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JR「芸備線」廃線の危機【前編】鉄路を見守ってきた人たち

6/9(水)  19:04 掲載

8日、JR西日本は、利用者が低迷する芸備線の一部区間について、沿線自治体と今後の運行の在り方を協議したい考えを示しました。ローカル線の今、そしてこれからを考えます。

山間を進む列車。ワンマンのディーゼルカーです。梅雨を迎え鬱蒼と伸びる草木を分け入るように進んでいきます。この列車が発着する駅が歩んだ歴史からローカル線の今を見つめます。

男性は毎日決まった時間に家を出ます。歩くことおよそ2分、到着したのはJR備後落合駅。無人駅のため駅員は誰もいません。

「ずっと年間通じて見とっても、月曜日はお客さんが少ないですね」

始めたのは掃除、4年前からボランティアで行っています。男性の名は永橋則夫さん、78歳。備後落合駅がある庄原市西城町で生まれ育ちました。

【永橋則夫さん78歳】
「これも寒い日以外は素手でやります、汚いもんと思ったら汚い、自分の心次第」

駅のトイレも時間をかけて掃除します。夏の暑い日、そして雪深くなる冬も欠かしたことはありません。

永橋さんは国鉄時代、大阪などで機関士として働き1987年に民営化した後は家庭の事情などで退職、地元に戻りました。3年前、島根県の「江津駅」と広島県の「三次駅」を結ぶ「三江線」の廃線を機に掃除などのボランティアを始めました。

【永橋則夫さん】
「小さい時から家からこの距離、ここで汽笛を聞きながら、家で汽笛を聞きながら大きくなって寝ても覚めてもポッポポッポ。命の次に大事な存在です」

山々に囲まれた場所に位置する備後落合駅。JR芸備線とJR木次線の接続駅で広島・岡山・島根を結んでいます。広島市と岡山県新見市を結ぶ芸備線は、全長159キロと中国地方で一番長いローカル線です。

芸備線は沿線地域の過疎化などで利用客の減少が続き、利用客は1日1キロあたり1323人とおよそ30年前に比べ半数になっていて、中でも備後落合駅と東城駅の区間は11人と、JR西日本の管内で最も少ない区間です。

芸備線と木次線が接続する午後2時過ぎ、無人駅は少し賑やかになります。降りてきたのは鉄道ファンの人たち、僅かな乗り換え時間を利用して列車やホームなどを撮影します。

【兵庫・明石から来た人】
「本数少ないんですけど、この時間帯だけは3つの列車が集まるって話を伺ってますので、それが楽しみでって言うのもあって来ました」
「率直のところ、すごく山奥と思いましたね。こういう所に来るのが好きっていう人も周りにはいますので、こういった良い所があるよと勧めていきたいかなと思いますね」

1日の発車本数が少なく、鉄道遺構が多く残るこの駅はいつしか鉄道ファンの間で「秘境の駅」と呼ばれ、週末になると県内外の鉄道ファンで賑わいます。
駅舎にはノートが置かれていて、訪れた人たちは旅の記念に思い出をしたためます。

そのノート、今では7冊まで増えました。

芸備線の歴史は古く、1915年、大正4年、志和地駅〜東広島駅間が開通しました。戦時中は家族を戦地へ見送る光景が各駅で見られたそうです。

戦後、人々の暮らしにゆとりができると備後落合駅は仕事や観光で出かける人で賑わい、特に冬はスキー客が多く訪れました。

【かつて民宿を経営・大原チヨコさん】
「鉄道関係の仕事する人が泊まったり、スキーする人が毎年ようけ。はい。30人ぐらい(泊まる)時もありました、上も下も使うとりましたから」

寿司80円、キャラメル20円、コーヒー30円。
ホームには食べ物や立ち売りする男性の姿があった他、冷えた体を温める一風変わった「うどん」も売られていました。
駅近くにあるこちらの飲食店でその名物を今も味わうことができます。
その名も…「おでんうどん」、具だくさんで腹持ちがいいことから人気だったそうです。

【ドライブイン落合・兼本孝子さん】
「(出していた時期は)年中です。お正月の2日間だけお休みで、あとはずっと開いていた。駅に駅長さんもいたし従業員もいたし。今は無人ですからね。(無人駅に)なったからやめたんですよ」

1960年代には多くの国鉄職員が働き、職員用の宿舎などもありました。駅前には民宿、魚屋、酒屋、そしてパチンコ店もあったそうです。
しかし自動車の普及、高速道路の整備、そして過疎高齢化もあり、利用する人は年を追うごとに減少しました。

1985年には、国鉄が芸備線を廃止対象として検討したことで、国鉄労働組合が反対運動を活発化。
広島市まで70キロの距離を自転車に乗り、廃止の中止を広く呼びかけました。

この時は廃止を免れましたが、その後、広島〜米子間の高速バス開通などにより芸備線の長距離客は激減。山陰へ抜ける急行が廃止され、備後落合駅は1998年に無人駅となりました。

今年2月、沿線自治体を驚かせる、ある出来事がありました。

【JR西日本長谷川一明社長】
「これまで内部補助によって成立してきたローカル線の維持が非常に難しくなった」

※後編へ続く

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