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舞台『インターネ島エクスプローラー』のプロモーションで、ヨーロッパ企画が来広!

舞台『インターネ島エクスプローラー』のプロモーションで、ヨーロッパ企画が来広!

京都を拠点にマルチに活動する劇団「ヨーロッパ企画」のメンバー(作・演出=上田 誠/出演=金丸慎太郎、永野宗典)が来広。新作公演への熱い思いを聞かせてくれました。

(2025/11/12)

>>>金丸慎太郎さんが「ヨーロッパ企画」に入団されて、初めての新作公演ですね。

上田:
昨年末に金丸慎太郎さんが入団いたしまして、今回は、彼の記念すべき入団公演なので、彼を座長にした劇をつくりたいと思いました。金丸さんに初めて客演してもらったのは、『ビルのゲーツ』(2014年)。以来、毎回のように出演してもらっていて、ほぼ劇団員のようでしたが、2年前の広島公演の前夜、流川界隈の2軒目のお店で「うちに入りませんか?」と誘ったんです。すると、半年ぐらい経って「入ります」と返事をくださったわけですが、金丸さんが半年ぐらいかけて世界一周旅行に行くというので、「世界旅行から無事に帰ってきてからにしましょう」という展開になり、昨年末の入団になったんです。

金丸:
「ヨーロッパ企画」とのつきあいは10年以上になるので、入団といっても、自分の気持ちとか状態とか、客演の時代とそこまで変わらない感じで、シームレスに入っていくんだろうなぁと思っていたのですが、いざ所属となると、いきなり座長だし、背筋が伸びました。「ヨーロッパ企画」のメンバーにも、お客さまにも、「フレッシュな奴、イキのいい奴が入ったな」と感じてもらえるよう、新たな気持ちで芝居にのぞみたいと思っています。

>>>この作品が生まれるまでの経緯を教えてください。

上田:
僕が金丸さんと初めて出会った頃、彼はヒッチハイクで旅をするような若者でした。挙げ句の果てには、世界一周旅行です。インドアな僕とはまるで正反対。めちゃめちゃ活動的な金丸さんの入団公演ですから、冒険モノ、探検モノの劇ができたらなぁと考えました。

永野:
今回は、ポリネシアのお話ですよね。モアイ像で有名な絶海の孤島、イースター島。

上田:
はい、そうです。イースター島は、ポリネシア人が最後にたどり着いた最果ての島と言われていますが、そこからさらに東にある幻の島「インターネ島」が舞台です。Googleアースなど、インターネットで検索しても出てこない未踏の島のお話です。近年は、不要不急の外出自粛で移動ができなくなったコロナ禍の頃から、演劇ぐらいは遠くに行けたらいいなぁという思いで、香港の『九十九龍城』(2021年)、ロンドンの『切り裂かないけど攫いはするジャック』(2023年)、大阪は新世界の『来てけつかるべき新世界』(2024年再演)など、旅シリーズを展開してきましたが、その流れもくんでいます。

永野:
僕もですが、登場人物全員が冒険家なんですよね。

上田:
登場人物は、いろんな意味で、全員冒険家。金丸さんが演じる主人公ハタノと彼を取り巻く様々な冒険家たちが、互いに牽制しあいながら、未踏の島「インターネ島」の謎を解き明かしていく展開です。「ヨーロッパ企画」は、みんなでワイワイ、ワンチームで進む群像劇をやることが多かったけれど、冒険はチームではなくソロで挑戦するイメージがあって、だからこれまでの群像劇とはちょっと違う感じになると思います。ちなみに、「ヨーロッパ企画」の劇で、主役を立てるのは珍しいことです。そういう意味でも違うかな。

>>>『インターネ島エクスプローラー』というタイトルも秀逸です。

上田:
「ヨーロッパ企画」の舞台は、タイトルありきで作品を作り始めることが多いのですが、今回もそう。『インターネ島エクスプローラー』というタイトルも、わりと早い段階で決まっていました。レガシー的なところを含めて良いのでは?ということになり、じゃあ、島を探検するお話にしよう。→じゃあ、どんな仕組みで行こうかな。→経験則的には、フツーじゃない仕掛けを使えば、フツーじゃないトコロへ行けるはず。→フツーじゃない仕掛けと言えば、アレがいけるんじゃないか。そんな感じで、いくつかのアイデアを組み合わせているうちに、パズルがピタッとハマってきたんですよ。『ビルのゲーツ』は、タイトルで“一本!”という感じだったけれど、今回は、“技あり”の組み合わせという感じでしょうか。でも、これ以上ないぐらいのハマリ方になりそうな手応えを感じています。

永野:
昨日、京都で稽古をしまして、初めて台本を読ませてもらいましたが、めちゃくちゃ面白かったです。金丸さんが演じる主人公ハタノと、金子大地さんが演じるキクチ。冒険家ふたりのライバル関係を軸にしたストーリー展開が面白い。誰が一番に未踏の地に行くのかというせめぎあいのコメディ。冒険家たちのライバル精神が劇の原動力になっています。

金丸:
僕にとっては記念すべき入団公演ですが、旗揚げメンバーの永野さんにとっては、44回目の劇団公演なんですよね?

