モデルはダウン症の女の子たち ファッションショー通し自分で行動する楽しさ知る 広島

12/13(火) 18:55

広島の「がんばる」を応援するシリーズ企画です。今月、広島市で手作りのファッションショーが開催されました。そこには、様々な人たちの思いが込められていました。

(参加者)
「夢はモデルになることです」
「夢はデザイナーになることです」

この日、広島市でダウン症のある女性を対象にした講習会が開かれました。

(広島文化学園短期大学・高橋佑子講師)
「パーソナルカラーというのを聞いたことありますか?」

4回にわたって開かれる講習会で、参加者はファッションについて学び、最終的に、モデルとしてファッションショーに出演します。サポートするのは、大学生のボランティア。
この日のテーマは、パーソナルカラー=「自分に似合う色を見つけよう」です。

「これも悪くないです。これも似合うと思います」
「これのほうが好き」

講習会を企画したのは、NPO法人ニコループ。「えがおをみらいへつなげる」を理念とした団体は、広島県内のダウン症のある人の保護者や支援者によって構成されています。

(NPO法人ニコループ・池田幸恵副理事長)
「この講習会の中で自分らしさを表現することの楽しさを学んでほしいなと思っています」

保護者は別の部屋で待機します。親にとっては我慢の時間です。

(保護者)
「自分で服を選んでもらいたい。人に言われるままじゃなくて自立してほしい」
「自分で服を選んだという経験がほぼほぼないので、どんな服を選ぶのかは楽しみですね」

「こんにちは」
「どうぞ」

参加者の一人、真倉鈴果さん18歳。この春、特別支援学校の高等部を卒業し、今は、週4日、就労支援の事業所で働いています。

(真倉鈴果さん)
「普段は寝る時、音楽聞いたり、ジャニーズだけど」
Q:ジャニーズ好きなん?
「はい 好きです」

(母・貴子さん)
「やっぱり可愛くしてほしいので。女の子なので。服装選び難しいので、そこは悩みどころですね。お互いにね。ケンカするよね。いつも」
「朝からもね」
「朝からケンカするね」

ダウン症のある人は、多くの場合、知的な発達に遅れがあります。
鈴果さんにダウン症があると分かったのは出産して1週間後でした。

(貴子さん)
「ショックだったのは覚えていますけど、受け入れるまでに割と時間がかかったように思います」

育児をしながら常に感じていた「健常の子だったらどうだったんだろう?」という思いは、次第に、消えていったと言います。

(貴子さん)
「自立させるにはどうしようみたいなのを考えているうちに、もう、しょうがないと言ったら言葉が悪いんですけど『ああもういいや』って」

今、ファッションやメイクに興味があるという鈴果さん。貴子さんは成長を感じています。

(貴子さん)
「楽しみですね。ウォーキングとかポージングとかどうするのかなと思いながら楽しみです」

ファッションショーに向けて準備は進みます。この日は洋服選び。付き添うのは、サポーターの学生です。

(鈴果さん・大学生)
「着てみる」
「これにしよう」
「Mはふだん着ているから」
「OK OK、なんかすぐ決まりそう」
「これにする」

自分が着たい服を自分で選ぶ。

「真っ白な感じ」
「真っ白がいい?」

講習会を重ねることで、学生と参加者の関係にも変化がありました。

「かわいい」
「2人のほうが可愛いです」
「ほめ上手」

(学生)
Q:ダウン症の人と関わるのは?
「なかったです。初めて関わってます。こんなに喋ったり、一緒にコミュニケーション取れると思っていなかったので、話してみていっぱい、喋れるんだなと気づけたので良かったです」
「最初めっちゃ不安だったんですけど、関わってみたら本当に普通の子で楽しくできていい経験になりました」

準備は整いました。
迎えた本番当日。

「かわいい。できた」

いよいよ始まります。サポートした学生がそれぞれのファッションを紹介します。

鈴果さんの出番が来ました。

(学生)
「鈴果さんはスカートを絶対に履きたいという強い思いがあったので、スカートをはじめに決めスカートを中心に服を決めていきました。それではどうぞ」

お気に入りの洋服でちょっぴり大人の雰囲気を意識しました。

(鈴果さん)
「最初は緊張していたんですけど曲が流れたらほぐれました」

(貴子さん)
「こういうのが着たいんだなというのを知るいい機会になったので、親も大変勉強になりました」

ファッションショーを通して参加者は自分で考えて行動する楽しさを知りました。
保護者もまた子供たちの可能性を見つけました。
そして、学生たちはダウン症の人たちと触れ合うことでその垣根がなくなりました。
この小さなファッションショーには、共に生きる社会へのヒントが隠されています。