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尾道の造船技術で「たき火台」異業種コラボで誕生

6/15(火)  17:56 掲載

ライクマーケットのコーナーです。このコーナーでは新しい商品やサービス、その誕生した背景を探ります。今回取材したのは尾道が誇る造船技術です。異業種コラボで誕生した、話題の商品とは?

炎の揺ら めきを眺めるだけで心を落ち着かせてくれるたき火。その明かりで暗闇に浮かび上がるのは、日本人の心…富士山です。県内の広告会社と船舶艤装会社のコラボでこの焚き火台が誕生しました。

古くから造船で栄えた鉄の街、尾道市。新型コロナウイルスの影響は造船業界にまで及び需要が低迷、受注も落ち込んでいます。京泉工業は船に取り付ける煙突やハッチ、舵など艤装品と呼ばれる設備を製造しています。

【京泉工業・京泉晴洋社長】
「設計で切断データを作って、鉄板やステンレスの板を切って、穴を開けたり曲げたり。1枚の鉄板からいろんなものにして組み立てていきます。通常は4.5から30ミリぐらいなんですけど、厚いのはこの100ミリ以上の板を切ったり」

どんな設備を作るにも、最初は大きな鉄の板を切るところから始まります。分厚い鉄の板を設計図通り正確に切り、加工して、船ごとの要望に応じた設備を納品するのが、京泉工業の生業です。一見すると何を作っているのか分かりませんが、こちらは船の扉です。さらに、造船業界では珍しいコンピュータ制御の高精度レーザー加工機も導入しています。

【京泉工業技術経営部管掌・楠原和彦アドバイザー】
「普通、造船の材料ってすごい板厚が厚いじゃないですか。だから、レーザーで切るっていうのはあまり必要ないですよ。だけど、いろんな種類の製品を作ってるんで、そういうニーズにも応えるべく、新型のレーザーを買ったんですね」

この高精度な切断技術に目を付けたのが、楠原さんと一緒に大学院で経営について学んでいた藤村さんでした。

広島市西区に会社を構えるスパイス。その社長が藤村さんで広告を中心に様々な事業を展開しています。

【スパイス・藤村智彦社長】
「広告会社から始まりまして、面白いことを何か色々増やしていけたらいいなっていうことで、1年に1個。別に新しいことを何かしたいなという形で。アパレルやったり、カバンを売たりとか、EC事業っていうのを色々やってます」

会社の事業はホームページのデザインや制作、企業のコンサルティングまで多岐にわたります。そして、面白いこととして思いついた事業が、最先端のレーザー加工機を使ったキャンプ道具作り。キャンプは自身の趣味でもあります。

【スパイス・藤村智彦社長】
「僕自体も焚き火がすごい好きなんですけど。『炎をきれいに見える商品があまりないなー』と思って。炎を綺麗に見るためには、何なんかなぁと思った時に柄が透けて見えたら、かっこいいんじゃないかっていうことで。ちょっと和柄でいこうという形で」

制作のコンセプトは風情と炎を楽しむ焚き火台です。デザインには、細やかな和柄とともに日本人の心、富士山を採用。京泉工業の最先端のレーザー加工技術があれば実現できると確信しました。

【スパイス・藤村智彦社長】
「レーザーの中でも安いのから高いのものまで色々あって、安いもので試したけどやっぱり切れなかったんで、あれが必要だった」

【京泉工業技術経営部管掌・楠原和彦アドバイザー】
「たまたま藤村さんと話をしてる時に、薄板だし、切るだけでいいし、磨くだけなので、レーザーが空いた時間にしてもらうおうと。藤村さんは『モノを作る会社と組んでみたい』我々は『一般のお客さんに売ってみたい』というところの利害関係が一致して」

艤装会社と広告会社の異業種コラボで立ち上げたのが『島ノ技巧』という新たなブランドです。第1弾はコロナ禍を逆手にとって、手がドアノブなどに直接触れないようにする非接触グッズ。400個を売上げました。京泉工業では、この商品を作ることで社員にも変化が現れたといいます。

【京泉工業・京泉晴洋社長】
「うちの商品は一般の方に目の触れるところに出るわけではないので、ネットの中で、作った商品が出ているのいうのが、かなり社員のモチベーションになっていると思います」

京泉工業が持つ最先端のレーザー加工機で、藤村さんが思い描いた和柄デザインの焚き火台を切り出すことに成功しました。しかし、その美しいデザインがあだとなる思わぬ事態にぶつかります。

【スパイス・藤村智彦社長】
「火の熱でゆがんできている」

見た目を追求し、細かく切り抜いた鉄板が焚き火の熱に耐え切れず、変形してしまったのです。京泉工業とスパイスが協力して、素材やデザインを見直し、企画からおよそ1年をかけて焚き火台は完成。富士山に加えて麻ノ葉、紫陽花、市松、青海波5つの柄から組み合わせを選ぶことができます。しかし、さらに問題が浮上。

【京泉工業・京泉晴洋社長】
「もともとがBtoBの会社ですから、BtoCの方法は分かってなかったわけです」

京泉工業が一般消費者向けに、高額な商品を販売するのは初めてのこと…藤村さんのアイデアでクラウドファンディングで出資を募ることにしました。当初は20台前後30万円を目標としていましたが、なんと、その10倍以上の注文が舞い込んだのです。

【京泉工業・京泉晴洋社長】
「『どうかな?』と思ったんですけど、こんなに反響があるんだというのは、もうびっくりしました」

【京泉工業技術経営部管掌・楠原和彦アドバイザー】
「(売上は)今は小さいんですけど、最初のドアオープナーって、焚き火台の売上の1/10だったんですね。これが10倍になったと。その次はさらにこれを10倍に持っていけるというようなことを本気で考えてますんで」

【スパイス・藤村智彦社長】
「今回その焚き火台を作るにしても、いかに綺麗に見せるかっていうのが、やっぱ重要だったんで、将来的にはステンレスとかで作った照明とかも作っていけたらいいかなと思ったりしてます」広告と船舶艤装という異業種のコラボで生まれたブランド『島ノ技巧』。収益の柱を担うまでに成長させるため、次なる一手も計画中です。

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