永野:
気がつけば、44回目。だけど、台本を渡される時のワクワク感は、第1回公演の時からまったく変わらなくて。ページをめくっていくのが本当に楽しくて、昨日はこのワクワクを27年間ずっとキープできていることに感動しました。上田誠の台本は、ページをめくるごとに新しさを感じるし、相変わらず面白い。言い換えれば、上田誠は常に冒険し続けて来たんだろうなぁと思ったし、僕も俳優としてもっと冒険しなくちゃと思いましたね。

上田:
昨年は第61回岸田國士戯曲賞受賞作品『来てけつかるべき新世界』の再演をやりまして、一昨年は結成25周年ということで「ヨーロッパ企画」の集大成として『切り裂かないけど攫いはするジャック』をやりまして。振り返れば、そういう流れでしたので、久々に新作らしい新作、実験作、意欲作を作りたいと思って、今回の台本制作に挑みました。

>>>「ヨーロッパ企画」としても未踏の新境地に挑む覚悟を感じますが…。

上田:
先程、永野さんが常に冒険し続けていると言ってくれましたが、劇団公演だから、思いきり冒険できるところはあるんですよね。そもそも、「ヨーロッパ企画」の舞台づくりは、エチュードを重ねてつくるという独自の方法でして。僕たちの舞台づくりは、そういうワークショップ的な流れで入るから、それ自体が冒険という説もあります。役者に台本を渡してから稽古を始めるのがフツーだと思いますが、「ヨーロッパ企画」の場合は、僕が役者にお題を口伝えで伝えて、台本なしでフリーでやってもらうことから始めるわけです。これを経ることで、アドリブだからこその人間性が行間に滲んできて、劇に血が通うようになりました。だから、初稽古から2~3週間ぐらいはエチュードを重ねて…。その後、劇団員に「早く書け!書け!」と急かされながら、台本を書き始めて仕上げるという流れ。今回はそれがことごとくうまくいきまして、いつもに比べて早く台本ができました。

永野:
今回の舞台のキャッチフレーズは「ナビなき未踏へ」ですが、我々の舞台づくりも「ナビなき未踏へ」の挑戦ですよね。常に新しいスタイルを見せる。それが僕たち「ヨーロッパ企画」のセオリーですからね。

上田:
この10~20年、人工衛星などのテクノロジーが発達して、昔は未踏の地がたくさんあったのに、すべてのものがオンラインに上がっています。未知だったモノがすべて既知となり、Googleアースで検索すれば、スマホの中でいろんなところに行けるようになりました。そういう時代になって、未踏の地に行く冒険は可能なのか。問題提起と言えば大袈裟だけれど、そんな思いもあります。僕らもインターネットを駆使したいろんな活動をしていて、ネットコンテンツをつくるとき、こうすれば再生回数が上がるとか、そういうガイドがあるわけです。だからこそ、ガイドにない方法で舞台を作りたいと思うし、それが劇団公演だったら冒険できるよねというのはあります。ある種のネットワークからの逸脱。そういう意味での冒険に挑戦するのが、今日的なテーマのような気がしています。

>>>上田誠さんが、劇作家としてこの作品で冒険してみたいことは?

上田:
僕はもともと「新しい演劇は、新しい仕組みからできる」という感覚がすごくあって、今回も舞台装置上で大きな冒険をしています。これまでにない仕組みで、新しい「移動」コメディを実現したいと思っています。テレビや映画などの映像はロードムービーのように「移動」を扱いやすいけれど、演劇は「移動」を扱いにくいコンテンツなんですよ。だからこそ、難攻不落の「移動」コメディに挑みたいし、過去にも何度か挑戦してきました。『ロベルトの操縦』(2011年)では乗り物が動く横移動、『ビルのゲーツ』ではビルのフロアを登る縦移動に挑みました。今回は、これまでにない新しい仕組みで、島の中を「移動」して探検する冒険劇をお届けします。大いに期待していただければと思います。

