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柔らかく栄養ある食材に加工する技術「凍結含浸法」 特許持つ広島県が改良続け、介護・離乳食に活用

2/22(火)  18:07 掲載

日本は65歳以上の高齢者が4人に1人を超え、今も増え続けています。そんな中、広島県が開発した、高齢者に喜ばれる技術が広がりを見せています。

煮物に…サラダ。一見、普通のお惣菜に見えますが、実はこれすべて、介護用の食材で作られています。その特徴というのが…野菜や魚、肉まで、少し力を加えるだけで簡単に崩れるほど柔らかく加工されています。この商品を製造しているのが、呉市のアステピアです。高齢者向けの弁当配達を手掛ける『糧配』が去年、設立しました。

【アステピア・河合朋子管理栄養士】
「なかなか高齢になると噛めなくなってきたり、飲み込みにくくなってきたりっていう方がどんどんやっぱり増えてこられまして。これまでですと、包丁で刻むっていうことで対応してたんですが、やっぱりそうなるとバラバラで見た目がなんだかよくわからない。ということで、なかなか食欲が湧きにくいということが、やはり大きな問題として上がってきましたので。やはり見た目はそのままだけど、スプーンで、すくって食べられるくらいに柔らかいものが、なんとかできないかなというところで、新しく凍結含浸の食材を製造するという」

形を保ったまま、食材を柔らかくする技術で広島県が特許を持つ、凍結含浸法が活用されています。

【アステピア・河合朋子管理栄養士】
「酵素っていうのを水溶液に溶かして、浸して柔らかくする」

凍結含浸法では、食材を柔らかくするために、酵素の力を使います。例えば、果物が熟すと柔らかくなりますよね?果物は自身が持つ酵素で細胞同士を結合する物質を分解し、柔らかくなります。原理はこれと同じです。肉や魚、野菜は分解する酵素をほとんど持たないので、酵素を中まで、浸み込ませる必要がありますがただ浸すだけでは長時間かかります。凍結含浸法では酵素に浸す前にある作業を行います。

【アステピア・河合朋子管理栄養士】
「一度加熱した食品を、緩慢冷凍と言いますけどゆっくり12時間から1日かけて凍らせたものがこちらになります」

凍結含浸法では食材を一度凍らせます。ゆっくり凍らせることでより大きな氷の結晶ができ、氷が組織を押し広げ、解凍するとそこに緩みができます。解凍した食材を酵素液に浸し、密閉して中の空気を抜くと…食材から泡が出てきました。この泡は食材の組織の中にあった空気でその空気に代わって酵素液が食材の中までしみこみます。その時間はたったの数分です。後は一晩寝かして、程よい硬さになったら酵素の反応を止めます。すると、柔らか食材の完成です。さらにこの技術を使って新たな商品も開発しています。色鮮やかでデザートのようにも見えるこの商品は…

【アステピア・河合朋子管理栄養士】
「こちらは離乳食になります。下はお粥なんですけど、真ん中に野菜のピューレがあって、上に凍結含浸を使って柔らかくした野菜を乗せている。この緑は小松菜なんですけど、普通に小松菜を茹でてミキサーなどにかけられると、かなり繊維が残ってしまうんですけども、凍結含浸を使うことによって、裏ごしした位なめらかな」

食べるときは解凍して、電子レンジで温めるだけ。赤ちゃんも安心で、働く忙しいママにもうれしい離乳食です。

【アステピア・河合朋子管理栄養士】
「やっぱり色目ですごく食べに行くとか、今まであまり食べなかった子達が、まず自分から手を伸ばしていってしっかりと食べてくれるっていうお声は頂いてますね」

凍結含浸法を使った商品は、今では2010年の25倍以上にまで販売額が増えているそうです。

「高温×機能性=進化する含浸技術」

広島県の食品工業技術センターが開発した凍結含浸法は、現在でも研究が続けられ、さらに進化していました。中心となって進めるのが柴田さんです。

【食品工業技術センター食品加工研究部・柴田賢哉副部長】
「どうしても減圧装置が必要っていうことで、機械の導入コストがかかるとかですね。あるいは減圧処理をして5分、10分待ってる間、次の処理ができない。装置なくできればいいなっていう要望が企業さんから寄せられまして」

凍結含浸に欠かせない減圧装置は、小さなものでも数十万円、業務用ともなれば数百万円かかります。こうした装置を使わず、より早くより簡単に酵素をしみこませるために、着目したのが温度です。その新しい凍結含浸の手法を見ていきましょう。食材を凍らせて、組織を緩ませる、ここまでは同じです。この後は解凍した食材を加熱します。

【食品工業技術センター食品加工研究部・柴田賢哉副部長】
「加熱した鶏胸肉を熱いまま、酵素液につけます」
Q:後はどうするんですか?
「後はもうこのまま、5分10分浸けるっていう操作だけになります」

加熱した食材を酵素液に入れるだけ…なぜこれだけで中まで染み込むのでしょうか?

【食品工業技術センター食品加工研究部・柴田賢哉副部長】
「今まではですね、減圧処理で食材の中の空気を追い出す、圧力差を使って(酵素を)入れ込むっていう方法だったんですけど。今回は食材を熱くしてですね、温めると食材の中の空気が外に出てきますので。温かいまま酵素液につけると、今度は食材がキュッと冷めますので。その時に酵素液が中に入るということになります。なので、今まで減圧で出し入れしてたものを今度は温度差を使って出し入れするっていう」

この手法の開発で作業が簡単になり、食材が柔らかくなるのはこれまでと変わりません。さらに研究は進んでいます。

【食品工業技術センター食品加工研究部・柴田賢哉副部長】
「含浸技術っていうのは、食材の中に物を染み込ませる技術です。食材の栄養価をアップするような酵素をしみ込ませれば、今度は柔らかくなるのではなくて、食材を見た目そのままで栄養豊富な食材を作ることができます」

実際にジャガイモにデンプンを分解する酵素を染みこませると、見た目はそのままに、腸に良いといわれるオリゴ糖をおよそ13倍に増やすことができました。この技術は他の食材にも使うことができ食材を柔らかくするだけでない、幅広い活用が見えてきました。さらなる実用化に向け研究は今も続いています。

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