでしょうか?
怪談というと、怖いものだと思われるでしょう。もちろん怖いんですよ。でもね、それだけじゃないんです。怪談って、よく聞いてみると、優しかったり悲しかったりする。「怖かった」で終わらないんですよ。よく考えたら、「そうだよね」って思うことがある。「あったかい話だよね」と思うこともある。だからみんな好きなんじゃないでしょうかね。だって、ただ怖いだけだったら、おじいちゃんやおばあちゃんになってまで怪談なんか聞かないですよ。このツアーもこんなに長く続かないと思うんですよね。私はホラー映画も嫌いじゃありません。でも怪談は少し違うんです。そこには人の気持ちがある。だから私は、怪談というのは人間の話だと思っているんですよ。
>>>怪談との出逢いは、いつ頃だったのでしょうか?
うちの母親が、怪談を話すのが、うまかったんですよ。だから、母の怖い話を聞きたくて、うちには近所の子どもたちが、集まってきたんです。話が終わっても、興奮しちゃって帰れない。小学生くらいの女の子たちが、夜遅くまで残っていて、とんでもない時間になってから帰るんですよ。田舎から来る親戚のおばさんも怖い話をしてくれたし、近所の人たちもいろんな話をしてくれた。怪談は特別なものじゃなくて、日常の中にあったんです。今みたいに娯楽がたくさんある時代じゃありませんからね。人が集まって、お茶を飲んで、話をする。その中に怪談もあった。だから私にとって怪談は、人が集まる場所にあるものなんですよ。私も長いこと怪談をやってきましたけど、怖がらせようと思って話したことはないんです。人の話をしているんです。人がいて、その人の思いや人生があって、その中に不思議な出来事がある。今年の話もそうなんですよ。事故や事件の話なんですが、事故そのものが怖いんじゃない。その状況なんです。その人はどんな気持ちだったんだろうとか、残された人はどうだったんだろうとか、そういうことを考えてしまう。それがじわじわと効いてくるんですよね。だから私は、怪談というのは人間の話だと思っているんです。
>>>ステージに上がる前のルーティンはありますか?
ありますよ。私ね、癖が多いんです。昔からそうなんですよ。人に迷惑をかけるわけじゃないんですが、自分なりの癖がいっぱいある。浴衣に着替える時もそうですし、いろんなことをやるんです。人が見たらおかしいんじゃないかと思うくらい。それをやらないと落ち着かないんですよ。「稲川さんも本番前は緊張するんですね」ってよく言われるんですが、違うんです。緊張しているんじゃないんですよ。集中しているんですよね。陸上競技の選手がスタートラインに立った時みたいなものです。舞台に出る前には、必ずお祈りをしますしね。神様やご先祖様に「今日も無事にできますように」って。それで舞台に出るんです。
>>>稲川さんにとって、ファンはどんな存在ですか?
ありがたいですよね。本当にありがたい。先程も言いましたが、私はね、お客さまから命をもらっているんです。本番になると、元気になるんですよ。皆さんのおかげで頑張れるんです。最近、特に思うのは、自分を覚えていてくれることへの感謝です。会場へ行くと、「また来たよ」と言って、おなじみのお客さまがいる。ご夫婦で来られる方もいるし、親子で来られる方もいる。嬉しいですよね。だから私は、怪談で怖がらせようとは思っていません。私の怪談は、夏のお祭り、縁日みたいなものなんです。稲川じいちゃんのところへ遊びに来る。そんな感じでいいと思っているんです。「今年も来たよ」「また会えたね」そんな時間があるから、続けてこられたんです。怪談があって、お客さまがいて、その次に私がいる。私はいつもそう思っています。