金丸:
演劇で「移動」を伝える方法ってそうないと思うけれど、今回はグイグイ「移動」して進んでいると感じてもらえる仕掛けです。お客さまにも「あ、こうきたか!」と思ってもらえるのではないかと。お客さまのリアクションが今からとても楽しみでワクワクします。

上田:
実は、どこにも行けないコロナ禍に、イースター島を舞台にした劇をやろうと企画していたのですが、諸事情ありまして公演ができなくなってしまって、塩漬けになっていた仕組みがあったんですよ。だけど、その仕組みは面白いと思うので温めていて、このたび装いを変えて挑戦することになりました。だから、5~6年越しのアイデアだったりします。

永野:
舞台装置という大きな仕組みも新しいけれど、劇の始まり方など、細かい部分も新しいと思いました。今回は、決してキレイに収まらないスタートの仕方をしている。作品をトータルでみると、いつものようにキレイにまとめてくれるんだと思うけれど、作品の隙を見せてつくっている。思いきった崩し方をしているなという印象があって面白かったです。

上田:
昨年の『来てけつかるべき新世界』は、ド演歌の流れるシチュエーションの群像劇から始まるけれど、今回は違う。新しい書き出し方をしたいと思いました。『切り裂かないけど攫いはするジャック』然り、いろんな語りの方法を模索するのが楽しい時期なのかも…。

>>>永野宗典さんが、役者としてこの作品で冒険してみたいことは?

永野:
今回は未踏の島が舞台だから、おそらくですが、セットはわりと平場で拠り所がない感じになるのではないかと。たとえば、『切り裂かないけど攫いはするジャック』の場合は、舞台セットもがっつりロンドンで、飾ったセリフも多くて、役づくりの拠り所があった。でも、今回は役者が身ひとつで島に投げ出されるというか、役者が生でむきだしにされる感覚。舞台セットや小道具が多くあれば、芝居って埋めやすいけれど、今回はそれが少なそうな気がしていて、空間が埋まらない感じがある。僕は、インディペンデントで中南米あたりのことを研究している教授にして冒険家。今まではチョロチョロ動き回っているような役が多かったけれど、若い教授ではないですし、豪快な演技が求められそうなので、いかに生々しく演じるか、身体表現をあらためて掘り下げなければと考えています。動いている金丸さんとの対比、グラデーションを演じたいので、動かずとも佇まいで伝えることができる演技とは何か。冒険心をお客様にも感じてもらいたいので、冒険心をくすぐる佇まいとは何か。ふつふつとくすぶる内面をどう伝えるか。それを実現するにはイマジネーションが必要で、役づくりに関しても一番険しい道を選んで臨みたいと思っています。

上田:
確かに、前回の『来てけつかるべき新世界』もがっつり新世界だったし、舞台美術の中で演じたけれど、今回は未踏の島ですからね。うっそうとしたジャングルの方が、かき分けるような感じで演じやすいですかね。ともあれ、役者の強さ、底力を見せてほしいです。金丸さんは、世界一周旅行から帰ってきたばかりなので、演じやすかったりしますか?

金丸:
僕が演じるハタノは、いわゆるスポーツ化された冒険に疑義を呈すタイプ。既知とは程遠い、しっかり未知なモノにチャレンジする冒険家です。そういう意味では、今回の世界一周旅行の最中に、僕も似たような感覚になりまして。27カ国を旅してまわったわけですが、いろんな都市をめぐるうちに、首都など都会はどこへ行っても、町の構造が一緒で、つまんねぇなぁと思い始めまして。ヨーロッパでは、パリとか行かずに、郊外に足を延ばすようになったんです。システムに内包されていないローカルの方が、その土地の独自のカラーや文化を感じられて、僕は好きだというのが体感としてありました。だから、そういう意味では、冒険家ハタノと同類だと思うし、魂をのっけられるから演じやすいです。

>>>劇中音楽は、初めて王舟さんと組まれると伺いました。

上田:
王舟さんとは、僕が脚本を描いたテレビドラマで2回ほどご一緒させていただいたのですが、楽曲のカラーがすべて違っていて、その手数の多さ、楽曲のすばらしさに感服して、このたび王舟さんにお願いしました。アーティストとしてもエキゾチック、異国情緒のある方でして、この世にないかもしれない幻の島の音楽を作ってくれるのは彼しかいないと思いまして。冒険心をかきたてる劇中音楽、こちらも大いに期待していただきたいです。

永野:
僕たち自身も、本当にいろんな意味で楽しみにしています。なんといっても広島は、金丸さんの入団話の発端となった場所ですし、今年は、JMSアステールプラザの中ホールではなく、大ホールです。今までと違う熱量で頑張りたいと思っています。僕たちの冒険を通して、笑いと元気をお届けしたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

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