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迫る炎の中で父が叫ぶ「お前を置いてよう逃げん」 母の被爆体験を娘が語り継ぐ 広島

8/5(金)  18:32 掲載

特集シリーズ「あの日をつなぐ」です。8月6日で被爆77年を迎える広島。被爆者の高齢化が進む中、彼らの思いを受け継ぎ次世代に伝えていくために活動する人たちの姿に迫ります。

原爆が投下されて、77年の歳月が流れました。様変わりした広島で月日の流れとともに課題となっていることがあります。あの日の記憶を、被爆者の願いを、未来にどう語り継いでいくのか…残された時間はあまりありません。

【講師】
「きょうはより分かりやすく伝えるための実践的なお話をさせていただきます」

広島市が今年新たに始めた取り組みがあります。家族の被爆体験を聞き取って代わりに伝える『家族伝承者』を養成する試みです。

参加者の1人、矢木慶子さん、62歳。

【矢木慶子さん】
「たまたま新聞で『家族伝承者』を募る記事を見て応募しました。母を見ていてどんどん歳をとっていくし、今ならまだ頭もしっかりしているし当時のことも十分聞けるので、今しかないと思ってこれが2年3年後になったらもう聞けないだろうなと思っていました」

矢木さんが伝承するのは、93歳の母・福田喜代子さんの体験です。

【福田喜代子さん】
「あんまり話しとうもないし思い出すのもつらいし…でもわかってもろうとかんとね」

77年前の8月6日、福田喜代子さんは当時16歳でした。

喜代子さんは爆心地から1.5キロ圏内の自宅で被爆。爆風で家は倒壊。柱に足を挟まれ、身動きができなくなりました。

【福田喜代子さん】
「家の下敷きになってね、出れん時のことがすぐ頭にパーッとくるんですよ」

火の手があがり死を覚悟した時…助けようとしてくれたのは、父でした。

【福田喜代子さん】
「あの時にお父さんに『逃げて』と言うたんじゃけど、父がその時『お前を置いてよう逃げん』と言って。父も覚悟しとったんじゃないかなと」

せまりくる炎の中父が叫びました。

【福田喜代子さん】
「足がもげてもいいから抜いてみてくれと父がね…」

父の声に励まされ傷だらけになりながら足を抜くことができました。

【福田喜代子さん】
「今考えてもその時のことを思うと涙が出るんですけどね、怖いのと(私を残して)お父さんが逃げたら、あのまま死んでいたなと。助けられてここまで生きてきているんです」

これまで母親の話を断片的にしか聞いたことがなかった矢木さん。母親の人生と向き合うことで、伝承の大切さを感じています。

【福田喜代子さん】
「娘が勉強してみると言ってくれた時、うれしかったです。戦争は嫌だということと戦争をせんようにみんながその方向に向いてくれればいいという思いが強いです。(娘が)勉強してみると言ってくれなかったら、誰にも伝えることなく私は亡くなっている」

被爆体験の伝承、それは母になり代わるという難しい責務です。

【矢木慶子さん】
「母の体験をうそ偽りなくみんなに聞いてもらうことが私の役目かなと思っているんですよ。(伝承原稿の)最後のまとめがすごく難しくていまだに決まっていないんですけど、何回も何回も書き直して母にも健康でいてもらって、私が最初にしゃべるときには聞いてもらいたい」

家族伝承者としての活動が始まるのは2年後です。

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